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三井不動産他「東京ミッドタウン」3月30日オープン

「東京ミッドタウン」完成予想図

 

用地落札からわずか5年6カ月 驚異の開発スピード

 三井不動産などが開発を進めている敷地面積約6.9ヘクタールの六本木防衛庁跡地の複合施設「東京ミッドタウン」に入居する商業施設130店舗の発表会が昨日(11月15日)あった。「都心の上質な日常」をコンセプトにした130店舗のグランドオープンは来年3月30日と発表され、店舗名も明らかにされた。

 商業施設のメインターゲットは、東京ミッドタウンとその周辺の居住者や勤務者などと、独自の感性・価値観を持つ「Lifestyle Artist (ライフスタイルアーティスト)」で、ファッション、インテリア&デザイン、フード&カフェ、レストラン&バー、サービスなど5つのカテゴリーから構成される。

 今回の記者発表会では、入居テナントとの懇親パーティが用意されていたのが特徴で、カテゴリーごとに自由に取材することが許された。

 テナントの生の声が聞けるとあって、早速インタビューを試みようと思ったが、記者はマンションとホテル以外は全くの音痴。知っている店舗、会社は「クロエ」「イッセイミヤケ」「ワコール」「オンワード樫山」「虎屋」「山の上ホテル」「ザ・リッツカールトン」など数えるほどしかなかった。

 予備知識が全くない会社の人にインタビューするのは失礼と思ったが、当たって砕けろ≠ニばかり、片っ端から話を聞いた。以下、主なテナントの声を紹介する。(順不同)

玄治店 濱田家(日本橋人形町に本店がある九十余年の歴史がある寿司・和食店)

 貧乏人の悲しい性か、早速客単価を聞いたところ、若女将の三田真利さんと営業統括責任者の橋本将樹氏は「本店は5万円以上だが、ここは夜2万5000円、昼は5000〜6000円」。出店の理由は「古くからの三井さんとのお付き合い」。「飲食店が少ないのが心配」とのことだった。

ザ・リッツカールトン東京(世界的な高級ホテルグループで東京初。ツインは最低でも 53 平方bというけた違いの広さ)

 

吉江潤副総支配人

 「マンダリン、コンラッド東京、パークハイアットなど高級ホテルが揃ったが、ライバルはどこか」の問に、吉江潤副総支配人は日本にはまだ高級ホテルは少ない。競争は考えていません。共存です。マーケットは間違いなく広がる」。

 ホテルの特徴は「東京の高級ホテルは、どちらかといえばシャープなデザインが主流だが、ここは大阪とも違うモダンで温かみのあるデザインが特徴」とのことだ。

 「なぜリッツカールトンが人気なのか」の問には、「私たちが真っ先に考えるのは従業員の満足(ES)。ここが他のホテルとちがうところ」と返ってきた。ルームチャージは6〜7万円が中心。

イデア デジタル コード&ハンスプリー(イデア デジタル コードは、インテリアに調和する家電を基本に照明、生活家電、キッチン家電までラインナップしているデザイン家具店。ハンスプリーは、リビングのアートとしても魅力的な液晶テレビ)

 ハンスフリーは、シャープとか松下のメーカー品ではないが、こだわりの液晶テレビで、イデア デジタル コードは、そうした家電製品にマッチしたデザイン家具を販売する。「こだわりの家具や液晶テレビに価値観を求める人は多く、東京ミッドタウンのコンセプトと一致するので出店した」と、ハンスプリーの楊禎候社長。

鉄板焼ステーキ喜扇亭 人形町 今半(人形町今半の新しいコンセプトの店。日本で5本の指に入る鉄人が腕を振るう)

 今半・高岡慎一郎社長は、「当店は鉄板焼ですので、東京ミッドタウンのななでも比較的お手ごろな価格で提供できるのが特徴です」と語った。2年前オープンした 交詢ビルの銀座店も繁盛しているとか。

マリネッラ ナポリ(イタリアを代表するネクタイの名店。アメリカ大統領を始め世界各国の紳士が愛用。日本初)

 販売するエスディアイ藤枝大嗣氏と同・玉木達郎氏は「日本初はもちろん、イタリア以外に出店するのは初めて。クラシックなものが中心で、裏地の作り方が他社と異なるのが特徴。伊勢丹、銀座和光でも販売している。価格は2万円からで、オーダーは5万円くらい」

(右が藤枝社長で、ネクタイは他社のものだが2万1000円とか。スーツは28万円。玉木氏のネクタイはマリネッラ ナポリ製で20万円。スーツは20万円)

米処 雷神光&十五夜米八(雷神光はおにぎり弁当、十五夜米八はおこわ惣菜店で、隣りあわせで出店)

 「出店理由は?」に十五夜米八の長谷川秀二執行役員本部長と雷神光のルオー海村知世子さんは「二度と出ない一番の立地。ヒルズよりいい。地元の方たちに利用していただきたい」

長谷川氏と海村さん

 

 落札価格1800億円を見事的中 感慨深いプロジェクト

取材記者が詰め掛けた記者会見場

 記者は、このプロジェクトに特別の思いがある。防衛庁跡地の落札価格は1800億円だったが、記者は入札の半年前に業界紙の紙上で落札価格は1750億円と予想した。容積率の引き上げ、六本木ヒルズとの相乗効果、都営大江戸線の開業など総合的に判断した。見事に的中させ、小躍りしたのを覚えている。業界には「高すぎる」という声もあったが、三井不動産は安い買い物をしたと確信していた。

 それからわずか5年6カ月で開業となる。これだけは全く予想外、驚異的な開発スピードだ。「文化財の埋蔵品が発掘されれば、着工はさらに遅れるのでは」といったライバル会社の懸念≠燗なくクリアした。主だった再開発プロジェクトと比較すれば、いかに開発スピードが速いかが分かる。

 例えば開発面積が約11ヘクタールの「六本木ヒルズ」は、事業開始から完成まで17年もかかっている。開発面積が約8 . 3ヘクタールの「恵比寿ガーデンプレイス」も工場の閉鎖から完成まで9年かかった。同潤会アパートの建て替え事業である「青山アパート」「江戸川台アパート」などはおおむね20年から30年もかかっている。

 三井不動産は開発面積約6ヘクタールの芝浦アイランドの開発を進めているが、ここも用地取得から完成までわずか6年だ。

 大室康一副社長は会見の席上で「富裕層だけをターゲットにした街ではない」と語ったが、果たしてどんな街になるか、今から楽しみだ。

(牧田 司記者 11月16日)