RBAタイムズHOME > 2006年 >

 

物流コンサル田中徳忠氏の話で得たヒント

物流コンサルタント・田中徳忠氏

 

運送業は2割以上が女性社長

効果的な女性の目線でのサービス 

 独立行政法人・中小企業基盤整備機構物流効率化アドバイザーも務める共栄情報システム物流コンサルタントの田中徳忠氏にお話をうかがう機会があった。不動産業界にとってもとても興味深い話なので紹介する。

 運送業界では女性社長が2割をこえているという。

 運送業は屈強な男性の社会というイメージしか記者にはないが、田中氏によると、運送業の中でも引越し代行業(田中氏によると消費者物流サービス業と呼ぶらしい)は、引越しを実際に行うのは家庭の主婦で、主婦の目線からサービスを考えるのに女性が最適で、働いている人たち(運転手)にもソフトな対応ができる女性のほうがいいというのだ。

 運送業というくくりでは日通などの大手にはかなわないが、引越し代行業の大手3社、つまりアート引越しセンター(本社大阪、寺田千代乃社長、17年度売上高519億円)、サカイ引越センター(本社大阪、田島治子社長、17年度売上高358億円)アリさんマークの引越社(本社名古屋、角田淑子社長、16年度売上高263億円)は全て女性社長だ。

 面白い話をもう一つ。これらの引越し業界には、「エプロンおばさん」なる人がいるそうだ。引越し荷物の梱包を解いたり片づけをしたりするスタッフのことで、同じ世代の人が2人一組で訪ねるのだそうだ。その狙いは、引越しに付随する家電製品などを売り込むことにあるというのだ。同じ世代で、2人というのがミソだ。アート社は、一時期ダイハツのトップディーラーになったというから驚きだ。もちろん売り込み先は、引越し当事者の奥さんだ。

マンション販売は若い独身男性が主流

 ここでお分かりいただけたと思う。引越しよりはるかに高いマンションを売るのに、どうしてマンション現場では若い、しかも大学を出たばかりのような独身男性営業マンが主流なのか。記者には全然理解が出来ない(一部のデベロッパーは女性を登用して成功しているが)。マンション購入の実権を握っているのは女性であることはとっくの昔から分かっていることではないか。マンション業界は、消費者物流サービス業と比べはるかに遅れている。

 もうひとつ、面白い話。アート引越しセンターはかつて、チラシに10円玉をくっつけて配布したそうだ。男性は、そんなチラシなど受け取らないし、受け取っても10円玉だけ抜き取ってチラシは捨ててしまうだろう。しかし、女性は10円玉と一緒にチラシも取っておくのだそうだ。その効果が抜群だったのは言うまでもない。

 田中氏は昭和38年、明治大学商学部卒業、丸善株式会社に入社。平成11年に同社退職。平成 14 年、明治大学大学院博士前期課程修了単位取得。この間、物流効率化の活動を精力的に行い、全国で講演活動を行っている。現在、国土交通省・道路経済研究所研究員。主な著書に『経営戦略化時代における共同化』(長峰太郎流通科学大学教授・共著)『中小企業論新講義』(百瀬恵夫明治大学教授・共著)など。

(牧田 司記者 10月31日)