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先進のITと環境共生が売りの
小田急不動産「南大沢」
(1月21日)
 
 小田急不動産は、「小田急 elタウン南大沢フロンティア」の分譲を開始した。東京都が多摩ニュータウンで推進する新しい事業「先進のIT・環境共生技術を活用した次世代スタンダードの街づくり『elタウンプロジェクト』」による第一弾となる戸建てプロジェクトだ。

 太陽光発電システムとオール電化、雨水再利用システムなどの省資源、省エネルギーによる環境への配慮とエミットホームシステム、ホームセキュリティをはじめとする最先端のIT技術を採用。ランドプランでは、電線を地中化、インターロッキングの歩行者専用フットパスを設けた。住戸プランでは、戸建てディスポーザーを全戸標準装備したほか、メーターモジュール、1・25坪の浴室、吹き抜けの多用などが特徴となっている。 現地は、京王相模原線南大沢駅からバス7分徒歩6分、または多摩境駅から徒歩18分の全31区画。1期分譲として14区画が1月29日から受け付けられる。敷地面積は約178〜255平方メートル、建物面積は約112〜153平方メートル。価格は4620万円〜5650万円。設計・施工は小田急ハウジングで、構造は2×4工法。

 小田急不動産は、これまで京王線では「N−CITY」 (平成11年分譲)、「フェアリーヒルズ多摩境」(同12年分譲)で優れた商品企画の建売住宅を供給している。今回の「南大沢」は、現在考えられる全ての設備・仕様を盛り込んだ意欲作だ。アクセスにやや難はあるが、自然環境が残り、小・中学校も近く、子育てには最高の環境だ。 設備機器も充実しているが、とりわけ目を引いたのがディスポーザーシステムだ。

 戸建てディスポーザーの大手業者「クリーンテック」社製で、小売価格は約31万円。維持管理費として年間1万5000円かかる。クリーンテック社によると、戸建大型団地に採用されたのは、相模鉄道の「町田」に続き2団地目という。 維持管理費用がやや高い印象も受けるが、ディスポーザー付きのマンションに住むある主婦は「ものすごく便利。ディスポーザーは絶対必要」というように、戸建てでも普及する可能性を秘めている。

 
街づくりにデベロッパーの参画を
 
 この小田急不動産の団地は、「新住宅市街地開発法」(新住法)の適用を受ける。 新住法とは、「健全な住宅市街地の開発及び住宅に困窮する国民のための居住環境の良好な住宅地の大規模な供給を図る」ことを目的に昭和38年に施行された法律だ。1住区当たりおおむね6000〜1万人が居住することを想定した街づくりの手法で、大規模な宅地造成事業には効果的だった。土地の収用権を認めるなど事業促進にも威力を発揮した。

 半面、土地の処分や施設の整備面で制約も多く、規制緩和の必要性が指摘されてきた。1区画当たりの土地面積が大きすぎて市場価格とかけ離れ、コンビニや店舗などもほとんど建てられない。 今回の分譲に際しても、新住法の施行者である東京都は、最低宅地面積を170平方メートル(51坪)以上にしている。

 確かに広いのは結構なことだ。しかし、ユーザーの購買力は考慮しなくていいのかという問題が残る。この土地面積規制だけで、市場価格より数百万円は高くなる。そもそも行政が面積だけを基準に「良好」「劣悪」と判断するのはいかがなものか。多摩ニュータウンをはじめとするわが国の大規模ニュータウンは、同じようなものを大量に供給してきたからこそ、問題が噴出してきたのではないのか。 街とは本来、様々な階層の人が住むことで作られていくものだ。敷地が 30坪のものを作ってもいいだろうし、平屋などもいい。もっと柔軟な考え方が必要だろう。

  もう一つ、気になることがある。今回分譲される小田急不動産のJ−16街区を取り囲むようにして11の街区が整備されているのだが、なぜ同時に事業化しないのかという疑問だ。おそらく造成はとっくの昔に終わっているはずだし、財政難の都としても、土地処分が長引けばそれだけ金利負担も増える。 しかし、今のところ事業者が確定しているのはこの小田急不動産の団地だけだ。民間なら決してこんなことはしない。来場者にきちんと説明できる将来の青写真を提示するはずだ。このままでは、小田急不動産の団地が孤立してしまわないか。街づくりを促進させるためにも早く土地処分を行い、事業を促進させるべきだろう。

  東京都では、具体的に処分が決まらないのは「通学区の小学校の児童受け入れができないから」と説明しているが、これもおかしな話だ。新住法は、宅地造成とともに公共施設も計画的に配置することになっているはずだ。そもそも少子高齢化が進む現在、小学校児童が増えるのは歓迎すべきことではないのか。 多くのマンションや建売住宅現場を見学しているが、街の活性化や街づくりは行政主導ではなく、いわばプロの民間デベロッパーも参画させて進めるべきだということをつくづく感じる。

(福岡伸一記者 1月21日)