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破綻した官主導のまちづくり(3月7日)
 

 都心から約60キロ圏、東武日光線板倉東洋大駅前に広がる「板倉ニュータウン」。群馬県企業庁が開発した約218ヘクタール、計画戸数約3400戸、計画人口 1万2000人の街で、平成8年からハウスメーカーなどの一戸建てが分譲されてきた。事業期間は平成4年度から17年度だ。つまり、来年の3月で事業は完了することになっている。

 ところが、現状はどうか。一戸建てが売れたのは当初の2年間ぐらいで、現在までに入居済みとなっているのは約520戸で、人口は約1400人に過ぎない。累積赤字は25億円に上るという。企業庁は分譲事業からの撤退を打ち出した。

 約908億円の借入金を抱え、自主再建を断念した千葉県住宅供給公社が平成16年2月に申し立てを行った特定調停について、東京地方裁判所は同年10月に民事調停法17条による調停に代わる決定を出したが、この決定に対する調停関係者からの異議申し立て期限であった今年1月21日までに異議の申し立てがなく、決定が確定した。

 これによって、同公社は金融機関11行からの借入金約714億円のうち321億円の債務免除を受けるほか、住宅金融公庫からの借入金約154億円の弁済期間の延長と金利の減免、千葉県からの借入金約40億円の返済先送りを受けることとなった。その一方で、金融機関などへの返済に充当するため千葉県から新たに300億円の借り入れを受け、つくばエクスプレス沿線で開発を進めている「流山木地区土地区画整理事業」の千葉県への引継ぎを行うことが決定した。

 この2つの事例は、官主導による開発事業が完全に行き詰まっていることを示している。記者は板倉ニュータウンが分譲開始された当時、企業庁の担当者から「年間300戸は売りたい」と聞いた。平成8年といえば、民間の郊外大規模団地では年間100戸を売るのも容易でなかった時代だ。“何て世迷い言を言うのだろう”と思った。平均で70坪という区画面積も常軌を逸していると感じた。現在、累積赤字が25億円ということだが、ケタが違うのではないだろうか。

 千葉公社もしかり。県内の分譲事業は民間や都市機構との競合が激しく、商品企画や販売力の劣る公社が脱落するのは目に見えていた。「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づく、いわゆる特優賃制度も行き詰まるのは自明の理だった。民間の賃貸住宅を一括で借り上げ家賃収入を保証し、その一方で、入居年数の経過に伴う家賃の上昇を強いるシステムなど、弱含みが続く賃貸市場では機能しないのは分かりきっていた。

 こうした事例を見聞するにつけ、民間デベロッパーの役割がますます重要視されると感じる。官主導の街づくりを民主導へ変更しないと、大変な事態を招くことになる。

(牧田 司記者 3月7日)