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2023/08/10(木) 12:43

旭化成ホームズ・松本吉彦氏「一緒に登山…」 故・小林秀樹千葉大名誉教授を語る

投稿者:  牧田司

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松本氏

既報の通り、千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)が昨年(令和4年)1011日、癌のため亡くなったが、小林氏の後輩で旭化成ホームズくらしノベーション研究所・二世帯住宅研究所所長・松本吉彦氏(64)に小林氏のエピソードをお願いし、快諾していただいた。以下に全文を紹介します。

         ◆     ◇

 小林先生とは私が卒論を書いている際に東京大学工学部建築学科の建築計画研究室(鈴木成文・高橋鷹志研)博士課程でご一緒したのが出会いとなります。当時は集合住宅の住まい方調査を基にした居住者の行動や心理の考察など、建築学に心理学や社会学、動物の生態学などの本を参照しながら研究室内では研究を進めていたと思います。今回の追悼する会のコメントで小林先生の研究の特徴としてこうした分野を導入した研究が高く評価されていたのですが、これは当時の研究室内全体のトレンドでした。私が未だに仕事で居住者調査を基に研究しているのはこの時の原体験が効いていると思います。

 その頃の小林先生の研究の多くは1992年刊行の名著「集住のなわばり学」に記されています。集合住宅の共有領域に住人の「日常的支配」が及び、それが防犯の観点からオスカー・ニューマンの「まもりやすい住空間」などで指摘された「自然監視性」を生んでいること(P81-83)、LDKの窓は共有領域に面しているほうが日常的な関わりを生じやすいこと(P82)、コミュニティ形成には10戸前後のクラスターに分割することが有効であること(P153)など、実際の設計に役立つノウハウにまとめられています。

 「集住のなわばり学」は、中古価格が1万円前後の高値となっていることについて、生前小林先生ご本人が、もっとたくさん持っておけばもうかったのに、みたいなことをおっしゃっていました。

 ナワバリ学を家族関係に発展させたものが2013年刊行の「居場所としての住まい」です。住戸内の室配置の構成原理を家族関係から読み解き、二世帯住宅のような親子同居、シェアハウスのような他人同士の集住にも応用した点がユニークで、nLDK型など実際の間取りと家族関係を対照しながら考察しています。この著作を題材として、2014/1/21に第12回のくらしノベーションフォーラム「ナワバリ学で家族と住まいを読み解く」を開催し講演していただきました。

 小林先生の業績では、資産や投資としての建築、といった経済的、実務的な取り組みを扱うことに特徴があるかと思います。学術研究に留まらず、実際に社会で使われるノウハウの開発では、共同研究で大変お世話になりました。二世帯住宅の居住者インタビューや空き世帯の活用を模索した二世帯住宅シェアハウスプロジェクトhttps://www.kobayashi-lab.net/project/2010/nisetai.pdf (最終講義記念冊子プロジェクトNo17)や子育て共感賃貸住宅「BORIKI」の居住者調査(同No19)など、いくつかの共同研究をさせていただきました。

 学生時代より長きにわたってお世話になってきた先輩を失うことが残念でならないのと、近年登山にご夫婦ではまっておられたので百名山全山登頂達成者である私としては、一緒に登山する機会がなかったことが悔やまれるところです。

千葉大学名誉教授「小林秀樹先生を追悼する会」に約210名(2023/8/5

 

 

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