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建築費アップで「トリプル新価格」市場に 久光氏が警鐘(下)

「勇気を持って土地力のある用地を仕入れるべき」と語る久光社長

 

 

「勇気を持って、土地力のある用地取得を」

 トータルブレイン・久光龍彦社長は、「問題は、郊外の駅遠、バス便、嫌悪施設などがあるネックを抱えた新価格マンションです。これは、さっぱりだろうと考えています。

 天気予報に例えれば、今年前半は晴れのち曇り、後半は曇りところにより雨と予想しています」 と語った。

 なぜ、そうなのか。久光氏は言う。

 「私は、昨年春を100とすると今年は郊外部では10〜20%、都内・近郊では15〜20%くらい価格が上昇すると読んでいました。デベロッパー各社が、好調な市場を背景に高値挑戦を行ってきた結果です。『新価格』、あるいは『新々価格』といわれるものです。

昨年後半から建築費が15%上昇

 ところが、昨年後半から建築費が著しく上昇してきました。15%くらいです。人手不足から労務費が上昇したのと、石油関連の資材が上昇した結果です。デベロッパーは、この建築費の上昇を読んでいなかった。気がついたのは11月ごろになってからですから、昨年後半に仕入れた用地は、建築費の上昇をほとんど織り込んでいないはずです。

 ですから、昨年後半に仕入れた物件が商品化される今年後半以降は価格が更にアップするのは確実です。

 郊外部のマンションは売値に占める建築費の割合が高いですから、10%くらい、都内物件でも7〜8%は価格がアップします。つまり、郊外で20〜30%、都内・近郊では25〜30%、それ以上上がる可能性も高いと見ています。

 私は、この現象を『トリプル新価格』と読んでいます。新価格や新々価格に建築費の上昇を売値に転化せざるを得ないからです。

避けられない「格差市場」

 そこまで価格が上昇すると、市場は一変します。

 私は、今年から来年にかけて15〜20%の価格上昇であれば売れると読んでいました。15〜20%価格が上昇するということは、95〜96年当時の水準に戻るというわけです。それだけ上昇しても、現在の公庫フラット、ローンの品揃え、共働き所帯の増大などの条件を加味すれば、買いやすい環境は当時より好転しています。それが根拠です。

 ところが、これだけ上昇のピッチが早すぎると、一般サラリーマンの手が届く範囲を超えてくる。駅近や複合開発など土地力、物件力のあるものはそれでも売れるかもしれないが、先ほど言ったような郊外の駅遠、バス便、嫌悪施設を抱えているトリプル価格物件は惨敗するだろうと読んでいます。

 市場は間違いなく、私は『格差市場』と呼んでいますが、かなりいびつな市場になるはずです。

 デベロッパーの格差もはっきり出てくる。資金が潤沢な大手に中小は勝てないわけですから、中堅デベロッパーは、勇気をもってリスクの少ない土地力のある用地取得をすべきだと思います。価格が安いからといって、駅遠物件などに手を出すべきではないと思います。

 それとデベロッパーに言いたいのは、基本性能は絶対に落としてはいけないということと、その半面、設備仕様は見直してもいいんではないかということです。設備仕様を落としても、しっかり説明すればユーザーに受け入れられるはずです」

 いかにも久光氏らしい『トリプル価格』『格差市場』などの新語が飛び出してきたが、『勇気をもって土地力のある用地取得を』という言葉は説得力がある。

 今からでも遅くはない。商品企画を見直すなり、用地を処分するなり軌道修正して、『今年後半は曇りところにより雨』という久光氏の予想が外れるようにして欲しい。

 

(牧田 司記者 1月24日)