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2022/07/06(水) 17:20

首都圏マンション 郊外部の着工増をどう見るか 販売は好調なのか

投稿者:  牧田司

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 先に国土交通省が発表した2022年5月新設住宅着工戸数に注目している。利用関係別では、持家は21,307戸(前年同月比6.9%減、6か月連続の減少)、貸家は25,942戸(同3.5%増、15か月連続の増加)、分譲住宅は19,595戸(同8.5%減、4か月ぶりの減少)となり、分譲の内訳は、マンションが7,569戸(同19.9%減、4か月ぶりの減少)、一戸建住宅が11,905戸(同0.9%増、13か月連続の増加)となっている。

 2022年1月~5月の持家は99,981戸(同7.2%減)で、分譲住宅の107,553戸(同5.2%増)を下回っている。このまま推移すれば持家は年間で2020年の26.3万戸を下回り、分譲住宅が2006年以来16年ぶりに持家を上回る可能性がある。(2006年の持家は358,519戸で、分譲住宅は379,181戸)。

 持家より上回っている分譲住宅ではあるが、戸数そのものは増えているわけではない。1~5月の着工戸数は10.8万戸(前年同期比5.2%増)で、年間で前年の24.8万戸に届くかどうかた。しかも、この数字は分譲戸建てが数字を引き上げているためで、首都圏マンションは21.898戸(前年同期比8.9%減)となっており、令和3年の48,819戸(前年比11.2%減)をさらに下回りそうだ。

 この数字が高いか低いかよく分からないが、コロナ禍で首都圏人口が減少に転じたことなどを考慮すれば、これが常態化すると見るのが正解ではないか。

 1~5月の首都圏マンション着工戸数を都県別にみると、東京都は11,126戸(前年同期比25.8%減)、神奈川県は5,304戸(同10.0%減)、埼玉県は3,183戸(同78.3%増)、千葉県は2,285戸(同65.3%増)となっており、相対的に価格水準が高い東京都と神奈川県の減少が目立ち、郊外部の埼玉、千葉で増加している。

 これは、コロナ禍でファミリー層は広さや住環境などを重視する層が増えたことを受けて、デベロッパーが用地取得を郊外部へシフトしていることをうかがわせる。郊外部の着工増がどのような影響を及ぼすかだが、かつて埼玉や千葉では年間8,000戸くらい供給されていたことを考えると、直ちに市場を乱すことにはならないのではないか。郊外部を得意としてきた中堅デベロッパーの出番ということもいえる。

 マンションの販売動向についても触れたい。不動産経済研究所の2022年5月の首都圏マンション市場動向調査によると、発売物件は146物件で、供給戸数は2,466戸、当月売却戸数は1,732戸、月間契約率は70.2%だ。

 つまり、1物件当たり平均供給戸数は16.9戸で、このうち70.2%に該当する11.9戸が売れたということになる。1棟当たりの総戸数を50戸とすると、完売まで6期かかるという計算だ。

 このことからも、「月間契約率70%以上が好調ライン」というのはあてにならない。

 同研究所の調査による5月末の販売在庫数が5,881戸という数字からも、必ずしも好調でないことをうかがわせる。この数字は決して適正在庫とは言えない。年間供給戸数を3万戸とすると2割近くが残っていることになる。「4月以降売れ足が鈍っている」というデベロッパーの声もある。

 売れるものとそうでないものの二極化が進行しているとも読み取れる。年間3,775戸を計上しながら完成在庫は82戸(2022年3月期)しかない三井不動産もあれば、2,194戸の計上戸数に対して完成在庫は661戸(同)の東急不動産のような例もある。右肩上がりの市場であれば、完成在庫増そのものは懸念材料にはならないが、周辺物件との競争力を失えば販管費の増大などで収益を圧迫する。優勝劣敗の市場は今も昔も変わらない。

 先ほど、中堅デベロッパーの出番とも書いた。大手デベロッパーにはブランド力で劣る。価格にして10%も20%も差があるのではないか。しかし、その分を補って余りある商品企画を武器にする中堅(失礼)デベロッパーは少なくない。詳しくは書かないが、大和地所レジデンス、モリモト、タカラレーベン、ポラス、新日本建設などがそうだ。記者がいまもっとも興味があるのは、そうしたデベロッパーの出現だ。

 

 

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