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 NTT都市開発他「ウェリス稲毛」 「はぐむ」アピールできるか


「ウェリス稲毛」完成予想図

 全929戸という総武線最大級のマンション「ウェリス稲毛」の幹事会社・NTT都市開発(事業比率55%)は2月2日、報道陣向けマンションパビリオン内覧会を行った。「出会いや触れ合い≠フきっかけを作り、それを育むことで豊かな暮しを創り出す」をコンセプトにした注目物件だ。

 物件は、JR総武線・総武線快速稲毛駅から徒歩5分、千葉市稲毛区稲毛東四丁目に位置する敷地面積約3.8ha、14階建て全929戸の規模。専有面積は70.45〜101.87u、坪単価は160〜170万円。建物は3工区に分かれており、竣工は第1敷地が平成26年2月中旬、第2敷地が26年8月中旬、第3敷地が27年2月中旬。設計・監理は大成建設。施工は大成・新日本共同企業体。売主は同社のほか大和ハウス工業、大成建設、新日本建設、三信住建の合計5社。販売開始は3月上旬。販売代理は住友不動産販売。

 今回販売するもっとも駅に近くて南向きと西向き住戸の「ルーセントブロック1期(戸数未定)の予定価格は2,900万円〜6,500万円 (最多価格帯3,600万円) 。

 冒頭、挨拶に立った同社住宅事業部事業開発担当マネージャー大塚正氏は、「大規模マンションで入居後に重要視されるのは人づきあい。べったりでなく程よい距離感のあるコミュニティが大切であることが分かった。そのため、設計の段階から、これまで多くのコミュニティ形成のコミュニティ支援活動をされている『デザインショップまちや』さんに参画してもらった。先行的にモデルルームをオープンしたが、ほとんどのお客さまにもこのコンセプトに共感いただいた」と語った。


来嶋氏と模型

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 シアターは、元左官の熟年おじさんがひょんなきっかけから「ピザ窯づくり」の主役になるというものだった。総合地所「花小金井」の泣かせる<hラマほどではないが、強く絆≠アピールするものだ。キャッチコピーはきっかけさえあれば、人はつながるようにできている=B

 企画段階から参画している「デザインショップまちや」の来嶋洋介社長は、「阪神淡路を経験してコミュニティ支援活動に関わるようになったが、規模が大きいほどやりやすい。小さなコミュニティをたくさんつくるのが大事で、自然との関わりが欠けている都市生活を豊かにしたい」と語った。

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 この沿線では、野村不動産が坪単価150万円で圧倒的な売れ行きを見せた「プラウド船橋」があり、津田沼では坪単価200万円の三菱地所レジデンスのマンションも人気になった。稲毛も快速の停車駅だが、問題は戸数の多さと価格だ。リーマンショック後、野村不動産が駅前でタワーマンション「プラウドタワー稲毛」を坪210万円で分譲して人気を呼んだ。それ以外はあまり供給がないのはプラスに働く。コンセプトである「はぐむ」をどこまで浸透させることができるか。

 分譲単価については、大塚氏は「3工区に分かれており、消費税問題も絡むので難しい問題もあるが、坪170万円を超えない160万円台で分譲したい。周辺の中古物件の相場も高く、快速停車駅の大型をアピールしたい」と話した。

 コミュニティ支援の運営については、月額400〜500円を管理費とは別に徴収する予定だが、竣工時期が別れることもあり、2年間は事業者が負担するという。その後の運営は管理組合で検討してもらうという。

 来嶋氏に「コミュニティ支援活動はビジネスになるか」と聞いたが、来島氏は「この活動だけではなかなか難しいものがある。当社はマンションの商品企画を手がけており、2本柱で事業展開している。これからはコミュニティだけで事業ができる時代が来るかもしれない」と話した。


模型

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 現地までは駅と直結している駅ビルを抜け徒歩5分。高架下を通ることもできるので、雨天でもあまり濡れずに団地の入り口まではたどり着きそうだ。敷地の西側には帯状の雑木林が続いており、その先は稲毛の海岸も見渡せる高台立地だ。敷地内の「はぐむの森」の雑木林の面積は約7,000uもある。

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 興味深い話をしたのが、販売を担当する住友不動産販売受託営業本部受託第一営業部第三販売センター上席部長代理兼所長・古田誠氏だ。「私どもは40プロジェクトぐらい販売を担当しているが、年明けから反響が激増しており、昨年11月、12月と比べると1月は倍増している。特に金融関係の人が増えている。アベノミクスの効果は大きい」と語ったことだ。

 この点については改めて記事にしたいが、記者も同じ気配を感じている。完全に潮目が変わった。消費税だけ上がってサラリーマンの給与が上がらなければそれこそ底なし沼にはまり込む悲惨な事態になるが、具体的な景気刺激策が取られれば景気回復は本物になる。2020年のオリンピック招致が決まれば、景気上昇は長期にわたるのではないか。マンションもそうだが、あらゆる経済指標から目が離せない展開になってきた。

 古田氏はまた、来場者の51%が地元居住者で、県外が約20%、年代的には50歳以上が33%あり、60歳以上の半数は「買い増し」であることを明らかにした。6週間の総来場は約2,500名。

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 この日、見学会に参加したマスコミは記者も含めてわずか4人。うち1人は部署が異なるとのことで、実質的に3人だった。少ないのはこの日が土曜日であるのと、来週の7日の2回に分けて見学会が行われるためだ。7日は10人ぐらいの申し込みがあるそうだが、それでも戸数が929戸の千葉県屈指の大規模マンションの発表会にしてはいかにも少ない。

 せっかく主催者が取材のお膳立てをしてくれるのにその機会を自ら放棄することが記者には理解できない。今でもそうだが、無名の媒体・記者が取材チャンネルを切り開くことがどんなに困難を伴うことか、記者は嫌というほど経験させられている。マンションの現場取材ほどおもしろい取材はなく、現場が記者を育ててくれる。

 2回目の見学会に出ればいいという考えもある。マンションの記事など読んですぐ屑箱に捨てられるか忘れられる運命にあるが、それでも記者は抜かれる≠ツまり他紙に先を越されるのをもっとも屈辱的なことと考えてきた。より早く読者に記事を届けようと考えれば、2回目でもいいという選択肢はない。記事は1分でも1秒でも先に書いたほうが勝ちだ。よって、今回に限れば記者がほとんど一人勝ち≠セ。

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 現場取材を続けるとどんなうれしいことがあるかをついでながら紹介しよう。今回、挨拶したNTT都市開発の大塚氏からは「牧田さん、久しぶりです」と声をかけられた。大塚氏は記者が好きだったあるデベロッパーに以前勤務されており、顔をよく覚えてくれていた。

 その前の伊藤忠ハウジングのS部長、T氏、O氏はRBA野球大会の愉快な仲間だ。その前の鹿島の甲斐氏もまた野球大会に出場していた方だ。

 お互いをよく知っていることがどれほど取材に役立つかは言うまでもない。現場で思いがけない人と出会うことほどうれしいことはない。これも「はぐむ」だ。


101uのモデルルーム(全14戸ほとんどに申し込みが入りそうだとか)

NTT都市「ウェリス稲毛」 「はぐむプロジェクト」概要(2012/12/14)

(牧田 司記者 2013年2月4日)