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2017/03/30(木) 15:30

公共団体の建築工事を円滑に進めるための懇談会 国交省

投稿者:  牧田司

 国土交通省は3月30日、地方公共団体の建築事業が円滑に進められるよう課題の検証や対応策の検討を行う「地方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた懇談会」(座長:大森文彦 弁護士・東洋大学法学部教授)を設置し、第1回目の会合を行った。

 同省から最近の官庁営繕部の取り組みが紹介されたほか、ゲストプレゼンターとして全国中小建設業協会副会長・土志田領司氏、日本建築家協会会長補佐・森暢郎氏、日本建築士事務所協会連合会副会長・佐々木宏幸氏、日本建築士会連合会会長・三井所清典氏がそれぞれ資料を提出し意見を述べた。

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 会議の冒頭、大森座長は「極めて重要なテーマ」と話したように、記者は専門外ではあるが、最近の国、地方を問わず建築をめぐる問題が社会問題化している背景には、様々な問題が横たわっているのではないかと思い傍聴した。

 会場は同省11階の特別会議室。たくさんの関係者が詰めかけていたが、マスコミの傍聴者は記者を含めてわずか5人(一般紙は1名)だった。

 記者の傍聴が少ないのは今回に限ったことではないが、これはどういうことか。最近の例でいえば横浜傾斜マンションの施工不良、新国立競技場、豊洲、森友問題など事件が起きるとわっと群がって取材するのに、すぐ他の取材に追われ、その根っこにあるものを探ろうとしない記者の姿勢にも問題がないとは言えない。

 土地の鑑定や費用積算の根拠、建築士・不動産鑑定士の役割、国や自治体の情報公開などに普段から関心を持っていれば、核心をつく記事が書けるはずだ。利益団体が背景にいる業界紙・専門紙はともかく、どこの利益団体からも独立している一般紙の記者がチェック機能を果たせなくてどうする。歓心を引くために追われて書く記事と、自らがテーマを決めて追う記事とでは格段の差がある。記者は追われて書く記事はこれまでもほとんど書かなかった。すぐに追いつかれるからだし、記者間の競争などに巻き込まれたくないからだ。

 話が横道にそれてしまった。元に戻す。今回の会合でもゲストプレゼンターはそれぞれ重要なことを話したはずだ。残念ながら、記者はほとんど聞き取れずメモもできなかった(隣の2~3人の方は会話をすべてノートパソコンに記録していた)。

 なので、各団体の提出資料を紹介するほかない。

 全国中小建設業協会は、実績のない業者は受注機会に恵まれない、単価・価格の設定は実勢を反映していない、価格設定をどのように行ったかの情報開示、仮設・現場管理・一般管理費は土木工事より低く見積もられる、自治体から〝やってくれ〟と言われればやらざるを得ない不平等の立場がある、市町村の末端まで国の方針が徹底されていないなどの問題を提起した。

 日本建築家協会からは、設計施工分離発注の原則、複数事例の工事費の㎡単価平均値による予算化の回避、計画変更に対する追加予算化の対応、プロポーザル方式の採用促進、基本設計時に精度の高い概算工事費算出が求められるなどの意見が寄せられた。

 日本建築士事務所連合会は、設計委託要件が軽視されており、設計与条件の不十分な検討が施工時点での問題につながる、価格によらない設計委託が行われており、行われた場合でもその選考方法が不透明、価格による選定方法では、極度に低い価格での入札が行われることになり、結果として受託する設計の密度が低くなる、発注者側の条件設定が未熟、設計事務所のコスト管理能力不足が問題などと指摘している。

 日本建築士会連合会は、公共建築物としての品質を確保し将来にわたってその機能を発揮するためには、発注者、設計者、施工業者及び住民が良い関係(信頼関係)を構築することが不可欠とし、地方公共団体内に建築技術者がいない場合は、発注者支援の活用には適切な報酬が必要、基本設計、実施設計、工事監理が分離して発注される場合は、それぞれについて責任の範囲を明確化するとともに適正な業務報酬が措置されることが重要などとしている。審査過程をオープンにしたために新庁舎の設計に48者が応募し、公開によるプレゼンテーションとヒアリングを経て建設された町田市庁舎(資料では事例1)の事例を紹介した。

◇       ◆     ◇

 記者が考えるに、民間工事も同じだがとくに公共工事は発注者-設計者-監理者-施工者がみんなバラバラに分断され、責任の所在が分からないようになっているような気がしてならない。それを防ぐためのコンストラクション・マネジメント(CM)、プロジェクト・マネジメント(PM)、ファシリティ・マネジメント(FM)、アセット・マネジメント(AM)やらがうまく機能していないのではないか。

 

 

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