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全宅連「住宅ローン会社」設立の意味するもの(11月2日)
 

 全国11万強の中小不動産業者が加盟する宅建協会の連合体「全国宅地建物取引業協会連合会」(藤田和夫会長)が11月1日、「全宅連系の住宅ローン会社を設立する」ことを機関決定した。会員から出資を募り、住宅金融公庫の債権買取認定基準を満たした住宅ローン会社を、資本金5億円以上で設立。東京都知事による貸金業登録を受けた後、公庫の実施している「証券化支援業務(新型住宅ローン)」の取扱金融機関として参入する。年末までに新会社運営に係る骨子をまとめ、1月から会員に向け、1口10万円で1口以上の出資を募っていく(全宅連は公益法人格であり、出資は一切出来ない)。

 これが実現すれば、全宅連会員は、オリジナルの住宅ローンをユーザーに提供することが可能となる。つまり、11万強の全宅連会員業者はすべからず「モーゲージ・バンカー」(直接融資の機能はないが)としての機能を持つことになるわけだ。この意義は大きい。

 まず、平成18年度までに廃止が決定している住宅金融公庫に代わる「長期・固定・低利・選別なし」のローンを、今後も提供できる環境を整えることができることだ。公庫の廃止による長期・安定的な住宅ローンの途絶が住宅・不動産市場を冷え込ませるものであるということは、業界関係者の共通認識だ。ここ数年、ようやく民間金融機関が住宅ローン重視にシフトし、多種多様な低金利商品が出てきているが、そのほとんどが短期・変動金利商品だ。また、「(民間金融機関は)晴れ渡った空の下では傘をさし、雨が降ってきた途端に傘を閉じてしまう」と藤田会長が揶揄する通り、長期的には上昇局面にある金利動向を考えると、これらの低金利商品が長続きする保証はない。融資に係る「選別」も、公庫以上に厳しい。現在の住宅ローンブームも、不景気で企業に行くはずの資金がだぶついているものをシフトしただけというのが現実であり、バブル期、多くの銀行が住宅ローンに目もくれなかったことを見れば、長期固定金利のローン商品がいつでも提供できる体制作りは必要だ。

 不動産業者そのものが、融資機能を持つということにも注目したい。これまでは「餅は餅屋に」との例えの通り、業者は「家を建てるだけ」「家を探すだけ」が本分だった。もちろん、融資を望むユーザーに対しては、提携金融機関等との連携により住宅ローンやつなぎ融資を提供してきたが、住宅金融に対しては常に一線を引いてきた。しかし、時代は変わりつつある。「これからの不動産業は、より高度なコンサルティングサービスが提供できる生活産業≠ナあるべき」という観点から、不動産業者は「住まい探しのワンストップショップ」であることが求められてくる。この意味からも、不動産業界と強いつながりを持つ住宅ローン会社ができる意味は大きい。

 ちなみに、公庫の証券化ローンとは、住宅ローン会社のローン債権を公庫が買い取り、それを信託会社に信託し、投資家に対して資産担保債権を発行し、資金を回収する仕組み。リスクは公庫と投資家が負う仕組みになっているため、住宅ローン会社のリスクはほとんどなく、その利益は公庫から得られるサービシングフィー(融資残高の約0・5%程度)となる。民間銀行のローン商品に押され、15年度は融資実行残高わずか800億円に過ぎなかったが、この秋から中古住宅にも適用が認められたことから、金融機関各社も力を入れ、さらにシェアを拡大すると思われる。全宅連では、住宅ローン会社を発足させた段階から会員への周知を進めていく方針で、会員の提供する住宅ローンの主力商品としたい考えだ。

(福岡 伸一記者 11月2日)