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造り手の心を伝えるマリモのマンション

「ポレスター飯能」

 

過剰設備を排除する一方で細部にきめ細かな配慮

 マリモ(本社・広島市、 深川真社長)のマンションを初めて見学した。

 西武池袋線飯能駅から徒歩7分の15階建て全70戸の「ポレスター飯能」だ。専有面積は約75〜100平方b。最多価格帯は2800万円台、坪単価は117万円。建物は今年2月に完成している。

 同社の上中英孝常務から事前に「自由に見ていただいて結構。過剰な設備仕様は採用していませんが、もともと設計からスタートした会社ですから物件には自負もあります」という言葉は聞いていたが、期待はしていなかった。

これまで「これはいい」という首都圏に進出した地方デベロッパーのマンションをほとんど見たことがなかったからだ。あまりにもレベルが低い、同じ地方から首都圏に進出したあるデベロッパーのマンションを先日見学したばかりでもあった。

稚拙だが、説得力ある語り口調のパンフレット

 しかし、「飯能」のモデルルームを見て、パンフレットを見てその商品企画レベルの高さに驚いた。中堅が分譲するマンションでこれほど驚いたのは、かつてプロパストが分譲した八丁堀のコンパクトマンション以来だ。プロパストのマンションは、単身女性をとりこにしそうなデザインにビックリしたのだが、マリモのマンションは、造り手の心、魂が込められていたからだ。

 パンフレットのつくりからして、これまで見たことのないものだった。豪華だとか、デザインが優れているというのではない。むしろその逆だ。稚拙なつくりとってもよいほどだ。しかし、マンション購入予定者に語りかけるようなコピーや、あえてデメリットについて踏み込んでいることにはビックリした。

 いくつかを紹介しよう。まず、パンフレットの表2に「はじめに」と題する挨拶文が記載されている。書き出しはこうだ。「このパンフレットは、高額なものをご検討されるうえで数多くの情報をお知りになりたいという皆様の立場を第一に考えて作成しております。膨大な情報量を適切にお伝えするため、文字数が多く読みづらい、また解りづらい点もあるかと存じますが、主旨にご理解のうえご愛読いただければ幸いです」と。

 さらに、「パンフレットをご覧になる前に必ずお読みください」というコーナーには、「広さ(高さ、幅、面積等)、音、温度、耐久力等に対する感じ方には個人差がございます。当パンフレットに記載されております感じ方に関する表現は、ポレスターシリーズご購入者のご意見の平均値…」とあり、同社の直貼り床と床厚180〜200ミリの直貼り床、二重床それぞれの音の伝わり方をきちんと記載している。同社はスラブ厚300ミリの中空スラブ工法を採用しており、遮音等級はL40だ。一般的な遮音等級L45より高い。なぜ過剰設備を排しているかも説明している。

 全ページがこのような調子で綴られている。慇懃無礼、無味乾燥なパンフレットが多い中、同社のパンフレットは異彩を放っている。記者は、こういった配慮こそマンションデベロッパーはすべきだと常々考えていた。

引き戸に採用されていたコストのかからないストッパー

引き戸に採用されているストッパー

 モデルルームの設備仕様は決して高くはないが、かといって低くもない。普通だ。記者が目を見張ったのは引き戸に採用されていたストッパーだった。引き戸がいいのは言うまでもないが、難点は強く閉めたときにバタンと大きな音がすることだ。衝撃音を和らげるための小さなゴムが貼られているものもあるが万全ではない。同社は、鴨居の溝に写真のような鉄製のストッパーを付けていた。これならコストはほとんどかからないだろうし、衝撃音をかなり低減できる。

 バルコニーの上部に熱線反射ガラス手すりを採用しているのにも驚かされた。外からの熱線・視線をさえぎる一方で、中からは眺められるものだ。

 造り手の心が込められているとは、このような細かな配慮のことだ。

 キッチンカウンターの下部は収納スペースとしているほか、全体的に収納スペースを多く取り、エントランス、ホール、ラウンジなどマンションの顔とも言うべき部分にコストをかけているのも大きな特徴だ。

 分譲開始は昨年の10月で、完成は今年3月。残戸数は7戸。ほぼ同じ頃分譲された隣接マンションは戸数が48戸(坪単価134万円)で残16戸だ。隣接マンションとの比較からも、同社のマンションが健闘していることが分かる。

 同社は、不動産経済研究所の調査によると2006年の全国供給量はベスト7位の3432戸を供給しているが、首都圏では埼玉県で供給しているのみでほとんどは地方だ。今のところ都内で供給する予定はなさそうだが、戦える力は十分備わっていると見た。同じぐらいの単価で供給しているデベロッパーよりもはるかにレベルは高い。

 

(牧田 司記者 3月26日)

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