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2023/10/07(土) 15:00

日常茶飯のNGリスト 問われるのは「茶番」を演じたOKリストのメディア

投稿者:  牧田司

 10月2日に開かれたジャニーズ事務所の会見で、指名しない記者の名前と顔写真をまとめた「NGリスト」が作成されていた問題をマスコミ各社が大々的に報じた。NHKによると、記者会見には300人近い報道陣が詰めかけていたようだ。

 この報を受け、記者は報道陣の多さに驚いたのだが、会見にもよるが、指名する、あるいは指名しない記者を特定する準備・作業は日常茶飯に行われている。記者の常識だ。

 会見では、手を上げても指名されないことから「茶番だ」と声を荒げた人もいたが、圧倒的多数派の「OKリスト」(存在したかどうかは分からないが)の方たちは「茶番」を承知の上で、自らもその演者として出席したのではないか。自らの責任に頬かぶりし、「水に落ちた犬は打て」式の会見は見苦しいというほかない。〝雄弁は銀なり〟と演説をぶった著名な記者の方がいたが、あれはいかがなものか。意見表明もいいが、他の記者の質問時間を独占する権限はないはずだ。

 今回の問題は、世間を揺るがす性加害・被害の問題だから、NGリストの存在を大々的に取り上げるメディアの姿勢は分からないではないが、この前も書いたように、エンタメ業界と大メディアが「沈黙は金なり」(ほとんど共犯)を決め込み、黙認してきたことも問われなければならないはずだ。記者が会見に出ていたら、登壇者に「今回の問題で、マスコミが沈黙していたことをどう思うか、メディアも共犯ではないか」と質問する。

◇        ◆     ◇

 上段で特定の記者を指名する、あるいは指名しないことは日常茶飯に行われていると書いたが、小生自身も会見の最初から最後まで手を上げても指名されなかったのは何度もある。性格がひねくれており、並みの質問などせず、ときには意見表明をしたり嫌味な質問をしたりするので、特定の企業から嫌がられている。

 しかし、記者の端くれの小生を会見に呼んでくれるのだから、質問しないのは逆に主催者に失礼だと考え、極力手をあげるよう務めている。指名されるか、されないか-そんなことは大した問題ではない。小生は肝心な質問はしないこともある。同業の記者にみすみす手の内を明かすほど馬鹿ではない。

 指名されたときは、その場の雰囲気によってお礼、リップサービスの意味を込め、主催者が言いたいことを引き出す、あるいは記者の方々に注意喚起する質問をすることもある。故・石原慎太郎氏が都知事を務めていたときだ。定例会見で質問したら(主催者は指名してくれた)、石原氏は「いい質問だ」と答えた。このような例も数えきれないほどある。

 以下は、メディアの方々にもいいたい。「質問してどのような答えが返ってくるか分からない質問はしない」「知らないことは質問しない」-これは質問のイロハだが、これを守らない記者が実に多い。なにを質問していいか分からない記者と同様、自らの無知をさらけ出す、底が知れる質問はしないことだ。

 添付した「『貸さない親切』『買う勇気』-住宅金融支援機構の懇親会で考えたこと」(2013/11/30)の記事も読んでいただきたい。答えが返ってこないのを承知の上の〝おきて破り〟の質問をしたら、当時の住宅金融支援機構の経営企画部長・池谷(いけのや)文雄氏は、質疑応答の大半の時間を割いて「既往債権」のあり方について語った。

 もう一つ。今年亡くなった扇千景氏が国交相に就任したとき、希望していた文科相でなかったことから「冷や水を浴びせられた」と発言したことに頭にきた記者は、就任会見の場で「あの発言は、国土交通省を馬鹿にしたものだ」と質問したら、幹事会社から「牧田さん、ここは意見を言う場ではない」と遮られた。確か扇氏は居直ったはずだ。いまなら即刻クビだろう。

 何事も是々非々。言わなきゃいけないことは「沈黙」などしないで、訥弁でもいいから主張すべきだ。記事は頂門の一針になることもある。

性犯罪に加担し隠蔽してきたマスコミの罪は大きい ジャニーズ問題を考える(2023/9/9)

「貸さない親切」「買う勇気」-住宅金融支援機構の懇親会で考えたこと(2013/11/30)
 

 

 

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