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「コットンハーバータワーズ」をプロデュースした
BEAMSの良識(1月25日)
 

 JFE都市開発、三菱地所、野村不動産の3社JVによる大規模マンション「コットンハーバータワーズ」(横浜市神奈川区橋本町2丁目、JR東神奈川駅徒歩13分、地上23〜38階建て4棟、総戸数926戸)の売れ行きが絶好調だ。横浜港を臨む複合開発、基本性能の高さ、手ごろな価格(最多価格帯3800万円台、坪単価160万円)で、昨年9月のモデルオープン以来わずか3ヶ月間で566戸を完売。いよいよ、残る1棟「ベイウエスト」360戸の販売を開始する。そして、この分譲にあたって、ライフスタイルクリエイタ−≠フ「BEAMS」に、住戸プロデュースを依頼。先日、そのモデルルームの発表会が行われた。

 「BEAMS」は、70年代から今日まで、ファッション、生活雑貨などを中心としたライフスタイルのトータルプロデュースショップとして、若者を中心に人気を博してきた。来年で創業30年と歴史もあり、今では40歳、50歳台のファンも多い。36歳の記者も、大学生時代、よく服や雑貨を買いに行った。「コットン〜」のこれまでの購入者が、30歳台を中心としたDINKS層が多数を占めたため、そうしたユーザーへの訴求力の高いBEAMSとのコラボレーションで最終分譲に弾みをつけようというわけだ。BEAMSも、住宅のプロデュースは初の試みだという。

 実はモデルルームを見る前、記者には心配なことがあった。それは「建築家やデザイナーを起用したモデルルームによくある、作り手側が先入観を押し付け、生活感の全く無いオブジェのような部屋で、おまけに1000万円近い追加料金がかかる現実性のない、ユーザー不在、話題作りだけのものではないか」ということだ。結論から言えば、その心配は杞憂に終わった。

 用意されていたBEAMSモデルは2つ。なかでも、設楽洋社長自らがプロデュースした「Snoozy」(専有面積100平方メートルの3LDK)が素晴らしかった。ベイサイドのリゾートをテーマとし、建具と壁紙は純白に統一。リビングも含めた居室と廊下は、混麻のような絶妙の足ざわりを持つベージュのカーペット敷き。居室扉は格子加工され、材質こそ集成材だが丹念に塗装が施されていた。浴室は白のタイル張り、キッチンにはバーのような高いカウンターが設けられている。照明は全て天井埋め込みのスポット照明としてあり、開放感も抜群だった。ただ、もう 1 つのモデル「デザイン・コンフォート」(専有面積83平方メートルの2LDK)は、居室の縦横方向に対し斜めにフローリングを貼り込むなどやや奇をてらった表現が気になった。が、モザイクタイル張りの水回りなど、デザインセンスはさすがBEAMSだった。

 特筆すべきは、このBEAMS仕様への変更料金。設楽社長プロデュースの住戸は、プラス100万円。なんと、1平方メートルあたりわずか1万円のアップでしかない。もう1つの住戸は約200万円だが、それでも現実味がある。BEAMSファンにはバーゲン価格と言ってもいいだろう。

 モデルルーム発表会後の懇親会で、BEAMSの設楽社長と話すことができた。「もう少しお金をかけたいと思いませんでしたか」と問うと、設楽社長はこう答えてくれた。

 「当社は、100円から100万円までの商品まで扱っている。お金をかけようと思えばいくらだって贅沢なことはできる。でも、それが果たしてユーザーの望むことだろうか。我々は、ユーザーが心地よく暮らせる空間、リアルな夢を、できるだけ手ごろなプライスで提案したかった。テレビ、家具、ファッション、グルメ…贅沢にお金をかけたいポイントは一人一人違う。私たちの提案する住まいで、あとは自由に贅沢≠ネ暮らしを楽しんでもらいたい」

 実に良識ある答え、正論だ。「どうせ、モデルルームだろう」と金に糸目をつけず贅沢な材料をつぎ込み、あげく生活感を全く感じない「芸術作品」のような住戸を作るデザイナーに、聞かせてやりたい気分だった。

 ちなみに、BEAMSとのコラボレーションを提案したのは、野村不動産の企画スタッフだという。さすが、いま乗りに乗っているデベロッパーらしい、素晴らしい提案だったと思う。


(福岡伸一記者 1月25日)