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 新生「大成有楽」の矜持を見た「オーベル蘆花公園」


「オーベル蘆花公園」 完成予想図

 大成有楽不動産の素晴らしいマンションを見学した。「オーベル蘆花公園」だ。道路を隔てて蘆花恒春園(通称芦花公園)に面しているだけで価値があるが、隣接地には国の文化財に指定申請しているお屋敷があり、ランドスケープデザインも秀逸で設備仕様レベルも高い。新生「大成有楽」の矜持を見る思いがした。

 物件は、京王線八幡山駅から徒歩10分、芦花公園駅から徒歩13分、千歳烏山駅から徒歩15分、世田谷区粕谷二丁目に位置する4階建て全127戸の規模。専有面積は68.17〜83.49u、坪単価は260万円前後。竣工予定は平成25年6月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は大成有楽不動産販売。

 モデルルームオープンは昨年の9月で、販売開始は昨年11月。これまで85戸を供給しており、残りは数戸。極めて順調に売れている。

 最大の特徴は、敷地南側の道路を挟んで蘆花恒春園に面していること。蘆花恒春園とは、明治の哲学者・徳富蘇峰の弟で、「不如帰(ホトトキズ)」の小説で知られる徳冨蘆花の居宅「恒春園」を含む約80,000uの公園のことを言う。居宅は一般にも公開されている。

 もう一つの大きな特徴は、マンションの敷地約8,900uの西側の隣接地には約3,000uの邸宅があることだ。現在、この邸宅は区、都を通じて国の文化財として指定申請中だ。この借景もまた大きな価値がある。

 この緑の借景を取り込んだランドスケープデザインが秀逸だ。現地の用途地域は第一種低層住居専用地域で建物の高さ制限は10mだが、建基法第55条第2項の適用を受けて空地率を60%確保する一方で、高さが12mに緩和されている。また、敷地の一部にあった灯籠、景石、石畳などの添景物を約80本もの既存樹とともにマンションの前庭、中庭などに残している。

 建物は4棟構成で、エントランスは2カ所。外壁やエントランスには織部製陶のタイルを採用、共用部分のラウンジには家具デザイナーのジョージ・ナカジマ氏のベンチ・テーブル・フロアランプを採用。

 住戸プランでは、二重床・二重天井、全戸花台付き、御影石のキッチンカウンター、有機ガラス系新素材を用いた浴槽などとし、トイレや納戸のドアは壁面からセットバックさせ、リビングドアはソフトクローズ機能付き、エアコン配管の隠蔽処理など細かな配慮をおこなっていることも特徴の一つ。同社独自の「オーベルオリジナル防災グッズ」も全戸に配布する。モデルルームの主寝室には障子を採用するなど、徳富蘆花が好んだ和洋折衷のコーディネート提案も行っている。


前庭・エントランス

◇     ◆     ◇

 記者はこれまで芦花公園駅圏のマンションを10件以上見学している。古くは東急不動産の億ションや三井不動産レジデンシャル、野村不動産、大京、セコムホームライフなどの優れたマンションが多い。

 この物件については、本音を言えば、立地がいいのは分かっていたが、競合物件もあり価格を低く抑えるために設備仕様はそれほど高くないと予想していた。ところが、前述したように極めてレベルが高い。

 もう一つ、びっくりしたことがある。マンションギャラリーだ。マンションギャラリーは芦花公園駅から歩いて数分のところの屋敷の一部を借りて建てられているのだが、樹齢100年はありそうな黒松やシラカシかスダジイなどの巨木にしばし見とれてしまった。

 同社によると、オーベル蘆花公園の緑に囲まれたイメージを伝えるために既存樹木を残し、一部移植を行ったとのことで、それらの巨木が来場者を迎えてくれる。全体で敷地は約 500 坪はあるとのことだった。

 シアターがまた凝っている。案内されたシアタールームは南側に大きなガラス窓が設けられており、外の格子柵と巨木から木漏れ日が差し込むように仕掛けられていた。やがて窓の天井からスクリーンがするすると降りてきて映像が流された。

 シアターといえば真っ暗な暗室で見るのが普通だが、お屋敷の巨木を利用し、自然の木漏れ日が差す空間に仕立てた演出は見事というほかない。この設定はデザイン会社「andesign」の提案とのことだった。


モデルルーム

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 有楽土地が平成22年に上場廃止した後、昨年4月には、大成サービスと合併し、社名が大成有楽不動産に変わったときはがっかりした。親会社大成建設のその意図が理解できなかった。もちろん大成はスーパーゼネコンとして知らない人はいないだろうが、有楽土地もまたマンションデベロッパーとして古くから多くのファンを抱えていたはずだ。そのブランド力に応えるマンションを供給してきたかどうかはさておき、「大成」の冠をつける必要性などないと思っていた。

 ところが、今回の物件をみてその意図が分かるような気がした。大手の寡占化が進むマンション市場の中にあって大成建設グループとしてのブランド力を飛躍的に高めようという目的、決意が読み取れる。

 同社は近く中央区明石町で大成建設の設計・施工で、大成も事業主となる免震マンションを分譲する。こちらもモデルルームがオープンしたら見学して紹介したい。大成有楽が今後、マンションデベロッパーの中でどのような位置を占めるかその試金石になるのではないか。


蘆花恒春園(物件ホームページから)

(牧田 司記者 2013年1月17日)