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新日鉄興和不動産他「ザ・神宮前レジデンス」竣工

潮目変わり絶好調 林常務も絶口調


「ザ・神宮前レジデンス タワーサイド」完成予想図

 新日鉄興和不動産は7月24日、三井物産、NTT都市開発とともに開発を進めている建て替えマンション「ザ・神宮前レジデンス」が完成したのに伴い報道陣向けの内覧会を行なった。当初は出足が今一つだったのが、政権交代により潮目が変わったのを境に成約が増え、全分譲戸数の148戸のうち億ションが半分以上の高額であるにもかかわらず8割以上の125戸が成約済みという。

 物件は、東京メトロ銀座線外苑前駅から徒歩 7 分、渋谷区神宮前 3 丁目に位置する20階建て全220戸(事業協力者住戸72戸含む)の規模。専有面積は50.03〜128.86u、価格は5,790万〜21,000万円(最多価格帯12,000万円台)、坪単価は442万円。2013年4月完成済。設計・施工は竹中工務店。

 従前建物は、旧日本住宅公団が1957年に建築した地上4〜5階建て全6棟112戸の「原宿住宅マンション」。2007年2月に新日鉄興和不動産(当時、新日鉄都市開発)、三井物産、竹中工務店グループが事業協力者に選定された。

 建物は、外苑西通りに面した「タワーサイド」と、南側が高さ制限が20mとなっているエリアに面した「レジデンスサイド」の2棟構成。総合設計制度を活用して高さ制限が1.5倍の60mに緩和されている。建物共用部分には左官職人・久住有生氏、和紙デザイナー・堀木エリ子氏のアート作品が掲げられている。


「ザ・神宮前レジデンス レジデンスサイド」完成予想図

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 このマンションについては、昨年初めに見学した。ファミリーが住むのなら新日鉄興和不動産の「テラス渋谷美竹」よりずっとこちらがいいと思った。とくに「レジデンス」棟は渋谷方面にかけての眺望が開けているのがいいと思った。問題はグロスが張ることだけだと見ていた。竣工の時点で完売のメドが立ったのも納得できる。

 内覧会では久住氏と堀木氏のアートに魅入った。久住氏の作品は100号もありそうな連作5作品で、粗い目から細かい目へと風化・進化するイメージが塗り込められている。堀木氏の作品は縦4m×横11mの大作。「立湧」という宇宙のいい兆しが湧き上がる吉祥文様が描かれている。作品は外からも眺められるようになっていた。

  
久住氏の作品

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 売れ行きがいいことに気をよくしたのか、内覧会に臨んだ同社常務取締役住宅事業本部長・林英治郎氏の挨拶は絶口調@ム節を炸裂させた。

 林氏は冒頭「業界のナシモトではないが」と断りながら、物件の販売状況、建て替え事業などについて面白おかしくかつ的確に現状分析して見せた。

 中身は極めて刺激的だったが、林氏の語りは毒気を抜かせる巧みさがある。「ナシモト」とは亡くなられたあの人懐っこい顔に似合わず、数々の特ダネをものにした「梨元勝」氏であるのは間違いない。話しを再現する。

 林氏は「昨年はどうなるかと思った。ものがいいのは分かっていた。来場者も多かった。ところが『いいわね』といってくれるだけでなかなか成約が伸びなかった」と昨年当初の状況を振り返った。

 そして、一転して「180度ガラッと変ったのが昨年の11月14日(野田前総理が党首討論で国会解散を約束した日)。私は野田総理に感謝した。あれから円安、株高に一気に進んだ。富裕層の方は景気が変わるとご自分で判断されて、アクションをすぐ起こされた。海外の投資家も動いた。『こんなに安いのか』と驚かれたほどだ。このマンションもまだ20戸ぐらいが残っているが、早晩売れるのは間違いない」

 そればかりではない。「このマンションのような都心の億ションだけが売れているわけではない。当社は千葉方面の第一次取得層向けの2,000万円台、3,000万円台も供給しているが、こちらも売れ行きがいいい。億ションを買われる方はアベノミクスを先読みして買われるが、郊外マンションを買われる方はしっかり足元を眺めて判断されている。単身女性向けのコンパクトも同様。コンパクトタイプはローン控除が受けられないので、消費税があがらない今のうちに手当てしようと賢明な選択をされている」と、ユーモアたっぷりに需要者を持ち上げた。

 さらに続く。「合意形成まで時間がかかり商売的には難しいが、当社は建て替えの先駆者としてのノウハウも蓄積しており、これからもこの事業に力を入れていく。本件は最初、複数の大手デベロッパーがやろうとしたがダメだった」と自信満々に語った。

  
堀木氏の作品

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 林常務は3年前の「ミッドランドアベニュー」でも素晴らしいスピーチをされている。「スタッフが立派な資料を作ってくれたが、私は自分の言葉で話したい」と切り出し、自ら2年前に奥さんを亡くし、ワーキング・パパ≠ニして奮闘していることを語りながら物件の特性を紹介したのだ。

 長い記者生活の中でこれほど面白い話をされる個性的な人は4〜5人ぐらいしか知らない。2年ぶりにお会いしたので、「再婚はどうですか」と聞いてみた。林氏は数秒間を置いて「いい人がいるなら」と応えた。「何なら収入だけさばを読んだプロフィールを用意しようか」とも話した。ひょっとしたら、同じコピーを何枚も用意しているのではないか。

 林氏は容姿や年齢には一切こだわらない人だと確信する。年齢は従前建て替えマンションと同じ55年だ。再婚するにはいい節目だ。お似合いの方は林氏を絶句させる器量よしか、林氏以上のおしゃべりの人だろう。


林常務

子育て支援 新日鉄都市他「ザ・ミッドランドアベニュー」(2011/2/10)

(牧田 司記者 2013年7月26日)