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藤和不動産の快進撃が始まる

異例のマンション発表会 有望案件が続々

 藤和不動産が13日、「平成17年度下期マンション発表会」を業界紙記者向けに開いた。出席したメンバーは、杉浦重厚取締役社長を始め、山口裕正副社長(広報担当)、菅原靖彦常務(首都圏事業本部長)、椿本邦夫取締役(西日本事業本部長)、瀬川修取締役(首都圏事業本部販売事業部長)、栢森靖取締役(首都圏事業本部企画事業部長)という顔ぶれだ。この顔ぶれからも、この種の発表会はほとんど前例がないということからも、同社の下期販売にかける意気込みが感じられた発表会だった。

TX沿線の大型「南千住」「八潮」など

 それもそのはず、当日発表された重点プロジェクトは、概要だけ見て売れる≠ニ思える有望案件ばかりだった。

 まず、南千住駅圏で分譲される5社 JV の「東京新大陸プロジェクト」。同駅から徒歩15分の全 1300 戸超のビッグプロジェクトだ。同駅圏では 2 年前に分譲されたマンションが人気になっており、つくばエクスプレス(TX)の開業によって人気化に拍車がかかるのは間違いない。同プロジェクトも坪単価 150 万円台に抑えられるとのことで、相当な割安感がある。

 同じTX沿線では、八潮駅前の相鉄不動産とのJV「マインループ」もある。 15 階建て全 343 戸の規模だ。市役所出張所、保育施設などが併設され、同マンションに隣接して大型ショッピングモールが建設されるのも大きなインパクトになりそうだ。価格は坪単価 150 万円ぐらいで、将来性を買えば超割安だ。

 京浜急行線・JR線八丁畷駅前の同社単独「川崎サイトシティ」(全494戸)も大丈夫だろう。地域イメージはいま一つだが、駅前立地と再開発が進む川崎駅にも徒歩 15 分と近いのが魅力で、価格が安い分だけ「ラゾーナ川崎」との競合も避けられそうだ。

 川崎市高津区、久地駅から徒歩12分の7社JV「スニーカータウン」(全 855 戸)も、値づけさえ間違えなければ子育てファミリーの需要を喚起できるだろう。南武線はマイナーな沿線だが、かといって過去のマンションの売れ行きは総じて好調だ。ただし、こちらは徒歩圏の田園都市線沿線との競合は必死だ。

 首都圏プロジェクトで唯一心配なのが、大激戦の川口駅圏の「ドリームタワーズ」だろう。30階建て 239 戸(4社JV)と31階建て 259 戸(2社JV)2棟 498 戸で、前者が徒歩3分、後者が徒歩5分の立地。川口駅を始め京浜東北線沿線の供給量が増えており、分譲単価もどんどん下がっている。グロス価格も「 3500 万円がアッパー」という同業の声も多い。同社プロジェクトより駅寄りの超高層マンションも苦戦した。

 この点を質問したら、瀬川氏は「他の川口のプロジェクトはほぼ片付いたし、新都心などで高値のマンションが登場するので割安感が出るはずだ。 当社は坪170万円以下に抑えられそう」と語っている。

CSはもちろん、ESにも配慮したい

 杉浦社長は、「これらの物件は全て19年3月期の物件。今期は8月末で期初目標の7割達成できた。マンション専業として40年やってきたが、全てはお客様の笑顔のために従来に増していいマンションをつくっていく。さらに、これからは社員の笑顔を大切にしたい。三菱地所さんとパートナーを組んだことはプラスに働く。JVについても半年後には発表できそう。私どもの得意な郊外と、三菱さんが得意な高額を組合せばいいものがつくれる。私は12年ぐらい前の三菱さんと組んだ『新大津』や『星が丘』の担当だった」と語った。

 杉浦社長が言及したES(従業員満足)に記者は注目した。

 同社は、バブル崩壊後の業績不振で株価は最低 22 円まで落ち込んだ。ほとんどに「死に体」状態が長く続いた。TOWA≠フブランドは地に落ちた。「養育費がかかるからといって、待遇のいい会社に転職した社員が何人もいた。そんな最悪の状況のときでも付きあってくれたゼネコンや業者がいた。これからは確実に利益を上げられる会社にして恩返ししたい。戸数は闇雲に増やす考えはない。身の丈経営を貫く。今は、債権放棄を3度も受けた会社ですから、社員の待遇をよくするわけにはいかないが、来年の今ごろは、少しは社員の待遇も向上させられるかもしれない」と語った。

初のプロパー社長 これからが本当の「TOWAの時代」だ

創業48年の会社にしては信じられないことだが、杉浦社長は同社初のプロパー社長だ。マンション一筋、社員と苦楽を共にしている人だからこそ、その言葉に重みがある。マンション販売の発表会にも顔を出すのは、記者を大事にする≠アとを広報担当時代に学んだからだろう。これもCSの一つだ。

「最近の高値入札価格を見ると、目が点になる」(菅原常務)ほど用地取得合戦は激化している。そんなマンション市場でも、適切な価格で順調に用地取得できているからだろうか、とても還暦を迎えた人とは思えないほど、杉浦社長の顔は輝いていた。本当のTOWA<uランドを確立するのはこれからではないか。藤和の快進撃が始まる。

 

(牧田 司記者 9月26日)