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2015/01/12(月) 00:00

約6000戸の松原団地 建て替え本格化 戸数(面積)制限はなぜ

投稿者:  牧田司

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「シティテラス草加松原」完成予想図

 住友不動産が東武スカイライン松原団地駅で約6,000戸の「松原団地」建て替え事業の一環として538戸のマンション「シティテラス草加松原」を分譲する。この記事を書く前に、分譲に際してURと草加市が協議してつけた要件について触れたい。建築費の上昇と厳しい面積要件によってサラリーマンのマンション取得は絶望的になってきた。

◇             ◆    ◇

 昭和30年代に建設された約40,000戸のUR賃貸の建て替えが決定されたのは昭和60年代の初めだった。松原団地も昭和39年に完成した総開発面積約54ha、全5,926戸の建て替え対象団地で、計画の概要がまとまったのは平成15年。この間、URと地元の草加市はなにをやってきたのだろう。

 「松原団地」という誰も知らないようなマイナーなイメージが、信じられないような時間的ロスを生んだのか。記者はマンションの取材などで「松原団地駅」には数回訪れているが、業界関係者も含めどこにあるかを知っている人は圧倒的少数だろう。獨協大学があることで知られている駅だが、駅名を「獨協大学」に変えて欲しいという地元住民の要求はあるようだが、具体的にはなっていないはずだ。スカイツリーラインの愛称をつけた時点で駅名を変えていたらまた違った展開になっていたのではないか。

 この問題はともかく本題に入る。すでにA街区の約1,500戸の分譲・賃貸はほぼ事業完了しており、これからB・C・D街区の開発が始まる。住友不動産が分譲するマンションはB街区に該当し、B街区のほかは全てURの賃貸になる模様だ。残りのC・D街区は未定で、戸建ても含め約3.000が建設される。

 建て替え事業が始まって10年間で約1,500戸だ。全て建て替えられるまで何年かかるか分からないが、これまでの事業スピードからして30年かかるのだろうか。これから少子高齢化が加速度的に進むことを考えれば、様々な問題を抱えているといえる。

 第一に指摘したいのが、今回、住友不動産にマンション用地を売却する際の条件だ。敷地面積約2haに対して、草加市とURが課した条件は1戸につき38㎡の土地を確保することだった。2ha÷38=526。同社はほぼ条件通りに建設することが分かる。

 敷地の容積率は200%だから、容積いっぱいに住宅を建設すると、4ha÷538=74.3㎡。同社のマンションの専有面積は約70~87㎡で、平均は約75㎡というから、これもほぼ売却条件通りだ。

 さて、業界関係者の皆さんはこの条件をどう思われるか。同業の記者は「一定の条件は必要。いやなら住まなければいい」と話した。

 なるほど、確かに住宅の質は「広さ」だ。広いほうがいいに決まっている。しかし、先立つのはお金だ。いったいどれくらいのサラリーマンがお金の心配なしに自由にエリアを選ぶことができるだろうか。低中所得層が東京23区内で購入できるマンションはほとんどない。「広さ」は当然入居する人の家族構成によって変わる。単身者なら40㎡でも十分な広さではないか。一律に網をかぶせるなんて暴挙だ。

 よって、記者はURと草加市が付した条件は納得ができない。駅から徒歩6分だ。「松原団地」がマイナーなイメージしかないとはいえ、市民やその他沿線の多様なニーズが期待できる。子育てファミリーだけでなく単身者、DINKS、高齢者の需要もあるはずだ。戸数条件を設けたことは、こうした多様な需要に背を向け、商品企画の自由度を奪うものでしかない。URはこれまでも住宅用地の売却には同様の条件を付してきたが、記者はまったく理解できない。行政もURの意向にどうして沿うのかこれもまた理解できない。

 問題はこれだけにとどまらない。戸数制限(面積要件)は分譲価格に大きな影響を与える。同社は価格は現段階で未定としているが、記者は最低で175万円、アッパーで180万円と読んだ。マンションの建築費がどんどん上昇しているので、他と比べ割高ではないとおもう。

 しかし、「松原団地」駅圏のこれまでのマンションと比べればとんでみない単価になりそうだ。草加駅圏ではリーマン・ショック前に駅近で同社の物件(93戸)と東京建物の物件(63戸)が坪185万円で分譲された。東建のほうは立地条件がよく戸数も少なかったことから早期完売したが、同社は完売まで3年くらいかかったのではないか。

 草加でも坪185万円というのは限界価格だと思う。南越谷の駅近マンションもアッパーは180万円だ。

 松原団地でいえば、これまでは坪130~140万円が相場だ。今回はこれらから3~4割のアップだ。単価が上昇する分だけ専有面積を圧縮すればまた展望が開けるが、今回はそれがない。同社はこの厚い壁を打ち破れるのか。

 住宅ローン金利はただ同然まで下がったが、容易に超えられる壁ではない。街はお金持ちも低所得者も年よりも若者も住んで生き生きしたものとなる。都市計画のイロハだ。URはそれをやってこなかったから解体されようとしている。十分学習したはずだと思っていたが、まだ固陋にしがみつこうとしているのか。

 批判的なことばかり書いてきたが、一つだけ突破口になりそうな「切り口」もある。草加市は財政的に健全だが、市民の施策に対する満足度は水環境、緑環境、景観、防犯など20~30%台で決して高くない。しかし、「松原団地駅西口」の都市計画に対する満足度は57.9%で、「草加駅東口」の55.1%より高く市内でもっとも評価が高い。今後、住宅、公園などが整備されれば、「草加」を上回る住みよい街になる可能性はあるとみた。

住友不動産 全6,000戸の「松原団地」建て替えエリアで538戸のマンション(2015/1/13)

 

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