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2017/04/03(月) 11:25

「里山資本主義」の次は園田眞理子・明大教授「ご当地資本・主義」 3住研究会

投稿者:  牧田司

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「変わる暮らしと住まいのかたち」シンポジウム(すまい・るホール)

 アキュラホーム、ジャーブネット、住宅金融支援機構、都市住宅学会が後援する「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会(3住研究会)」(委員長:高田光雄・京都大学大学院教授、4月1日からは京都大学名誉教授・京都美術工芸大学教授)が3月29日、第3回シンポジウム「変わる暮らしと住まいのかたち」を開いた。

 同研究会は平成26年6月に発足し、27年に「変わる家族と住まい」、28年は「変わる女性と住まい」をテーマにそれぞれシンポジウムを行っており、今回が最終回。

 高田氏は基調講演の中で、戦後の3つの失敗として「伝統木造」を捨てたこと、寸法からメートル法に変えたこと、京間モジュールを江戸間に変えたことを上げた。また、これからの街づくり・家づくりは入れ子思想を取り込み、多様なシナリオを描き、漸次的な意思決定を行い、選択肢を多くするシナリオ・アプローチが重要と述べた。

 その後、研究会メンバーの大久保恭子・風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院助教がそれぞれの研究成果をもとに変容する暮らしとこれからの住まいについて議論した。

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高田氏

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左から大久保、野間、檜谷、山本の各氏

◇       ◆     ◇

 高田氏の「入れ子」「シナリオ・アプローチ」も興味深かったが、面白かったのは園田氏の話だった。いきなり「シンギュラリティ」(人工知能が人類の知能を超える転換点)などという難しい話を持ち出し、「わたしはペシミスト、悲観論者。いつも明るい伊藤さん(圭子氏、アキュラホーム住生活研究所所長)のように楽観的な未来を描けない。3.11がトラウマになっている」と本音とも冗談とも取れる言葉を発し、持論を展開した。

 耳目を集めたのは、人口・世帯減少、産業構造の変化、エネルギー転換の3つの深層問題を串刺しできる解答として提示した「ご当地資本・主義」だ。その具体的事例として「Shre金沢」「高森のいえ」を紹介した。

 「ご当地資本・主義」は園田氏の造語で、2013年に発売され大ヒットした「里山資本主義 日本経済は『安心の原理』で動く」(角川書店、藻谷浩介/NHK広島取材班)を連想させる瑞々しさがある。

 これを「サブシステム」として機能させるというのは「里山資本主義」と同じだが、ご当地の様々な資本を駆使してという意味の「・」(ナカグロ)がミソだ。

 「家守り×まち守り=〝むら〟の時代」という概念も説得力がある。高田氏から「コミュニティではだめなのか、まち(街)ではいけないのか」という問いに園田氏は「コミュニティという言葉は使いたくなかった。やはり〝むらむら〟という言葉もあるように『むら』にこだわった」と話した。

 「コミュニティ」でなく「むら」にこだわるのは記者もよく理解できる。10年前だが、「『コミュニティ』なる文言には記者は違和感を覚える。どうして外来語を使わなければならないのか。わが国では古くから町内会、隣組(戦前には大政翼賛団体になったのでこれは不可)があり、寄り合いなどがあり、『講』もあった。緩やかだが解けないという意味を込めて『もやい講』などもいいのではないか」(危機に瀕するコミュニティ デベロッパーにも責任の一端)と書いた。

 「むら」は行政単位「村」のイメージとの兼ね合いもあり、「コミュニティ」に変わる概念として使用されるには時間もかかりそうだが、普及してほしいと思う。

 平成23年の紀伊半島大水害で大きな被害を受けた奈良県・十津川村の復興再生プロジェクト「高森のいえ」がまたいい。映し出された画像がとても美しかった。

 「高森のいえ」は園田氏がプロジェクト推進委員長を務め、村の中心部にある特別養護老人ホーム「高森の郷」に隣接して建設されたもので、「高齢者向け住宅棟(単身及び二人世帯用)」、「一般向け住宅棟(子育て世帯用)」、「ふれあい交流センター棟」で構成されている。イベントなどが行われるセンター広場も整備されている。建築物は構造材、板材及び造作材(全て10齢級程度の杉・桧の間伐材)を使用し、約95%が「十津川産材」となっている。

 プロジェクトには日本建築士会連合会会長を務める三井所清典氏(アルセッド建築研究所)も参画しており、三井所氏は「山古志村の復興住宅の経験が生きた。造成費がとても安く済んだ」と話した。これまでにない「むら」のモデルになる可能性を秘めている。

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園田氏

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「高森のいえ」(資料提供:園田眞理子氏)

以下は十津川村提供

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全景

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全景

04.全景(北面)_PANO_20170318_140407.jpg
全景

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全景

11.高齢者向け住宅(1号棟:北面)_IMG_20170318_130133.jpg
高齢者向け住宅

42.高齢者向け住宅4号棟(南面)_IMG_20170318_125024.jpg
高齢者向け住宅

51.一般向け住宅(北面)_IMG_20170318_124923.jpg
一般向け住宅

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ふれあい交流センター

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住宅棟中庭

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センター広場

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