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  濃縮される住宅ローン リスク管理債権 

既往債権のリスク管理債権比率は11%台、2.2兆円

住宅金融支援機構

 

 住宅ローンの審査が厳しくなっているのではないかという問題と表裏一体をなすのがローン破産の問題だ。融資条件を厳しくすれば借りられない人が増えるし、緩和すれば借りやすくなるわけだが貸し出しリスクも増大する。この線引きが難しい。住宅金融支援機構のケースでこのリスク管理債権について考えてみたい。

 リスク管理債権とは不良債権のことだ。住宅ローンで言えば、生活が破綻して返済が見込めない人や3カ月以上返済が滞っている人、貸出条件を緩和した人たちのことを言う。バブル崩壊とリーマン・ショックの影響でこの不良債権が一向に減らないという問題を抱えている。

 住宅金融支援機構の資料によると、同機構の前身である住宅金融公庫の時代に直接融資した住宅ローン融資残高(既往債権)が約20兆円あり、新たな機構となった平成19年から民間金融機関の住宅ローン「フラット 35」の融資を支援する証券化支援業務による買取債権の約10兆円を合わせ約30兆円の元金残高がある。

 問題なのは既往債権に占める不良債権割合が年々高まっていることだ。ここ数年の推移を見てみよう。平成19年度の既往債権の元金は約37.9兆円、リスク管理債権額は約3.3兆円だ。それが平成23年度は元金が約19.7兆円でリスク管理債権は2.2兆円になっている。

 元金が減っているのは新規融資を行わず返済だけが行われるのだから当然のことで、4年間で50%近い約18兆円減少している。ところがリスク管理債権額は33%の約1兆円しか減っていない。これにより、リスク管理債権比率は平成19年の8.65%から23年度は11.09%と二ケタ台に乗った。分子のリスク管理債権の減り方が緩やかで分母の元金だけが大幅に減るのだから当然だ。不良債権は根雪のように残り、汚泥のように底に溜まりどんどん濃縮されていく構図がみえてくる。

 その一方で、買取債権のリスク管理債権は平成19年度が323億円(リスク管理債権率0.72%)だったのが23年度は1,422億円(同1.37%)に増加している。この結果、平成23年度の既往債権と買取債権をあわせた元金残高約30兆円のうち7.80%の2.3兆円がリスク管理債権となっている。

                       

(牧田 司記者 2013年2月25日)