国土交通省土地・建設産業局長の谷脇暁氏が「中古住宅」の呼称変更について、「他にいいネーミングがあればそれにしてもいい」としながら、「既存(きそん)住宅に変更するよう作業を進めている」と、12月1日に行われたRBA野球関係者だけでなく、不動産流通会社の会長・役員クラス、デベロッパーの幹部なども参加したRBAの交流会の挨拶で語った。
これに対して、会に出席していた不動産流通業界関係者からはおおむね賛成の声が上がったが、三井不動産リアルティ会長・竹井英久氏らは「新築があるから中古になる。新築の呼称をやめ、中古住宅の中古を取ればいい」と異論が上がった。
中古住宅の呼称変更については、以前から「イメージがよくない」という声が上がっており、積水ハウス会長兼CEO・和田勇氏は「素敵な名前があるはず」としており、当分議論を呼びそうだ。
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谷脇局長の発言に対し、会に出席していた住友不動産販売会長・岩井重人氏、同社常務・村井慎一郎氏、東急リバブル会長・中島美博氏、同社専務・三木克志氏、野村不動産アーバンネット元会長・金畑長喜氏、三菱地所リアルエステートサービス専務・斎藤哲二郎氏なども賛意を示した。
これに異論を唱えたのが竹井会長だ。「中古よりいいが『住宅』だけでいいのではないか。もっといい言葉があるはず」と語った。竹井会長の言葉を補強したのが、同社企画部部長・井口正邦氏だ。「新築住宅の新築を取れば問題は解決する。流通量は中古のほうがはるかに多く、これからの時代は新築か中古かの時代でもない」と。
なるほど、これには一理ある。新築は売ったらすぐ中古になるし、中には新築でも中古並みの価格で分譲される戸建ても存在する。質から言えば新築も中古もない。新築より中古のほうが優れている局面もある。
竹井会長らの主張は正鵠を射る-と言いたいが、「新築」も「中古」も取ったら大混乱が起きる。法律の改正も必要かもしれないし、なにより新築住宅を販売するデベロッパーサイドから「われわれはいかに完成在庫をなくすかに粉骨砕身しているのに、新築と中古の区別をなくしたら売れるものも売れなくなってしまう」と猛反撃されるのは必至だ。
なので、記者はどちらがいいかよくわからない。しかし、「既存」を「キソン」と読ませることは納得できない。「キソン」は「毀損」を連想させるからで、「毀損住宅」=「欠陥住宅」の誤解を生じないか心配だ。
我々の団塊世代は「キゾン」と読んだ(呼んだ)はずだと思い、68歳の上田清司・埼玉県知事に話を向けたら「そうだ、そうだ、我々は『キゾン』と読んだ」と語り、隣にいた上田知事と同級生という弁護士の香川實氏も「おっしゃる通り。『キゾン』だ」と話した。
谷脇局長、こんなに異論が飛び出すのですから、いっそのこと「不動産流通近代化センター」が公募により「不動産流通推進センター」に呼称変更したように、公募で新しい名前(愛称)を決めたらいかがでしょうか。会場では「一般の人は『キソン住宅』と耳で聞いたら何のことかわからない人も出てくるでしょうね」という声もあった。
国語辞典で調べたら「存」の読み方は以下の通り。
・清音でも濁音でもいい例。「依存」「恵存」「現存」「残存」
・濁音の例。「異存」「一存」「温存」「愚存」「所存」「存ずる」「ご存じ」
・清音の例。「既存」(本来「キゾン」は誤りとある)「存在」「自存」「存否」「存亡」「存立」「存する」
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