キャンセル発生などマンション販売現場にも影響

 

 耐震データ偽造問題は、マンション販売現場にも大きな影響を与えている。

 記者は29日、無作為に片っ端から現地販売事務所に電話してその影響を聞いた。問題が問題だけに各現場ともナーバスになっており、回答が得られたのは少数にとどまったが、回答が少ないことが返って問題の大きさを浮き彫りにしている。以下、各現場の主な回答。

 ある都心の大規模マンションでは、「まもなく完成するが、購入されたお客様のお父さんから『今回は見合わせたい』と連絡が入り、キャンセルされた。キャンセル住戸は3件発生している。このほか、契約済みのお客様からは、『書面で問題がないことを示して欲しい』『ゼネコンから説明して欲しい』などという声が多く寄せられている。こういった要望は数十件にのぼっている。氷山の一角≠ネどといった無責任な報道の影響は大きい。お客様に不信感が広まっている。誠意を持って対応する以外ない」と、影響の大きさを認めている。

 一方、売主、設計会社とも大手のマンションでは、「設計もN社だし、下請に出すようなことはしていない。来場者にも聞かれるが、不安は解消されたはず」と、余裕のコメント。

 また、ある大手売主の物件では、「検査機関がイーホームズなので、改めて第三者機関にデータを調べてもらってお墨付きを頂いている。お客様にもこのことをしっかり伝えている。耐震性には絶対の自信を持っており、どんな不安にも応えられる」という。

 このほか、「広報を通していただきたい」という回答が数多く寄せられた。「うちは販売代理。事業主さんに聞かないと答えられない」「責任者がいない」という声も多かった。「それほど影響は出ていない」という声は数件だった。

 記者は、過去数次にわたるマンションブームの発生・終焉を体験してきている。そのターニングポイントは、なぜか正月休み明けとか、ゴールデンウィーク、夏休み明けだった。

 今回の事件の影響はすでに発生していると見られるが、この12月はまだ顕在化しないように思う。問題は来年の年明けだ。どこのマンション販売現場も閑古鳥が鳴くという事態にならないことを祈るのみだ。

 

(牧田 司記者 11月29日)