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2023/09/29(金) 13:08

記者の一押し「木のえほん」/内閣総理大臣賞に異議あり 第17回キッズデザイン賞

投稿者:  牧田司

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「木のえほん」

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ヒョウデザイン代表取締役/デザイナー・白岡崇氏

 第17回キッズデザイン賞表彰式を取材し、嬉しかったのは積水ハウス(3点)、大和ハウス工業(1点)、ポラスグループ(1点)が優秀賞などを受賞したことだが、建築物に興味があるので、子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門クリエイティブ部門で優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞したYKK不動産・田口知子建築設計事務所・竹中工務店の「パッシブタウン第4街区 たんぽぽ保育園」が最高に素晴らしいと思った。近ければ取材を申し込みたかった。

 そして、一押しは、子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門で特別賞(審査委員長特別賞)を受賞したヒョウデザインの「木のえほん」だ。

 鳥取県産材のスギを用いて一枚一枚手作業で作られた絵本で、厚さ7mm×4枚の8ページ立て。寸法は縦180ミリ×横120ミリ×幅30ミリ。5巻セットで、1巻の価格は4,500円。追加の5巻も発売されている。

 審査員からは「地元の杉の木で創られた絵本であり、物語も地元在住の作家に依頼するなど、地域性にこだわった作品。素材や物語、技から地域のことを知り、愛着を育む良質な取組である」と評価された。

 売れ行きも好調で、祖父母から孫へのプレゼントを中心に、これまで300セットが売れている。他県の自治体などからの引き合いもあるという。

 記者も手に取ってみた。約B6サイズなので、絵本にしては小さく、ページ数が少ない割には分厚く、軽いのに驚いたが、糸鋸で切り抜きされた部分に主人公の絵がはめ込まれているのが面白く、なによりもスギの香りがするのがいい。

 47都道府県にはそれぞれ都道府県の木があるし花もある。全国版も可能ではないか。

◇        ◆     ◇

 もう20~30年間も選挙にいったことがない記者が言及する資格もないかもしれないが(一番の理由は誰にも白紙委任などしたくないから)、最優秀賞の「内閣総理大臣賞」を受賞した「こども選挙」については異議を唱えざるを得ない。同省の目的に合致していないと考えるからだ。

 「こども選挙」を企画したのはNPO湘南スタイルで、17歳以下の子どもたちを対象とした模擬選挙プロジェクトだ。2022年10月に実施された茅ヶ崎市長選挙に合わせて、市内11か所に設けた投票所とネット投票により566人(市内の子どもの2~3%)が投票した。実際の候補者に質問するなどユニークな取り組みがマスコミで取り上げられるなど話題にもなった。

 受賞理由には、「2022年に成立した『こども基本法』には、『全てのこどもが意見を表明し社会活動に参加する機会が確保されること』が明記された。子どもを社会的弱者と捉えるのではなく、これからの社会をつくり、担う主役として位置づけることはとても重要である。また、今後のキッズデザインのあり方を示すもの」とある。

 この「全てのこどもが意見を表明し…」という法文の引用は重要な部分が欠落している。法律では「こども」を「心身の発達の過程にある者」(同法第2条)と定義し、同法3条3項で基本理念として「(すべてのこどもについて、)その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係するすべての事項に関して(意見を表明し社会活動…)」としている。

 記者は、この法律に照らしあわせ、子どもの発達の程度を考えれば、17歳以下のこどもが実際の選挙に対して疑似投票し、候補者に質問するのは乱暴に過ぎると思う。選挙権、被選挙権の年齢制限が適当かどうかは分からないが、それなりに根拠はあるはずだ。また、受賞理由には「子どもを社会的弱者と捉えるのではなく」ともあるが、社会的弱者であるからこそ「こども基本法」が定められたのではないのか。NPOを批判はしたくないが、同法第7条が定めている「国民は、基本理念にのっとり、こども施策について関心と理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が実施するこども施策に協力するよう努めるものとする」国民の努力とも背馳する。

 「こども選挙」の問題点は他にもある。選りによって、支持率が30%くらいしかない「内閣総理大臣賞」に、投票率が4割にも満たない選挙区の「こども選挙」が選ばれるというのは、賞を戯画化することにはならないのかということと、賞の顕彰目的である子供向けの製品・サービス、子ども視線の製品、施設、取り組み、調査研究に該当するのかという疑問だ。

 もう一つは、マスコミの対応だ。取り組みの模様を地元紙だけでなくNHK、朝日新聞、読売新聞(2022年11月7日付夕刊には全ペーシ特集)の大マスコミが報じたことで全国に広がった。マスコミが提灯持ちの役割を果たした極めて政治的なイベントではないのか。悪臭が鼻を突く。(2022年10月30日に投開票された茅ヶ崎市長選挙は立候補者3人で、投票率は34.69%、現職が当選した-「こども選挙」も現職の得票がもっとも多かったが、大人の知恵がすりこまれていないか心配だ)

 審査委員長・益田文和氏(インダストリアルデザイナー/オープンハウス代表取締役)は表彰式後のシンポジウムで、ウクライナ戦争や頻発する自然災害などに触れ、「未来のリスクをわれわれは作っている。子どもたちのストレスも相当高まっているはず」と心配したが、記者は「こども選挙」のような取り組みが内閣総理大臣賞を受賞することに不安を覚える。翼賛政治が復活しないかと。

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