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2016/11/14(月) 00:00

メジャー7決算 平均価格は5,400万円(2014年比900万円上昇) 在庫じわり増加

投稿者:  牧田司

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 不動産上場会社の平成29年3月期第2四半期決算がほぼ出揃った。各社のマンション事業は、空前の低金利を背景に総じて好調を維持しているが、用地・建築費上昇による分譲価格の高騰や、消費者の交通利便性を重視した物件選好の影響を受けて完成在庫が増える傾向にある。在庫増が直ちに収益を圧迫する状況にはないが、価格高騰を吸収する消費力も弱く、デフレ脱却も遠のいた。市場は踊り場を迎えたといえそうだ。各社の決算データから現在のマンション市場を概観した。

 メジャー7(業界では三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京の7社をこう呼ぶ)の中で〝絶好調〟を維持しているのが三井不動産レジデンシャルだ。

 今期計上予定戸数5,450戸に対する四半期末の契約進捗率は91%に達している。完成在庫も111戸で、計上予定戸数の2%にしか過ぎない。超都心の高額とアッパーミドル向き、DINKS、コンパクトマンションのバランスがいいのが好決算につながっている。

 営業利益率が突出して高い住友不動産も好調を維持している。一言でいえば、三井不動産レジデンシャルは波をつくるのにエネルギーを注ぐ。一方の住友不動産は波に乗る、在庫を〝宝庫〟にするのが巧みだ。この差が利益率の差だ。販売事業全体の2017年度通期売上高2,700億円を2,800億円に上方修正した。計上予定5,000戸に対する契約率は約95%に達している。完成在庫は微減にとどまった。

 三井不動産レジデンシャルと住友不動産以外は天気予報に例えれば〝快晴〟とはいいがたい。

 ここ数年、戸数、売上高とも漸減している三菱地所レジデンスは期初の計上予定戸数を4,000戸から3,800戸に変更した。最近はJV物件の比率が増えている。完成在庫も徐々に増えている。

 これまで完成在庫をほとんど出さなかった野村不動産にも異変が起こっている。2017年度計上予定戸数に対する契約進捗率は77.1%と高水準だが、2014年度、2015年度はそれぞれ26戸、25戸だった完成在庫は2016年度には一挙に209戸に増加し、今四半期末は602戸と3倍に増加した。依然として高い粗利益率を維持しているが、在庫増は気になる材料だ。

 東急不動産と大京は戸数、売上高とも減らしており、〝4強〟との差が開いている。今後、両社はそれぞれ独自路線を歩むはずだ。完成在庫は微妙な水準に達している。

 東京建物は「「Brillia Tower池袋」(分譲322戸、2015年度)「Brillia多摩ニュータウン」(分譲684戸、2015年度)など好調物件が続いたあとの〝中休み〟。来期は、すでに全戸完売している「Brillia Towers 目黒」(分譲661戸)「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」(分譲387戸)が計上されるので戸数、売上高とも大幅に増やしそうだ。

 メジャー7の売り上げ、価格の推移について。メジャー7の2014年度の計上戸数はトータルで約31,000戸、売上高は約1.3兆円、1戸当たりの平均価格は4,513万円だった。2017年度の予定計上戸数は約24,000戸、予定売上高は約1.3兆円、平均価格は5,401万円。3年間で計上戸数は約7,000戸減らしたが、売上高はほぼ同じ水準で、平均価格は約900万円上昇したことになる。

◇       ◆     ◇

 メジャー7以外のデベロッパーの決算データも懸念材料がある。

 今期引き渡し予定戸数1,600戸に対して契約進捗率が79.3%と好調のタカラレーベンは、昨年同期は引き渡し予定戸数1,250戸に対して進捗率は86.1%だったので6.8ポイント下落している。

 平成26年3月末で330戸の完成在庫を抱えていた日神不動産は、その後販売が進み平成28年9月末で257戸に減少したが、平成26年4月以降の分譲戸数1,456戸に対する完成在庫率は17.7%で楽観できる数値ではない。

 NTT都市開発も利益率が悪化している。2015年9月末の利益率が18.5%だったのが、2016年9月末には6.5%へ低下。完成在庫は2015年9月末の271戸から2016年9月末には506戸へと増加している。

 2016年3月期末で693戸の完成在庫を抱えていた大和ハウスは半減以下の331戸に減らしたが、通期では2,250戸(前期2,972戸)、1,100億円(同1,313億円)に減らす計画。グループのコスモスイニシアも昨年同期の利益率が20.3%だったのが2016年9月末は17.9%へ落ち込み、完成在庫も49戸から111戸へ倍増している。

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 決算データは遅行指標だ。売り上げに計上されるのは主に1年前、2年前に分譲たれたマンションで、用地取得を含めれば数年前だ。ここ2~3年の上昇気流に乗って売上高、利益率を伸ばしてきた結果が今の数値に表れている。

 一方で、完成在庫は先行指標でもある。在庫の増加は一概に事業へ悪影響を及ぼすとは言えない。かつてマンションの雄だった大京の横山修二社長は「完成在庫は供給量の1カ月分くらいが適正」と話したことがある。在庫を抱えていたほうが、お客さんのニーズに応えられるメリットが大きいというのがその理由だ。しかし、資金力の乏しいマンションデベロッパーは、当然ながら極度に完成在庫を恐れた。

 当時と現在では借入金利が全然異なるので単純比較はできないが、金利が低くマンション市況が好調なときは在庫増が収益を圧迫することはないが、市況が右肩下がりになると価格の下げ圧力が強まり、利益が吹っ飛ぶ事態もありうるので、やはり供給量の10%くらいが適正在庫ではないかと記者は考えている。

 この先の景気・消費動向がどうなるか不透明だが、根強い需要がある富裕層や投資向けはともかく、第一次取得層・アッパーミドル向けマンションの価格(坪単価)は完全に取得限界を超えている。低金利を背景にまだまだ大丈夫という声がないわけではないが、若年層の将来不安は払しょくできていない。直近の消費動向テータも一進一退を繰り返している。トランプ氏が次期アメリカ大統領に就任することが決まり、政治・経済動向も不透明感を強めている。

 以上みたように、マンション市場はじわり在庫が増え、踊り場に差し掛かったといえる。景気が上に振れるのか下に振れるのか。アベノミクスの「新三本の矢」「一億総活躍社会」に夢を託せるのかどうかにかかっている。

 

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