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ようやく見えてきたインターネット営業のあり方(10月29日)
 

 大京と大京住宅流通が、16年度上期のインターネットをきっかけとした契約実績を明らかにした。大京の16年度上期のインターネット・ホームページ(HP)経由での新築マンション契約件数は1798戸(前年同期比42・5%増)、契約金額は731億円(同53・2%増)といずれも大きな伸びだった。これに対して、大京住宅流通のそれは契約件数432戸(同 0・5 %増)、仲介手数料4億4587万円(同0・7%増)と、ほぼ前年並みにとどまった。

 両社の上期決算発表がまだなので、正確なネット契約率(総契約件数に占めるネット契約数)は割り出せないが、大京は契約総戸数が増えていることを差し引いても、恐らく40%強まで伸びていると思われる。一方、大京住宅流通はほぼ前年並みの仲介件数とすれば、15%程度ということになる。

 大京グループは、インターネット営業に早くから注目しており、専属スタッフがネットユーザーにコンサルティング営業を行うなど、ネット営業では最先端を走っている。これは大京も大京住宅流通も同じだ。それでも、新築マンション販売と、売買仲介では、かほどまで成果が違ってきている。この傾向は他社も同じで、デベロッパーのHP営業はネット契約率が 3割も珍しくないほどの目覚しい成果をあげている反面、仲介会社のHP営業はその伸びが明らかに鈍化している。これは何を意味するのか。

 簡単に言えば、新築マンション販売と仲介営業とでは、HPの介在する割合が大きく違う、ということだ。新築マンションの場合は、物件に関する様々な情報をHPを通じて送り込むことができる。それは、モデルルームで頒布されるパンフレットをも上回るレベルであり、「青田売り」がほとんどの現状を考えれば、営業マンのフォローアップ次第で、メールのやりとりだけで契約寸前まで持ち込むことも難しくはない。メーカーがHPで商品を売るのと同様、新築マンションという「画一的商品」は、インターネットの持つメリットがストレートに営業に結びつく。これから先、ネットユーザーが増えれば増えるほど、まだまだ契約率は伸びていく可能性があるわけだ。

 仲介物件の場合も、HPにより様々な情報を知ることが出来るようになったのは同様だ。ところが、仲介物件の場合は、それだけでは知りえない情報がまだまだ隠れている。物件固有の情報、そして売主の情報などだ。結局、「個別性の高い」これらの情報はメールのやりとりだけでは無理で、最終的には営業マンとの相対による、通常の営業対応になる。

 さらに、ネットユーザーは、煩雑な手間を嫌う傾向があるので、営業マンはそれに対応したスキル(メール等による絶え間ないフォロー)を身につけていかなくてはならない。つまり、一見効率が上がるように見えるネットの活用が、逆に営業マンの足を引っ張る危険性もはらんでいるということだ。

 仲介会社のインターネット営業は、@ホームページによる情報公開A専属スタッフによるリアルタイムフォローBマイページ営業(ユーザー個々に専用ページを設置。そこを介在して営業マンとやりとりする)と進化してきた。こうして、インターネットという新たなユーザーの接点の拡大と、ユーザーとの距離を縮めてきた結果、皮肉なことに「ネット営業の成果を上げるためには、より営業マンのスキルを上げていかなくてはならない」という、至極当然の結論に帰結してきたのだ。

 ある大手不動産流通会社の役員が、こう言ったことがある。「結局、仲介営業におけるブランドというのは、営業マン個人なんですよ」。不動産流通業界がネット営業に取り組んで約5年。試行錯誤が続いていたが、ようやくその方向性が見えてきたようだ。

(福岡 伸一記者 10月29日)