「建築統合家が必要」 SD建築企画研究所・清水社長が語る

構造計算書偽造問題について語る清水氏(手前は同社が行ったある公立学校の耐震診断報告書。厚さは20〜30センチにのぼる)

 

 構造計算書偽造問題について、一級建築士でSD建築企画研究所の社長を務める清水修司氏( 59 )に今回の問題点などについて聞いた。

 清水氏は、芝浦工大建築学科を卒業後、六本木ヒルズなどの設計会社である入江三宅設計事務所に入社。アークヒルズ、ラフォーレ原宿、リクルート本社ビルなどのプロジェクトに従事。在職中、建築耐震工学分野で有名な東京大学梅村研究室へ出向し、超高層ビルの耐震新工法の開発に参加。昭和 53 年独立。社団法人・全日本不動産協会副理事長、世界不動産連盟日本支部理事などを務める。平成17年、黄綬褒章受賞。

 ――大変な事態になってきましたが

 「今回の問題については、真相の究明を待たなければならないが、確信犯ともいうべき姉歯建築事務所とゼネコンの木村建設の責任は重い。

 デベロッパーには構造のことは分からないだろうし、検査機関も同情すべきところがある。また、マスコミ報道は犯人探し≠ノ終始しており、的外れな部分も多い。

 再犯防止という意味では、確認検査制度の見直しが必要だろう。例えば、アメリカが行っているように第三者機関がチェックすることも必要かもしれないし、国交大臣認定プログラムでも 100 種類以上ある構造計算ソフトの一本化も考えなければならない。建築士にも高いモラルが求められる」

 ――建築士はプライドばかり高くて、業界に擦り寄る乞食かめかけ≠ニ自嘲気味に語った建築士もいますが

 「仰るとおり。(資格を)取っても食えない≠ニ仲間内ではよく言いますから。そういうわれわれの体質にも問題があるのかもしれない。

 それと、一般の方は建築士というと万能のように思われるが、建築士といってもデザイン・意匠・計画から施工、設備、構造など4業種もある。例えて言えば医者のようなもの。眼科の先生が耳鼻科のことは分からないのと一緒だ。

構造について言えば、建築士の中でもっとも地味な分野で、誰もなりたがらない。建築士約27万人のうち構造専門は1万人弱しかいない。スタッフが50人クラス設計事務所では数人ぐらいだろうし、10人、20人規模のところでは1人もいないだろう。だから外注に出すことになる。

 各分野に細分化され、責任の所在がわからなくなっているところにも今回のような問題が起きる背景がある。全ての分野をチェック・統括する建築統合家≠ェ必要だ」

 

 
(牧田 司記者 12月2日)