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 遅行指標の地価公示と先行指標の不動産株をどう読むか


 本日(3月21日)、平成24年度の地価公示が国交省から発表される。すでにマスコミ各社には1週間前に資料が配布されており、その資料に基づいて各社はこの日の解禁日に合わせ記事をまとめている。大都市圏を中心に地価は回復基調を強め、マンションや戸建て適地については実勢地価は値上がり傾向を強めているという内容になるはずだ。

 RBAタイムズはマスコミとして認められていないので、そのような資料配布は一切ない。そこで、遅行データの地価公示よりも先行指標の直近の株価のデータを紹介する。

 別表は不動産ポストの主な銘柄の株価を平成25年3月15日の終値と過去10年間の最高値、最安値を調べたものだ。数字は日経新聞の Web 「マーケット」から拾った。一部を除き最高値はリーマン・ショック前に記録しており、最安値はその後、2008年後半から2012年にかけて記録している。

 なかなか面白い結果が出た。3月15日の日経平均は12,560円で、2007年7月に記録した最高値18,262円に対して戻り率は69%。2009年3月に付けた最安値7,054円に対しては1.8倍の上昇率だ。最高値に対する最安値の下落率は61.4%だ。

 これに対して不動産株の3月15 日の平均株価は17,189円で、各銘柄の最高値の平均値と比べ戻り率は47%、最安値に対する上昇率は6.3倍。最高値に対する最安値の下落率は92.6%だ。不動産株については時点を限定していないので、日経平均とはかなり違った結果となったが、各銘柄とも2008年後半から2009年前半にかけて付けた最安値の下落率はすさまじく、その後の上昇率は著しいものがある。いかに不動産株がサブプライムローン問題やリーマン・ショックの影響を受けたかが分かる。三井不動産や三菱地所、住友不動産も最高値と比べ最安値は7〜8割ダウンし、ほとんどの株価は10分の1ぐらいに下落した。

 その半面、底値からの現在までの上昇率はすさまじい。最近は流行らなくなったようだが、まるで仕手株の様相だ。フージャースコーポレーションは118.5倍だし、アーネストワンが23.9倍、東栄住宅が22.2倍、サンフロンティア不動産が18.3倍だ。大手の三井不動産、三菱地所、住友不動産なども3倍を越えている。

 さすがに3月15日の終値が過去10年間の最高値を更新した銘柄は一つもないが、アーネストワン、タカラレーベン、飯田産業などは7割を超える水準に達しており、2007年5月に3分割した不動産流通の東急リバブルは最高値より高い水準にあるといえなくもない。

 問題は今後どうなるかだが、株の世界は分からない。すでに地価上昇は織り込み済みと見たほうが賢明だろう。ただ、大手、中堅ともマンション、賃貸、仲介などの事業は回復しつつあるのは間違いない。戸建て分譲は一建設グループの合併問題、用地の上昇、職人不足、大手各社の事業強化もあり波乱含みとみた。

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 地価公示について一言。記者は地価公示を廃止するか、調査地点を減らし都道府県地価などと統一すべきだと思っているが、今回の調査については実勢とかなりかけ離れている遅行指標であることも問題だ。

 地価公示の調査時点は毎年1月1日とされているが、実際の調査は前年の10月ぐらいだ。つまり、今年の地価公示は選挙前のまだ日経平均の株価が9,000円ぐらいのときだった。まだまだ不透明感が蔓延しているときだった。その後、安部新政権がアベノミクスを打ち出し、円安・株高が一挙に進んだ。現在の株価は昨年10月末比で40%も上昇している。

 これに対して、地価公示はどれぐらい現在の社会・経済状況を反映しているかが問題となる。制度的には財政・金融情勢、公共投資、建築着工などの社会・経済的要因を総合的に勘案して時点修正するとされているが、バブル崩壊後の平成3年もリーマン・ショック後の平成20年もそれぞれ前年より上昇したとされた。時点修正などほとんどされなかった。

 今回も同様だろう。地価公示とは別に、最近の地価動向資料が添付されるのがせいぜいだろう。

(牧田 司記者 2013年3月21日)