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縁の下の力持ち ポラテックのプレカット工場

月産2000棟 住宅産業を劇的に変える

 ポラスグループのポラテック(中内晃次郎代表取締役)が、茨城県坂東市にある日本最大級のプレカット工場見学会を先ごろ行った。

 プレカット需要の増大に対応するために敷地約35000坪の「プレカットテクノフィールド」のプレカットラインを増設。月間構造材生産能力を従来の47000坪から3割増の62000坪に拡大したため行われたものだ。ちなみに月間構造材生産能力62000坪というのは棟数にして約2000棟で、年間では24000棟になる。1都6県のシェアの14%だという。

 専門外の記者には工場見学は難しくて分からない部分もあったが、大工仕事を劇的に変えたのはよく分かった。ほとんど人力に頼ることなく大きな材木が柱材や梁材に瞬時にして製材されていく様を見て、ただあ然とするばかりだった。同社の説明によると、通常大工が20日かかる作業を、2〜3時間で終わらせることができるという。もちろんコンピュータ制御による加工だから、加工精度に狂いはない。木屑なども最小限に抑え、木片から材木の梱包ビニールシートなどに至るまで再利用されている。

 当日、説明役を務めた同社取締役プレカット事業部事業部長・北大路康信氏によると、「従来、アメリカなどの集成材の価格は生木の3 . 5倍から5、6倍はしていた。それが1995年にヨーロッパからより安価な集成材が輸入できるようになった。集成材はプレカットにとても相性がいい。

 『高品質で低価格のプレカット材』の出現によって、住宅業界を革命的に変えた。いわゆるパワービルダーが驚異的な勢いで伸びてきたのもこのせいだ。基本性能に関するクレームがほとんどなくなってきたのが、大量供給を可能にした」という。

 記者は、この話を聞いて得心した。

 かつて、ある老舗建売り業の社長が、パワービルダーの伸びに対して「どうしてあれだけ供給できるのか。クレームに対応できなくて破綻するのは間違いない」と語っていたのを覚えているが、その社長も、プレカット技術の向上でクレームが極端に減少したことを見逃していたのだ。パワービルダーの成長の秘密は、まさにプレカットだったわけだ。

 プレカットがどれほどパワービルダーの成長に寄与したかを具体的な数字で見てみよう。

 首都圏の建売住宅市場を席捲する一建設(旧飯田建設工業)、東栄住宅、飯田産業、アーネストワン、タクトホームを合わせた飯田グループ5社の昨年の建売住宅供給量は2万戸近くにのぼり、全体シェアの3割近くを占めた。昭和50〜60年代の飯田グループの総供給量は4000戸ぐらいだったはずだ。約5倍にも増えている。ポラテックも東栄住宅やタクトホームなど飯田グループに相当量の卸売りを行っているはずだ。

 北大路氏は、「将来的にはCS(顧客満足)はもちろん、ES(従業員満足)とも統一を目指す」と語った。つまり、工場の完全な無人化を進め、従業員は別室でコンピュータを監視するだけでよい環境を整えたいというのだ。このほか国内材の活用、中国・大連でのCADセンターの増強(現在25人体制⇒100人体制)、中部・関西圏での販売網の拡大などについても熱っぽく語った。

 発表会に同席したポラスグループ広報部長・明石雅史氏は「北大路はいつもあんな調子。当社グループでもっとも熱い男」と語った。こういう人のことを縁の下の力持ち≠ニいうのだろう。文字通り見えないところで住宅をがっちり支えている。ポラスはもちろん、ポラテック&北大路氏は住宅業界の宝だ。

 

「パワービルダー神話は終わった」

 そんな北大路氏が気になる発言をした。「この7年間、絶好調だったパワービルダー神話は終わった」と語ったのだ。毎日のように出荷棟数をチェックしている人、選挙で言えば出口調査≠行っている人の言葉だから重みがある。この言葉を裏づけるように、上場各社は軒並み業績の下方修正を行っている。

 記者もなるほどと思った。パワービルダーは昨年まではすさまじい勢いで業績を伸ばしてきたが、「販売競争が激化している」「用地取得がままならない」という言葉も同時に各社から聞いていた。地価上昇は一方では追い風ではあるが、過度の競争激化で用地取得費が上昇した。しかし、激戦下の現状では分譲価格に転嫁できないから利益率は下がる。地方に活路を広げたところもあるが、供給を吸収するだけの需要がない。

 価格の安さだけで売れる時代は終わったと見るべきか。プレカット技術の向上で製造原価は下げられるかも知れないが、それ以外の居住性の向上、デザイン性、外構の充実など商品企画の差別化を一層進めないと勝ち残れない市場になるのは間違いなさそうだ。

 

(牧田 司記者 2005年10月24日)