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新しい視点で賃貸住宅居住を提案した
ケン・コーポレーション(10月16日)
 

 ケン・コーポレーション(田中健介社長)と子会社のケン不動産投資顧問は、JリートのFOF(ファンド・オブ・ファンズ=複数のJREITを組み合わせ運用する金融商品)と、賃貸住宅の斡旋・仲介をセットにしたサービスを開始する。FOFの分配金を毎月の家賃として充当する仕組み。個人レベルでは実践しているユーザーもいるシンプルなスキームを、支援サービスとしてたちあげた。

 ケン不動産投資顧問は今年5月、日興コーディアル証券と提携し、不動産業界ではじめて証券仲介業者の登録を行ったが、今回のシステムは、その日興コーディアルが取り扱うFOFを対象にしたもの。東京建物、三井不動産、三井不動産住宅サービス、森ビルと提携し、賃貸住宅を斡旋。礼金・保証人は不要となる。

 今回のケンの提案は「持ち家か賃貸か」という永遠のテーマに対する1つの答えだ。分譲住宅のセールストークとして「賃貸住宅は、家賃を払っても何も残らないが、持ち家ならばローンを支払っても、不動産が資産として手元に残る」という常套句がある。これにケンの提案を当てはめるならば「家賃をファンドの配当金で支払っても、ファンドという金融資産は手元に残る」ということになる。つまり、手持ち資産を不動産という固定資産に投じるのではなく、金融商品=流動資産に投じてみてはどうか、ということだ。これを賃貸住宅への居住と資産運用を同時に提案したことで、家賃の払い捨て感覚を無くさせたところに斬新さがある。

 また、実物不動産と違いファンドは換金性に優れ(売却注文後5日間で現金化)、居住者のライフスタイルに柔軟に対応できる、個々の住宅購入に比べFOFの分散投資のほうが資産目減りのリスクが小さい、などのメリットも打ち出している。ただし、ファンド購入にローンは使えないため、ある程度まとまった投資資金は必要となる。

 例えば、FOFに5000万円を投資した場合、分配金は毎月11万2500円(基準価格1万2000円で購入。毎月分配金は1万口あたり30円を想定)、1億円の場合22万5000円となる。これが、家賃の原資となる(ただし、賃借可能家賃の1 . 2倍の分配金を必要とするルールを定めてある)。

 対象となりそうなのはやはりある程度資金に余裕のある個人投資家だが、同社では「定年退職後、退職金と手持ち住宅を処分して都心に住まいを移す」といったケースも想定したという。確かに、郊外の高齢者が住まいを処分して港区や中央区の分譲マンションに居を移すケースが増えてきており、こうしたユーザーへの選択肢の1つとなりそうだ。

 それにしても、配当金だけで高級賃貸暮らしができてしまう資産家なんて、35年の住宅ローンをこつこつ返している記者にはうらやましいばかり。少し妬ける。

(福岡 伸一記者 10月16日)