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2021/12/24(金) 13:47

東急不動産「BRANZ(ブランズ)」 リブランディングに注目・期待

投稿者:  牧田司

 東急不動産がマンションブランド「BRANZ(ブランズ)」のリブランディングに着手したのに注目し期待もしている。

 同社は12月20日付のプレス・リリースで、2030年度までに全ての分譲マンションでZEHを標準仕様にするほか、ブランドスローガンに「住まいを、未来のはじまりに。」を掲げ、分譲・賃貸・学生レジデンス事業など住宅事業の全領域で「社会課題を、暮らし心地に変えていく」という行動指針のもと、"誰もが自分らしく、生き生きと輝ける未来の実現"を目指すとしている。2022年1月からは俳優の長谷川博己さんを起用した「BRANZ」の新CMを放映するとしている。

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 バブル前から〝街づくりの東急〟を取材してきた記者は、同社が軸足を住宅からオフィス・商業施設に移すのは理解できても、何よりの財産であるはずの分譲戸建てが激減し、マンションもいま一つ伸び悩んでいるのに一抹の寂しさをずっと感じてきた。

 今回のプレス・リリースは、翌日発表した東急ハンズの全株式をカインズへ譲渡することとセットだと記者は理解している。東急不動産や東急リバブルより一般に馴染みのある東急ハンズを身売りしてでも経営資源を住宅事業に集中する意気込みの表れのはずだ。

 現段階でどのような戦略を打ち出すか分からないが、住宅事業で他の大手と互角に戦うには課題も多い。決算数字などから問題点を探ってみた。

 同社のマンション事業の粗利益率はここ数年20%前後で推移している。大手他社と比較して低くはない。問題は売上高営業利益率だ。2021年3月期の同社の住宅事業は売上高1,463億円で、営業利益は84億円、営業利益率は5.7%だ。

 この営業利益率は、20.5%と突出している住友不動産はともかくとして、三井不動産の12.3%(分譲戸建て含む)、野村不動産の8.2%(同)、東京建物の7.2%(2020年12月期)、三菱地所の6.6%と比較してもっとも低い。

 粗利益率は高いのに営業利益率が低いのは販管費などの増大が利益を圧迫しているからだ。同社の2021年3月期の完成在庫は827戸だ。計上戸数1,777戸に対する割合は46.5%に達している。

 同業他社はどうか。完成在庫の多いのは住友不動産も同様で、2021年3月期は1,184戸だ。しかし、同社の計上戸数は4,164戸なので在庫比率は28.4%だ。他では野村不動産が11.5%、三菱地所が6.1%、東京建物が14.8%となっており、三井不動産はわずか167戸(戸建て含む)で、割合は3.4%にしか過ぎない。

 どうして東急不動産の完成在庫が突出しているのか。その原因を探るには詳細な分析が必要だが、やはりブランド力(価格競争力)、個別物件の基本性能・設備仕様レベルの差だろうと思う。

 例えば、京王線調布駅から徒歩7分の「ブランズシティ調布」(305戸)で見てみよう。

 この物件については2020年春ころ、同社に取材を申し込んだが断られているので、基本性能・設備仕様レベルは分からないのだが、現地周辺は分譲戸建てやマンションの取材で数回訪れている。布多天神社の緑が素晴らしく、敷地北側にはスーパー・マルエツもあり、敷地南側は第一種低層住居専用地域だ。甲州街道を渡らなければならないハンディがあり、当初聞いた坪単価320~330万円はやや高いような気もしたが、これは許容範囲というものだ。他の沿線と比べ割り負けしている京王線とはいえ、新宿から特急で15分のアクセスを考えたら妥当な単価だと思った。

 売れ行きは好調に推移するのではと考えていたが、どうもそうではないらしい。もうすぐ竣工後1年が経過するが、相当数残っているようだ(同業他社から残戸数は聞いているが、未確認なので書かない)。物件ホームページで確認したら、12月下旬登録予定の5戸の専有面積は70.00~70.15㎡、価格は5,400万円台(1戸)~6,000万円台とある。坪単価に換算したら255~294万円だ。新築も中古もどんどん価格が上がっているというのに、この安さは何だろう。競合物件では最安値ではないか。

 基本性能・設備仕様レベルも物件ホームページから確認した。大規模ならではのランドスケープデザイン、子育てサービスのほかディスポーザー、タンクレストイレ、トランクルーム、スロップシンクなどが確認できたが、このほかに特筆できるものはない。つつじヶ丘-調布-府中-聖蹟桜ヶ丘にかけて10物件くらい供給されている激戦区にしてはアピールポイントに欠けると言わざるを得ない。

 参考までに、記者が大手と互角以上に戦えると思っているモリモト、大和地所レジデンス、ポラス中央住宅の〝中堅御三家〟の基本性能・設備仕様を少し紹介する。

 この3社に共通しているのは完成在庫が少なく、どこにも負けない〝売り〟の商品企画があることで、それぞれターゲットは異なるが年間供給量も1,000戸くらいなのもよく似ている。

 モリモトはデザイン・意匠のほかワイドスパン、設備仕様レベルが総じて高い。中堅で三菱地所、丸紅、東急不動産などの大手との共同事業(売主)の実績があるのは同社のみだ。〝モリモトファン〟は数万人いるはずだ。

 大和地所レジデンスは、奥行き4m×幅4mのオープンエアリビングバルコニーや100㎡住宅などの商品企画が突出している。

 ポラス中央住宅はキッチンとキッチンカウンター・ダイニングテーブルを一体化したピアキッチンがある。しかも価格にしたら数十万円はするはずのバックカウンター・食器棚付きだ。このほか、生活者目線の細かな工夫がユーザーの心を捉えている。最近は長谷工コーポレーション施工が増えているが、販売代理の長谷工アーベスト担当者も絶賛するほどだ。

 東急不動産は他の大手から差を付けられ、後続の中堅の追撃も受けている。かつての輝きを取り戻すには2倍、3倍の努力、エネルギーを注ぐ必要がありそうだが、ヒントは現場にある。何が足りないかは現場担当者がよく知っているはずだ。それを企画に生かすことではないか。「プラウド」も「ブリリア」もヒットする前は〝並〟だったではないか。
 

 

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