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港区 財源委譲で100億円減収 富裕層の影響力まざまざ

課税標準額1000万円以上は区納税者の13.4%

 日本一お金持ちが多いのは東京都港区であることは当欄(2004年8月25日)でも紹介した。

 それは、@平成 15 年度の特別区民税の課税標準額(所得から様々な控除を除いた額)が2000万円を越える納税者(以下、富裕層)は4477人で、全納税者に占める割合は5・2%A富裕層1人当たりの所得額は約5957万円B所得割額(税金)の納付額が区全体の56.5%C23区全体の富裕層は1.2%――などだった。

 その後どうなっているかを調べるために区役所を訪れたのだが、そのデータは17年度で打ち切りになっていた。従来は課税標準額が「1000万円を超える人」と「2000万円を越える人」が別々にデータとして公表されていたものが、後述する税制改革に伴い、18年度からは「1000万円を超える人」だけになってしまったからだ。

 ただ、富裕層がなお増えつづけていることは推測される。平成17年度の課税標準額が2000万円以上の富裕層は4998人、5.4%となっており、15年度と比べると521人増加、0.2ポイントアップ。富裕層の1人当たり所得額も7869万円、所得割額比率も59.0%と、それぞれアップしている。18年度の「1000万円以上」は、17年度と比べると0.2ポイント増の13.4%となっている。

 港区における富裕層の推移を追っかけてきた記者にとって、18年度からそのデータが見られないのは残念だが、なぜそうなったかの理由は区役所からは明かされなかった。おそらく、取るに足らない人(一般的な自治体では富裕層の比率はコンマ以下)のデータを公表する必要がないと、国が判断したものと思われる。

 港区での取材で驚いたのは、前述した税制改革がもたらす港区への影響だ。国は、地方分権を進めるため「三位一体改革」を推進中だ。三位一体改革とは、税源委譲、補助金削減、地方交付税の見直しを同時にバランスよくすすめる改革のことだ。税源委譲とは、これまで課税所得によって3段階に分かれていた住民税(課税所得が200万円以下は5%、同700万円以下は10%、700万円超は13%)を、所得に関係なく一律10%(都道府県民税4%、市町村民税6%)にし、所得の多い人は所得税として徴収し、税負担の公平を図ろうというものだ。

 この税制改革の税源委譲によって港区は100億円前後の減収になるという。平成17年度特別区税額は598億円だから、2割近く減収になる計算だ。お金持ち≠フ影響力を税源委譲でもまざまざと見せつけている。

(牧田 司記者 11月9日)