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釈然としない国交省の「かんぽの宿」不動産鑑定士に対する処分

 国土交通省は8月26日、日本郵政公社(当時)の「かんぽの宿等」の不動産の鑑定評価(平成19年8月31日付けで鑑定評価書を交付)に不当な鑑定があったとして、「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき鑑定を行った「株式会社全国不動産鑑定士ネットワーク」の鑑定士1名を3カ月の業務停止とし、同社と他社の鑑定士3名を戒告処分、関係鑑定士13名を注意処分した。

 また全国不動産鑑定士ネットワークに対して管理体制に問題があったとして監督処分を行うとともに、不動産鑑定業者1社に対して注意を行った。同時に、鑑定評価等業務を適正に行うよう社団法人日本不動産鑑定協会会長に対して通知した。

 かんぽの宿は平成19年12月26日、日本郵政がオリックス不動産に70施設と9カ所の社宅を109億円で譲渡すると発表したが、「譲渡額が低すぎると」当時の鳩山邦夫総務相などが反対して契約は白紙撤回となった。その後、国交省が鑑定が適正に行われたかどうかを調査していた。

 国交省は、処分の主な理由として、重要な評価条件を鑑定評価書に記載していなかったほか、合理的説明が出来ないにもかかわらず鑑定額を大幅に変更したこと、鑑定評価書に多数の誤りがあり、極めて説明不足、対象不動産を実査していなかったことなどをあげている。

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 国交省の行政処分によって、かんぽの宿の鑑定評価に問題があったことが裏付けられたわけだが、釈然としないものがある。依頼者とのやり取りの中で説明が出来ないほどの大幅な金額の変更が行われ、また実際に現地調査を行わず鑑定評価を行ったとすれば、いったい不動産の鑑定評価は何なのかということになる。

 つまり、依頼者の「高くしろ」とか「安くしろ(売却しやすいよう)」などといった要求に対して、法を捻じ曲げてでも受け入れる鑑定士の姿が浮かび上がる。現地調査もしないで多額の報酬を得ることなど信じられないことだ。それでも、今回はもっとも重い行政処分は3カ月の業務停止だ。

 国交省は日本不動産鑑定協会に対しても適正な鑑定を行うよう求め、いわゆる「依頼者プレッシャー」への対応策を報告するよう求めているが、これもよく理解できない。どのような商行為であれ依頼者(顧客、クライアント)が「高くしろ」「安くしろ」というのは当たり前の要求でもあるし、これを「プレッシャー」(圧力)と感じる鑑定の仕事とはいったい何なのか。暗に違法行為をほのめかす依頼者も依頼者だが、「プレッシャー」に負けて違法行為を犯す「士」の冠をかぶっている「不動産鑑定士」のプライドはどこにいったのか。あるいは「不動産鑑定士」にはそもそもそのようなプライドなどないのかといいたい。

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(牧田 司 記者 2011年8月29日)