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2023/11/25(土) 18:10

メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う

投稿者:  牧田司

 今朝(11月25日)の読売新聞の記事を読んでいて「新聞・テレビ『信頼』68%」という見出しが目に留まった。スマートニュースメディア研究所などが行ったメディア価値観全国調査結果を伝えていた。

 〝そんなはずはない〟と思い、同研究所の調査結果資料を取り寄せた。その通りだった。同紙の報道は正確ではなかった。68%という数値は平均値を示したもので、同研究所は年代別にかなり詳細な調査をしており、「とても信頼している」は18~39歳で4%、40~59歳で6%、60歳以上で11%となっている。「まあ信頼している」がそれぞれ52%、65%、70%となっており、同紙は双方を合わせて『信頼』と括った結果だ。一方で、調査では「全く信頼していない」層はそれぞれ8%、6%、3%となっている。

 これをどう読むかだ。記者は18~39歳の層の「とても信頼している」が4%であるのに対し、「全く信頼していない」人は8%に達していることに注目した。

同じような記事をつい先日(2023年11月5日付)、朝日新聞の論説主幹代理・沢村亙氏による「(日曜に想う)偶然を楽しむ、人生が広がる」を読んでいたからだ。少し長くなるが、以下に引用する。

 「4年前の本紙オピニオン欄で、作家の真山仁さんが、高校生21人とジャーナリズムをテーマに議論する企画があった。

 毎朝、新聞を読んでいたのは1人だけ。『新聞が信用できない』に挙手したのは7人。ここまでは想定できた。

 ショックだったのは、その理由だ。人が書く記事は主観が入るので正しい情報ではない。つまり『人が伝えること』への不信である。人工知能(AI)が記事を書くことに『良い方法です』という反応もあった。

 不信の源流と、その後の変化を知りたくて、企画を発案した池田遥さん(21)に会った。

 『原発事故からジャニーズ問題まで、メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導しているという感覚が、私たちの世代に染みついている』との指摘は耳に痛い」

◇        ◆     ◇

 「メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導している」-これに、記者は耳が痛いどころかグサリと肺腑をえぐられ、息が詰まった。

 上段の同研究所もまた2022年5月31日、メディアに手厳しい調査報告書を紹介している。桜美林大学リベラルアーツ学群教授・平和博氏の「ジャーナリズムの価値観は2割の支持層にしか受け止められていない、その信頼を広げる方法とは」がそれで、同氏は米国の「メディア・インサイト・プロジェクト」の調査報告を次のように紹介している。

 「『(メディアは)意図的に人々を欺こうとしている』との回答が、『自国の政府のリーダー』『企業のリーダー』に比べて『ジャーナリストや記者』が最も多く、27カ国平均で67%、日本では52%だった。

 さらに『政府』『企業』『NGO/NPO』『メディア』について、『社会を統一する勢力』か『社会を分断する勢力』かを尋ねた設問では、対象24カ国の平均で『分断する』が『統一する』を上回ったのは『政府』(48%と36%)と『メディア』(46%と35%)だった。

 メディアの機能に対する評価を重ね合わせるため、『権力監視(Oversight)』『ファクト重視(Factualism)』『社会批判(問題の指摘、Social Criticism)』『弱者の代弁(Giving voice to the less powerful)』『透明性(Transparency)』というジャーナリズムの5つの基本原則についても尋ねている。このうち過半数の支持が得られたのは『ファクト重視』の67%のみ。5つの原則すべてを支持する、と答えたのは全体の11%にすぎなかった」

◇        ◆     ◇

 記者は、このメディアが「社会を分断する勢力」には同意しかねる。そもそも全世界は「分断社会」ではないのか。「分断社会」の「事実(ファクト)」を伝えるのはメディアの役割ではないのか、「統一」する手段などメディアは持ち合わせていない(ペンの力は馬鹿にできないとは思うが)。

 それより考えないといけないのは、「事実(ファクト)」とは何かだ。これは永遠のテーマだ。小説家は「嘘」をいかに事実であるように書くのが商売だが、メディアは「嘘」を暴き、「事実」を報じるのが使命だ。表層的な「事実」を追っていたら、いつまでたっても「真実」にたどり着けない。自戒の念を込めて読売新聞の記事を紹介した。


 

 

 

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