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  大和ハウスの逆襲 10年ぶり新工法

「構造100%国産材」の戸建て

「xevo GranWood (ジーヴォ グランウッド)」発売


「xevo GranWood (ジーヴォ グランウッド)」完成予想図

 大和ハウス工業は3月4日、記者発表会を行い、10年ぶりに工法を一新し、構造軸組材を100%国産材とした「グランウッド構法」の戸建て住宅新商品「xevo GranWood (ジーヴォ グランウッド)」(木造軸組工法)を3月7日から発売すると発表した。

 「グランウッド構法」とは、住宅メーカー初となる、住まいをまるごと遮熱・断熱する「オールバリア断熱」、設計自由度を拡大させる「邸別構造解析」、オリジナル接合金物の開発で柱や梁などの構造軸組材を 100 %国産材で賄う「純国産材仕様」、強度・断熱を考慮した「シームレス一体スラブ基礎」を採用した構法。

 今後、2013年6月から同社の全木造戸建住宅商品を新ブランド「xevo GranWood 」に統一し、本格展開していく。

 販売地域は北海道・沖縄を除く全国(一部地域を除く)で、販売価格は本体工事価格 3.3u当たり49.2万円〜(税込み、太陽光発電システム3.04kW搭載)。販売目標は年間1,000棟。

 記者発表会に臨んだ同社の住宅商品開発を管掌する上席執行役員住宅事業推進部長・中村泉氏は「ジーヴォは2006年以降約6万戸を販売したが、木造戸建ては年間に約600戸しかなく、大都市圏の建替え層向けで他社に後れを取ってきた。S社に勝てないでいるのは木造。2016年にナンバー一を目指すためにも今回の新商品新市場を開拓し、今期は年間1,000棟を達成したい。消費税の値上がり分の3%のコストダウンも図れた。新規営業課も4カ所に新設するし人員も投下する」と語った。

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 記者はこの日の会見を大和ハウスの逆襲≠フ第一歩だと理解した。これまで売り上げが2兆円にも迫ろうというハウスメーカーでもありデベロッパーでもありゼネコンでもある同社がどうして事業の核とも言うべき戸建て部門で他社に大きく後れを取っているのか理解できなかった。

 しかし、本日の中村氏はいつになく力がこもっていた。名前こそ出さなかったが、「S社のシャーウッド」を口にした。積水ハウスを標的にしているのは間違いない。記者は年初に「どうして核とも言うべき戸建で遅れを取っているのか」と樋口武男会長に尋ねたことがあるが、樋口会長は「そのうち変る」と話した。今回の戸建て新商品はその第一矢のような気がする。

 どれだけ積水ハウスに後れを取っているか。積水ハウスの平成24年1月期の販売実績は48,071戸(前期比11.0%増)だが、このうち鉄骨住宅は12,895戸(同3.7%増)なのに対して木造の「シャーウッド」は4,296戸(同19.8%増)と鉄骨の伸び率をはるかに上回っている。平成20年度と比較しても鉄骨は16.4%減と減らしている一方で、シャーウッドは19.7%も増やしている。このまま推移すれば、数字上は10年もしないうちに逆転する勘定だ。

 それに対して、大和ハウスの木造は年間600戸とはいかにも少ない。本業で積水ハウスを追撃するには木造の強化が避けられない。今回、「外張り遮熱・断熱」「純国産材仕様」「シームレス構造」などを掲げ、都市部の建て替えや狭小敷地ニーズを開拓する戦略だ。

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 記者は今回の新商品で大きな武器になるのは「構造材100%国産材」採用だと思う。国は現在、30%にも満たない木材の自給率を2020年までに50%に引き上げようと取り組んでいる。計画は遅々として進んでいないが、危機に瀕している森林・林業の再生・活性化は待ったなしだ。わが国がこれから生き残れるかどうかの瀬戸際だとも思う。

 この取り組みにハウスメーカーが背を向けたら間違いなくユーザーは離れていく。都市だけが栄え地方は疲弊するばかりのいびつな構造を改革するためにもハウスメーカーはその役割を果たすべきだ。地方の工務店が何とか生き延びられているのは地域の縁や絆を頼りに地産地消を行っているからだ。都市居住者をターゲットにする大手ハウスメーカーは根無し草が相手かもしれないが、都会人だってもともとはみんな地方出身者だ。心の片隅には親やその先祖の出身地のことがあるはずだ。自分の家が出身地の森林・林業の再生に役立っていると考えたら、間違いなく国産材の家を買う。

 大和ハウスはこの武器を最大限に生かせるはずだ。鉄骨担当の営業マンも10のうち1つだけでも力を「うちには木造もある」と振り向ければ目標の1,000棟など軽く突破できると思う。木材を調達するのはカラマツは北海道、スギ・ヒノキは中国と四国地方。記者だったら「グランウッド ○○県のヒノキ採用」と必ず生産地を知らせる。


木造構造材

(牧田 司記者 2013年3月4日)