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2024/03/27(水) 08:09

令和6年地価公示 3年連続上昇 上昇幅も拡大 不動産各社コメント

投稿者:  牧田司

地価はさらに上昇基調 いつの時代もマーケットを重視 東京建物・野村均社長

 今回発表された地価公示は、地域や用途により差があるものの、三大都市圏や地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、地価は全国的に上昇基調を強めている。これは社会経済活動の正常化が一層進むなか、好調な分譲マンション市場に加え、ホテルや店舗需要の回復、オフィス需要の底堅さ、再開発による利便性向上エリアの増加が背景にあると考えられる。

 オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に、オフィス回帰や業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。新規大型ビルの稼働率も高く、特にサステナビリティやウェルビーイングなどに対応した高付加価値のオフィスビルは今後の需要も一層増大すると見ている。当社も八重洲・日本橋・京橋エリアや渋谷エリアで地権者の皆様と進めている再開発事業において、高い環境性能とワーカーのウェルビーイングなどに配慮した快適なオフィスビルづくりを進めている。

 ホテルや商業施設は、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大などにより、国内の人流も増え、観光地や全国主要都市を中心に、ホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、この先も回復基調の継続が期待できると思われる。当社は今年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」をオープンする。同ホテルは京都市中京区の河原町三条に位置し、客室数330を超えるラグジュアリーホテルであり、今後、京都観光の拠点の一つとして重要な役割を担うと同時に京都経済の発展にも貢献するものと考えている。

 物流施設は、施設選別の目が厳しくなりつつあるなか、自動化、冷凍冷蔵、環境性能、ウェルビーイングなどの先進性・機能性・快適性を備え、「2024年問題」などの物流課題解決に資する付加価値の高い施設が一段と求められている。

 分譲マンションマーケットは、建築費高騰や土地代の上昇などにより価格は上昇したものの、低金利の継続やローン減税等の支援策を受け、共働き世帯の増加等もあいまって、市場は好調を維持している。特に、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心に、都心部や駅近物件の販売は好調が続いている。当社等が大阪で開発を推進し、今年竣工を迎える「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」「BrilliaTower 堂島」は、いずれも将来の資産性を重視した顧客層から高い評価を受け、販売は好調である。具体的には、「Brillia Tower 箕面船場TOP OF THE HILL」は、北大阪急行延伸部の新駅となる「箕面船場阪大前」駅にペデストリアンデッキで直結し、駅前整備進展による将来の利便性向上による資産性に、「BrilliaTower 堂島」は、日本初となるフォーシーズンズホテルと一体となった超高層複合タワーという希少性に高い評価をいただいている。

 先日発表された日銀の政策変更による金利上昇はそれほど大幅なものにはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、アフターコロナとなった現在、社会経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁、賃金上昇などが進むと、商業地、住宅地、工業地を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価はさらに上昇基調を強める可能性がある。

 地価動向には引き続き注視するととともに、当社はいつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様が満足する商品の提供と人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。

経済活動の回復の反映 産業競争力強化に貢献 三井不動産・植田俊社長

 今般発表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3 年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、三大都市圏・地方圏においても、上昇が継続し、上昇基調を強めています。

 都市部においては、コロナ禍以降、インバウンドを含め人の流れが活発化し、経済が回復基調にあることが、今回の地価公示上昇に反映されていると考えています。オフィスにおいては出社回帰の動きがみられるほか、ホテルや商業施設における集客がコロナ禍前以上の水準で推移、さらに、住宅については堅調なマーケットに支えられて引き続き好調です。足元もこの動向は継続しており、今後のわが国の経済回復に一層寄与すると考えております。また、都市部以外においても、大手半導体メーカーの工場が進出する地域や、Eコマース事業伸長により、大型物流施設用地周辺での地価上昇も見られ、新たな需要創造により経済が活性化されていくということも、今回の地価公示で注目すべき点と考えています。

 先月には日経平均株価が過去最高値を更新し、日銀によるゼロ金利政策も解除されましたが、バブル崩壊後の「失われた30年」にピリオドを打ち、デフレから完全脱却ができるかどうか、2024年はその見極めをする勝負の年だと考えています。デフレのもとでは、付加価値創出のための努力が報われず、中々イノベーションを起こすのは困難でした。しかし、賃金上昇も伴った持続的・安定的なインフレに移行することで、投資の拡大、イノベーションや付加価値の創出、そして、その付加価値をお客様に正当に評価いただく、という好循環が生み出されます。この好循環のもと、日本経済が持続的に成長していくことを期待しています。

 当社グループは、これまでも、日本橋におけるライフサイエンスや宇宙領域での「場」と「コミュニティ」の提供などを通じて、集まる人々や企業のイノベーションや付加価値向上のお手伝いを行い、共に成長してきました。また、スポーツ・エンターテイメントの力を活用するなど、コロナ禍が明け再認識された「リアルの価値」を最大限に高めるミクストユースの「行きたくなる街づくり」も推進しております。

 今回の地価上昇については、我が国の経済活動の回復が反映された結果ととらえています。この経済活動の回復に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして、国富増大に結び付いているとも言えます。当社グループとしましても、イノベーションや付加価値を創出することで、日本の産業競争力強化に貢献してまいります。

マイナス金利解除の影響は大きくない 野村不動産・松尾大作社長

 今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3大都市圏・地方圏のいずれも3 年連続で上昇し、三大都市圏においては上昇率が拡大。地方圏では、地方四市が11 年連続で上昇した。商業地については大阪圏が2年連続で上昇、三大都市圏・地方圏いずれにおいても3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。

 住宅市場に関しては、引き続き需要が堅調であることに加えて、マンション供給数が減っていることもあり、需要と供給のバランスが取れていることから売れ行き好調な状況が続いている。日銀が「マイナス金利政策」解除などの政策修正を発表したことを受けて、今後の金利上昇も予想されるが、当社のお客様の多くが変動金利の住宅ローンを利用されており、同ローンの過去の変遷を見る限りでは急激な上昇になるとは考えづらいことから、この影響は大きくないと考えている。但し、建築費高騰は今後も継続すると考えられることなどからも価格下落も想定しにくく、価格に見合った付加価値のある商品を企画していく必要がある。お客様のニーズが益々多様化する中、今後は「サステナビリティ」や「激甚化する災害」に対応した設備も一層求められてくる。

 オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するものの、23 区全体のマーケット規模と過去からの供給量を鑑みると、需給バランスが急激に悪化することは考えづらい。当社主力ブランドのPMOを例に話すと、コロナ禍を経て出社や採用を増加している企業が増えてきており、PMO に加えて、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1Tの組み合わせにより、コロナ後の働き方の多様化にも対応出来ていることから、リーシングも順調に推移している。

 2025年にいよいよ竣工予定の「芝浦プロジェクト」S棟では、ワーカーの皆様が多様で新しい働き方を実現できるように、「TOKYO WORKation」をテーマに、都心で空・海・緑を圧倒的に感じられる立地特性を活かした新しい働き方を実現する。ビルの高層階1フロアの約1,500坪全てを「テナント様専用の共用施設」として用意するなど様々な工夫を予定している。

 ホテル市場に関しては、単月ではコロナ前の2019年を上回る訪日外国人数の月も出てきており、ホテル稼働率やADR も高い水準で推移している。商業施設についてはコロナ後の人流回復を受けて店舗需要が回復し、売上高が伸長している。

 物流市場に関しては、4月からの労働規制強化により、長距離ドライバーが不足する2024年問題を眼前に控えている。一方でEC拡大により、業務荷物量は増加傾向にあり、引き続き、物流オペレーションの自動化導入など、物流・荷主企業の抱える課題への解決策を今後も提供していく。

 当社グループでは、「将来自分たちが、どのような価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」の目指す姿を明確にするため、2030年をターゲットとするグループビジョンとして「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を掲げている。不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの様々な生活「Life」や、お客様一人ひとりの過ごす時間「Time」に寄り添うことを大切にしてきた。様々な社会課題に直面し、お客様の生活スタイル・価値観も多様化する中で、当社も変化していく必要がある。自らも変革していくことで、新たな価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

不動産業界全体の好機 本質的な価値提供 三菱地所・中島篤社長

 令和6年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続上昇し、上昇率が拡大した。利便性や生活環境に優れた地点の上昇傾向が継続していることや、インバウンド需要を背景とした上昇が目立つ地価動向であったと認識している。

 足元では、日経平均株価の上昇、企業による力強い賃上げ、マイナス金利政策の解除など日本経済が大きく転換しようとしている。この動きを不動産業界全体の好機と捉え、本質的な価値提供を続けていきたい。

 分譲住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、都内では「ザ・パークハウス千代田六番町」の販売が好調に推移している。大阪では、梅田駅前の再開発事業「グラングリーン大阪」至近に計画中の「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」の反響が大きい。賃貸住宅では、フレキシブルな働き方が社会に根付いたことに伴い、居住者が24時間使用出来るコワーキングスペースを併設した「The Parkhabio SOHO」シリーズの引き合いが強い。

 順調なインバウンドの回復を背景に、ホテルやアウトレットも好調に推移している。ホテルでは、インバウンド比率がコロナ前を上回る水準になっており、市況を牽引している。今年2月に開業した「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」や、今年5月に開業予定の「ザ ロイヤルパークホテル 銀座6丁目」などでもこの旺盛な需要を取り込んでいきたい。アウトレットにおいても、インバウンド比率が高まっており、「御殿場プレミアム・アウトレット」などが好調。昨年12月は御殿場を含む複数施設にて過去最高の月商を記録した。

 オフィスは、経済活動の正常化が一段と進んだことで、出社率が上昇傾向にあり、丸の内エリアへの集約移転や業容拡大による増床の動きが活発化している。同エリアの空室率は昨年12月時点で2.88%と低水準を維持しており需要は底堅い。今期は東京駅前の「TorchTower」の他、渋谷や赤坂でも新たに大型複合ビルを着工した。オフィス、商業、ホテル、エンタメなど多様な機能をハード・ソフト両面から整備し、人・企業を呼び込み、巻き込みながら、新しい価値を生み出し続けるまちづくりを実現したい。

 

 

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