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2017/05/09(火) 17:38

流れに乗れず逆らえず 記者は病葉か 「週刊住宅」破たんに思う

投稿者:  牧田司

 「週刊住宅」の破たんについて業界関係者にコメントを求めたところ、今から11年前、70歳で亡くなられた住宅評論家の佐藤美紀雄先生に言及された方がいた。佐藤先生には記者も大変お世話になった。自称〝弟子〟を名乗ったほどだ。今あるのも先生のお陰だと思っている。

 佐藤先生に「週刊住宅」紙上に「佐藤美紀雄のワンポイント時評」を連載していただくようお願いしたのは昭和57年だった。当時、住宅評論家と呼ばれる方はたくさんいた。ところが、多くの方は「建設省のデータによれば」「〇〇会社の発表によれば」などと、マクロデータや会社発表ニュースをもとに論評されていた。佐藤先生は違った。「私の取材によると」などと自らが情報源となり、舌鋒鋭く批評されていた。

 執筆を快諾していただいたのだが、その時、「先生、先生の好きなように書いていただいて結構です」とお願いした。その後、「ワンポイント時評」の連載回数は先生が亡くなる直前まで1,031回に及んだ。週刊住宅紙上でもっとも読まれたコラムだった。デベロッパーはマンションの販売現場に「ワンポイント時評」をコピーして張り出した。もちろん都合のいい部分だけだったが。

 とはいえ、業界紙の宿命ともいうべき、営業サイドの圧力もかかった。あまりにも鋭い指摘に記者も編集長もたじろぎ、経営者の意向を忖度し何度も原稿を書き換えていただいた。情けない記者は佐藤先生に書き換えをお願いする勇気などなかった。すべて当時の編集長が〝悪役〟を引き受けて、コラムの変更・書き直しを先生にお願いした。「佐藤さん、これはちょっと営業的(つまりスポンサー)にまずいので…」「わかりました。そうしてください」二人のやり取りを電話口でハラハラしながら聞いていた。

◇       ◆     ◇

 いまなぜ佐藤先生のことを書くか。佐藤先生が評論活動を始めるとき、「業界ジャーナリズムと同じ原稿など書いていて存在価値はない。現場主義に徹し、自分の目を通じて業界のために働こう」と話されたのをよく覚えている。

 先生が生きておられたらいまの事態をどうみられるか。「牧田さんよ、流れに掉さすことも逆らうこともできていない。どこまで流されればいいんだよ。病葉か」と言われるような気がしてならない。

 時代や読者ニーズの変化に鈍感になり、ゆでガエルのように気が付いたときはすでに手遅れの状態に陥っているのではないかということだ。「週刊住宅」の破たんの遠因はこんなところにありはしないか。

 先生が亡くなられたときの追悼文を添付する。首を垂れるしかない。

「業界の羅針盤」住宅評論家の佐藤美紀雄氏逝く(2005/9/24)

 

 

 

 

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