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2023/10/26(木) 16:45

管理会社の「第三者管理者」への道開く 国交省 ワーキンググループ初会合

投稿者:  牧田司

 国土交通省は10月26日、第1回「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」(座長:鎌野邦樹・早稲田大学法学学術院法務研究科教授)の会合を開催した。外部専門家などがマンション管理組合の管理者となるケースが増加している現状を踏まえ、「今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ(2023 年8月)」にもとづき、管理形態における留意事項を示したガイドラインの整備などに向けた検討を行うのが目的で、来年3月までに5回の会合を開き、答申をまとめる予定。

◇        ◆     ◇

 会合について一つひとつ紹介する余裕はない。詳細は国交省のホームページに掲載されるので読んでいただきたい。以下、記者が気付いたことを書き記すことにする。

 まず、「第三者管理者」について。これまでメディアなどで「第三者管理」などの文言で紹介されるケースが多かったが、これだと管理組合や区分所有者が関わらなくともよいと理解される可能性もあるので、正確を期すため、今後は「第三者管理者」に統一すると同省から説明があった。

 これは賛成だが、記事は文字数の制約もあるので「第三者管理」とすることも許容していただきたい。

 次に、管理会社による「第三者管理者」について。この問題については10年前、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」でも激しいやり取りが行われた。マンション管理業協会などは「利益相反」を招く恐れがあることなどから導入には反対の立場を取っていた。

 記者も、区分所有者の高齢化、建物の老朽化・管理費滞納などを起因とする「管理不全マンション」を第三者が管理するのは現実的でないと書いた。第三者管理者に報酬を支払う余裕のある管理組合は10%あるかどうかだろう。富裕層向けや投資用、大規模複合などは有効だろうと考えていた。区分所有者の代理人を可能にするのも一考だ。

 「利益相反」の問題をどうクリアするかだが、区分所有者第一主義を基本にすれば、これは検討会でもまとまるのではないか。同省の資料にも「『マンション管理トレンド調査(マンション管理業協会)』によれば、2023年時点で管理者業務を『受託して いる』、もしくは『今後受託を検討している』と回答した管理業者は167社となっており、2020年と比べて約3割増加している」「また、管理者業務を受託する管理業者のうち、理事会を設置しない方式を採用している管理業者が約7割存在している」とあるように、これからの新築マンションでは劇的に増えるのではないか。

 同じようなことを、出口健敬委員(不動産協会事務局長代理)が話された。出口氏は、ガイドラインの対象とすべきマンションは、管理不全マンションもそうだが、専門知識が必要な大規模複合マンションとか、そもそも区分所有者が住まない投資用とかリゾートマンション、理事会などに入りたがらない高額マンションなど様々なケースがあるので、これらに対応するものにすべき旨の発言をされた。この通りだと思う。

 驚いたのは、齊藤広子委員(横浜市立大学国際教養学部教授)も「衝撃を受けた」と話された、管理業者と契約を結ばずに第三者管理者契約を結んでいる管理組合が半数以上あることだった。つまり〝丸投げ〟しているということだ。これは、ありえないことだ。管理会社はきちんと説明し、契約書を交わすべきだし、権限、義務、報酬などを明記すべきだ。それを怠っている管理会社に猛省を促したい。

 これに関連することだが、管理会社による第三者管理者は、マンション分譲時の原始規約に盛り込まれることになるのだろうが、購入者には管理会社を選ぶことも含めて選択の余地はない。主体はあくまでも区分所有者だし居住者だ。原始契約には選択できる仕組み(候補をいくつか列挙して、選べるようにしてはどうか)も必要だと思う。専用使用権があるバルコニーでの喫煙を原始規約などで禁ずるのは行き過ぎだ。

 気になった発言もあった。どなたかの委員の方が「大手の管理会社は任せて安心だが、中小業者は事故を起こす可能性がある」「管理会社はピンキリ」と話された。それはそうかもしれない。しかし、こうもあからさまに見も蓋もないことを仰るのはいかがなものか。

 そもそも、国交省担当者も話したように、区分所有マンションの主体は区分所有者であり、居住者だ。管理者(管理者とは何かという論議は必要だが)は区分所有者、居住者の味方であるべきで、大手管理会社は居住者の味方であり、中小業者はそうではないことを示唆する考え方はむしろ危険だ。

 この意見に対して、確か戎正晴委員(弁護士)だったと思うが、「それは間違っている。大手とか中小という問題でない。第三者管理者制度が当たり前になるようなガイドラインにしなければならない」と指摘されたのは正鵠を射ていると思う。戎委員は「権利能力なき社団」「管理組合法人」「管理者方式」「管理組合方式」など難しい話もされたが、法を担保しないといけないので、とても重要なことを話されたのだろう。区分所有法や適正化法などとの整合性を含め、しっかり論議していただきたい。

 最後に一言。同省の論点整理は8項目あったが、完璧だと思った。完璧のガイドラインになることに期待したい。

迷走する「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(2011/8/30)

 

 

 

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