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悪事千里を走る=@インターネット時代の怖い側面

大京のインターネット契約増大は結構な事だが

 大京(田代正明社長)が、2005年度上半期のインターネットによる新築マンション契約実績をまとめ発表した。

 これによると、インターネットをきっかけとして契約した戸数は 1 893戸(前年同期 1798 戸)、契約金額は 730 億円(同 731 億円)となり、契約戸数で前年同期比5.3%、契約金額で同0.2%減少となった。 2001 年度上半期が 921 戸、 350 億円だったから、この5年間で戸数、金額とも2倍以上に増えていることになる。同社の 2004 年度の売り上げ戸数は 8742 戸で、同年度のインターネットによる契約戸数は 3796 戸だから、4割以上がインターネットによる戸数ということになる。

 ただ、チラシ、新聞広告、現地看板、住宅情報紙、友人・知人の紹介などその他も、インターネットで資料請求をするきっかけになっているだろうから、厳密には相乗効果がもたらした結果ということもできる。

 とはいえ、インターネットの力は絶大だし、大京のインターネットによる契約戸数の増大はご同慶の至りだ。

 記者も、最近その力をまざまざと見せ付けられる事例を経験した。

 ある戸数が数十戸の規模のマンションでは度胆を抜く商品企画だったために、わずか2カ月の間に問い合わせ・資料請求が首都圏全域から殺到、約2万件にも達したというのだ。それでも早期完売には至らなかったのは、価格がその地域の民力に合わなかったからだ。

ある物件に見たインターネットの怖い側面

 しかし、インターネットの時代は怖い側面もけた違いであることを、最近の事例は教えている。

 戸数が 20 〜 30 戸の売主がほとんど知られていないマンションでは、建物が完成後1年近くするのに、全然売れていないことが記されていた。

 これは、インターネットの情報を更新していないためかと最初は考えた。しかし、よくよく見て、インターネットの情報は正しいという結論に達した。物件の魅力が全然なかったからだと判断した。

 肝心の価格が、勝負にならないのだ。この物件より駅に近い大手デベロッパーの大型マンションより坪単価にして 20 万円近くも高かった。同じインターネットの画面上で、その価格の差が確認できるのだ。

 20坪で400万円も割高の、しかも知名度がないデベロッパーの物件が、同じインターネットという土俵の上で大手デベロッパーと勝負したって勝てるわけがない。インターネットは、図らずも同じ土俵に立たされる。

 つまり、インターネットの時代では、問い合わせを増やすことは比較的容易だが、その逆に、近隣物件はいうに及ばず、あらゆる地域の物件とも比較検討されるということだ。そして、劣悪なものはいつまでたっても売れないという悲劇をもたらす。

 そればかりか悪事千里を走る≠ニいう諺通り(千里は約4000キロ、わが国国土の南北総延長は約 3000 キロだが)、掲示板やブログを通じて物件の欠点や、そのデベロッパーの問題点が一瞬にして全国に流されるということにもなりかねない。

 一度流された悪評は、その数倍のエネルギーと時間をかけないと拭い去れないことも肝に銘ずるべきだ。

(牧田 司記者 11月4日)