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2023/12/06(水) 14:11

日曜日定休トライアル 2割のマンション販売センターで実施へ 三井不レジ

投稿者:  牧田司

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﨑山氏(東京ミッドタウン八重洲で)

 三井不動産レジデンシャルは11月5日、メディア向け「住まい探しのシン常識」説明会を開催し、分譲マンション・戸建ての販売拠点での日曜日定休トライアルを実施し、顧客満足度の向上だけでなく、同社スタッフの働き方改革にも貢献する多様な商品・サービスを提供すると発表した。説明会で同社取締役執行役員・﨑山隆央氏が話した概略は次の通り。

 まず、データから見る社会・同社の現状では、女性の就業者数は年々増加し、2022年の共働き世帯は専業主婦世帯(430万世帯)の約3倍(1,191万世帯)に達し、首都圏マンション契約者における共働き世帯比率は20年前の1.6倍(57.4%)に増加するとともに、契約者の平均世帯年収は15年で1.4倍の1,034万円に上昇している。

 一方で、子育て中の共働き世帯の女性の45.3%は「子どもに対しての時間が取れない」悩みごとを抱えており(男性は38.1%)、共働き夫婦の女性の76.4%が「自由な(追われない)時間」を欲しいと願っている。

 同社の首都圏マンション契約者の世帯年収は2018年度比126%で、年代では20・30代は51%と過半に上っている(このうち共働き世帯は45%)。

 これまでの「住まい探し」は、情報収集からエントリー-来場予約-来場を数回繰り返し-登録申し込みという販売センター対応が中心で、この間の時間的負担は少なくない現状があり(下段で詳報)、この従来型顧客対応には、デジタルネイティブ、タイパ志向、多様性の意識が高いミレニアル・Z世代の価値観とのミスマッチが生じている。

 これらの課題に対応するため、同社はウェブセミナー、オンライン個別商談、商談ツール共有などを駆使して、販売センターへの来場階数・時間を削減した。ウェブセミナー参加者の97%から満足度が得られており、バーチャルとリアルを融合させた「三井の住まい 池袋サロン」を新設した。

 これからの「住まい探し」は、1回の来場のみで完結する手法に切り替えるため、日曜日定休トライアルを2021年に都心マンション4物件(水曜・日曜定休、第1期販売含む)に、2022年に都心マンション3物件(日曜・月曜定休、第1期除く)にそれぞれ実施。段階的に検証した結果、平日や土曜日にオンライン商談時間を多用することで、顧客満足度は同社全体の顧客満足度と変わらず、契約進捗も概ね計画比を上回った。

 同社スタッフを対象としたトライアル実施者アンケートでも、「家族・友人と過ごせる時間が増やせる」(77%)「育児中・介護中の社員に対して有効」(62%)「ワークライフバランスに寄与する」(57%)「営業における働き方の柔軟性が増す」(48%)「多様な人材が活躍できる組織づくりに寄与する(48%)などの好意的なコメントが寄せられた。

 﨑山氏は、これらの結果を踏まえ、日曜日定休トライアルを約2割の物件に採用する意向を示した。

◇        ◆     ◇

 配布された資料には、スタイルポートの2022年8月22日付プレスリリース「モデルルーム見学に関する実態調査」が紹介されており、それによるとマンション購入時に同時にモデルルームを見学する物件は「3~4件」がもっとも多く51.4%で、以下「1~2件」21.6%、「5~6件」12.6%、「7件以上」も11.7%ある。

 購入したマンションのモデルルームを見学した回数は「3~4回」が最多の49.5%、以下、「1~2回」が24.4%、「5~6回」が13.5%、「7回以上」が9.9%だ。

 1回当たりのモデルルーム見学時間は、「2時間程度」がもっとも多く41.4%、「1時間程度」が35.1%、「30分未満」が10.9%、「3時間程度」が3.6%、「4時間以上」が6.3%となっている。

 マンション購入時にたくさん物件を見学し、何度もモデルルームを訪れ、滞在時間も長い人が多いというのは話に聞いていたが、これほど多く長いとは驚いた(小生は3度売買契約の経験があるが、ほとんど一発。年間100~200件見学すると、各デベロッパーの特徴が分かり、物件概要を読むと物件の特徴の6~7割、モデルルーム見学では数分で物件のレベルがわかる)。その時間と経費を夫婦と子ども2人を想定して考えてみた。

 時間は、件数(3~4件)×回数(3~4回)×見学時間(2時間)=18~28時間となり、これに自宅からの往復時間を2時間として足すと36~56時間となる。1日8時間労働とすると夫婦で8~14日分に該当する。子どもの遊び・学習時間も考慮すると半月分はモデルルーム見学に費やしていることになる(小生は、契約を済ませ、いざ入居の直前に「お父さん、友だちと別れたくない。引っ越し嫌だ」と子どもに泣かれ手付を放棄したことがある。その後、バブルが発生した)。

 経費は、人それぞれだろうが、夫婦で月額100万円とすると約50万円、これに交通費、食事代もかさむから70~80万円といったところか。

 これに対するデベロッパーの顧客対応はどうか。〝個人情報をすべて記入しないと見せないぞ〟と言わんばかりの顧客を丸裸にする慇懃無礼なアンケートを強要し、マイナス要素、ネガティブ情報をひた隠し、パンフレットに記載されている〝特長〟しか話さない担当者が圧倒的に多いのではないか。まれに床を突板仕上げにしているのに、その木の名前を知らない。しかも、来場御礼とかいう、価格にオンされるすずめに涙ばかりの商品券を押し付ける…もう何をかいわんや。

 物件販売の広告宣伝費は2~3%くらいだろうが、値が値だから億円単位の物件も少なくない。それだけお金を注いでも来場者に対する契約者の割合(歩留まり)は2割あれば御の字という業界だ(かつて日本ランデックのマンションは歩留まり率50%という驚異的な数値を記録したことがある。台風の影響もあり、本当に欲しい人しか申し込まなかったのだが、商品企画が勝利した)。それでもマンションの粗利益率はかなり高いのはご同慶の至りだ。

 なせ、マンション購入検討者もデベロッパーもこのような時間とお金を無駄遣いしているのか。購入者にしてみれば、一生に1回か2回の買い物だから慎重になるのは理解できる、問題なのはやはりデベロッパーの対応だ。

 その最大の問題点は、肝心要の価格を「未定」とし、なかなか明らかにしないことだ。価格を開示するのはエントリーを受け付けてから数か月間後というのが多数ではないか。

 これほど消費者を馬鹿にした行為はないと記者は思う。マンションに限らずあらゆる商品・サービスは価格があるから成り立つ。「価格未定」のまま顧客を誘引しようとする姿勢は改めないといけない。

 この「価格未定」については、それを容認する〝評論家〟(その実は広告塔=金の力で評論家を抱き込むデベロッパーにも問題がないとは言えないが)をはじめメディア側にも責任の一端がある。プレスリリースでもメディア向け見学会でも「価格未定」とあればそのまま記事にする。食い下がろうとしない。目は泳いでおり、価格が公表されても価格に見合う価値があるかどうかを判断する目利き力があるとは思えない素人記者が多すぎる。一目瞭然とはこのことを言う。

 しかし、まともに消費者に向き合うデベロッパー、物件はないわけではない。2015年分譲の大成有楽不動産「オーベルグランディオ吉祥寺II」がその一つだ。当時は〝新価格〟ラッシュで、各社は予定価格を公表するのにナーバスになっていたが、同社は早々と公開し、早期完売に結び付けている。

 最近の事例では三井不動産レジデンシャル「パークタワー西新宿」がある。同社は昨年11月、「オンライン上と実空間を連動させたハイブリッド型マンション販売拠点」の「コンセプトサロン」を開設したが、その際に「パークタワー西新宿」を紹介し、予定価格もプランごとに公開した。大英断だと思った。

 「価格に見合う価値」についてもう少し触れたい。価格と専有面積は不可分だし、価格には性能(基本性能・設備仕様・居住性能)が含まれる。だから坪単価が重要であり、天井高、スパン、廊下幅、キッチン天板、床・壁仕上げ、トイレ、浴室、バルコニー、ドアノブ…などをチェックしないといけないのにスルーし、見ても書かない記者が多い…こんなことを書くと天に唾するようだが、〝月を指せば指を認む〟という言葉もある。小生が何を言いたいかを記者の方々も理解していただきたい。

 価格暴騰の裏で、最近はコストを抑制するため=利益を確保するため基本性能・設備仕様レベルを落とすデベロッパーが激増している。端的な例が浴室のタオル掛けとトイレだ。小生は最近、浴室のタオル掛けを必ずチェックするようにしている。これまでは2か所ついているのが当たり前だったが、1つどころかまったくつけていない物件も散見する。たかが1つ2万円と見くびってはいけない。100戸の物件だったら200万円だ。タンクレスが主流だったトイレも最近はタンク付きに逆流した。これでも1つ10万円くらいのコストダウンになるはずだ。クロスもいいものと劣るものでは坪1,000円くらいの差があるはずで、専有全体では馬鹿にならない価格になる。

 小生がモデルルームのリアルを大事にしているのはこのためだ。オンライン・バーチャルは結構な取り組みだと思うが、デベロッパーには消費者にしっかりと性能について説明していただきたい。

 何を書いているのか分からなくなった。このあたりでやめるが、日曜日定休トライアルは大賛成だ。閑古鳥が鳴く販売センターも多いだろうが、〝昼食をとる暇もない〟ほど顧客対応に追われる販売スタッフを救わないといけない。

予定価格を公表したのに好感 「コンセプトサロン」 三井不レジ「西新宿」(2022/11/21)

グロス価格はやや張るが坪単価は〝旧価格〟 大成有楽「吉祥寺Ⅱ」(2015/1/27)

 

 

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