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2024/01/09(火) 21:20

最多はカイヅカイブキ 外来種のヒマラヤシダー、フウなど目立つ 神宮外苑の既存樹木

投稿者:  牧田司

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神宮外苑イチョウ並木(青山通りから写す) 

全樹木表1.png 全樹木表2.png

  全樹木PDFはこちら 表1.pdf    全樹木表2.pdf
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全樹木の樹種分布

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 年末年始は神宮外苑再開発の既存樹調査に没頭した。昨年末に行われた千葉商大主催のシンポジウム「神宮外苑の歴史的文化的資産の価値を守る-イチョウ並木と100年の森-」で、基調講演を行った中央大学研究開発機構教授・石川幹子氏(イコモス日本国内委員会理事/東京大学名誉教授)が「なぜマスコミは事実を報道しないのか」の一語に触発されたからだ。

 小生もメディアの端くれだ。「事実」とは何かという問題はあるが、どのような樹木がどこにどれだけ植えられているかを伝えるべきと判断して調べることにした。誤解を招かないように改めて旗幟を鮮明にする。記者は再開発に反対ではない。秩父宮ラグビー場には一度も行ったことがないが、神宮球場は老朽化か進んでいる。西武球場や東京ドームもいいが、エスコンフィールドのようないい環境でヤクルト(対戦相手も同様)、六大学、東都大学の野球選手が活躍できるようにしてほしい。

 問題なのは、再開発の根拠になっている東京都の公園街づくり制度であり、神宮外苑を都市公園と考えている人たちへの説明が不足しており、歴史的、文化的に貴重な巨木を大量に伐採する計画であることだ。これらについては何回も記事にしてきた。再開発を主導している三井不動産は「parkシティ浜田山」や「HARUMI FLAG」などで素晴らしい街づくりを行っている。どうして今回は分かりやすい説明をしないのか、不思議でならない。

 まあ、こんな繰り言はともかく、既存樹木のデータは揃っている。事業者は2022年8月、ホームページに85ページにわたる膨大な「既存樹木調査データ」(PDF)を公表した。3m以上の樹木が対象で、本数は2,470本。秩父宮ラグビー場、イチヨウ並木、野球場、建国記念文庫、軟式野球場などエリア別に樹種名、樹高、幹周りなどの規格、活力度評価、保存の必要性、移植の難易度、現況などの関連事項、保存・移植・伐採などについて1樹木につき43列の詳細な調査結果がまとめられている。

 しかし、データはPDFであるため1本1本の樹木の現況は把握できるが、全体として神宮外苑の森がどうなっているのかを把握するのは難しい。

 そこで、弊社のスタッフに全データをエクセルに変換してもらい集計した。別表がそれだ。確認できたのは1,931本。内訳は保存が901本、移植が253本、伐採が777本(うち秩父宮ラグビー場のイチョウ18本は移植検討)となった。公表データより539本少ない。(事業者は「既存樹木については、一本一本を大切に扱い、様々な工夫により、極力、保存又は移植し、四列のいちょう並木は保存するとともに、新たなみどりも創出することとして、みどりの割合は約25%から約30%に、樹木の本数は1,904本から1,998本に増加させる」「3m以上の樹木の伐採本数は743本」としている)

 集計ミスだろうと何度もやり直した。結果は変わらなかった。理由は分かった。PDFデータには連番が付されているが、ほとんどのエリアで番号が飛んでいる。例えば軟式野球場西側は445本のはずが330本しか表示されない。軟式野球場東側も277本のうち207本しかない。

 なぜか。考えられるのは、調査を行ったのは2018年12月25日~2019年1月28日で、2022年5月12日に436本を対象に追加調査した結果をデータとして公表しているので、この間に枯損木として処分された樹木に敬意を払い、永久欠番にしたではないかということだ。

 それにしても539本の差は大きい。消えた樹木はどうなったのか、3m未満なので切り捨てたのか、通し番号通りになっていない理由を聞きたいものだ。(小生の集計ミスか)

 しかし、そんなことを考えていてもらちが明かないので全樹木のリストを紹介した。一般的な寺社仏閣とは全然異なることが分かる。わが故郷・伊勢神宮の象徴であるスギ(学名:Cryptomeria japonica=日本の隠れた財産)(は2本のみで、〝松竹梅〟のうち松はクロマツとアカマツ合わせて33本、梅は2本、竹は1本もない。その逆に、樹高が20mを超えるヒマラヤシダー73本、フウ18本、ユリノキ9本、プラタナス9本、メタセコイア7本、タイサンボク5本など明治時代以降に輸入された外来種が存在感を示していることが分かる。

 伐採樹木でもっとも多い204本のカイヅカイブキも同じだ。コニファーに似ていることから昭和の時代に洋風生垣として多用されたようだが、小生の田舎で生垣といばマキノキが主流だった。創建の目的が明治天皇を奉ることであり、デザインもそうだが欧米の文化を積極的に取り込んでいた当時の社会状況を反映しているのは明らかだ。

 カイヅカイブキはこのうち164本が伐採されることになっており、全伐採樹木777本の21%を占める。樹高はほとんど5m以下なので代替えもきく。みどり環境に及ぼす影響は少ないのではないか。同様に樹高が5m以下の樹木は49本のサンゴジュ、25本のモクセイ、13本のツバキ、9本のサザンカなどもそうだ。

 これらのことを考慮すると、事業者が現在のみどり率25%を30%に引き上げる計画としているのはそれなりに説得力がある。再開発に反対する人たちは屋上緑化も「みどり」に含めると批判しているが、足元のみどりを増やすことは可能だと思う。

 2番目に多い166本のマテバシイはどこにでもよくある常緑広葉樹で、3番目の158本のイチョウはほとんど樹高が20mを超えている神宮外苑のシンボルだ。

 鈴木敏・澤田晴智郎氏著「公園の話」(技報堂出版)によると、このイチョウ並木は「1923年(大正12年)から4年がかりで、新宿御苑の一本のイチョウから取れた実を育て、その苗を植えたものだそうです」とあるから凄いではないか。みんな兄弟姉妹だ。地下では根を絡ませて仲良くしているのか、分捕合戦を演じているのか。「母」の枕詞として知られる垂乳根は雄株にも生えるというのも面白い。施設に近接している西側より東側のイチョウのほうが樹高が2mくらい高いのは、その東側に植樹帯があるためだ。

 このほか、総じて常緑樹が多いのも特徴で、〝なんじゃもんじゃ〟の愛称で知られるヒトツバダコは59本。

 細かいことだが、気になった樹種名もある。シダレザク48本、ヤエザクラ33本、ヤマザクラ18本、ソメイヨシノ29本、カンヒザクラ」4本、カワヅザクラ1本と品種で表示されているのに、「サクラ」も39本ある。このほか、43本のモクセイと9本のキンモクセイは異なるのか、24本のイロハモミジと6本のノムラモミジ、7本のモミジはどうなっているのか。

 以下は小生にもなじみが深い樹木について。カキやビワ、イチョウ(銀杏)はもちろんだが、ヤマモモが最高に美味しかった。裏山の至るところに自生しており、初夏のころになると、父親と木に登ってかごいっぱいに収穫し、砂糖をふりかけて食べた。クワの実もなかなか美味しい。カヤノキの実は、形はアーモンドに似ており、拾っては家に持って帰り、炒ってもらってよく食べた。それほど美味しいものではない。シイノキの実も美味しくはないが、よく食べた。モチノキは、実を擦ってメジロ獲りに使った。これも美味しくはない。カクスノキはもっとも好きな木の一つで、いつも葉っぱをちぎっては匂いをかぐことにしている。ドクダミの葉っぱと同じで、記者にとって鎮静剤だ。

 各エリアの樹木については稿を改めて紹介する。活力度と保存・移植・伐採の関連性も探ってみたい。

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カイヅカイブキ

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日本イコモスなどは左側の「ロイヤルガーデン カフェ青山」に面するイチョウが弱っていると警告している

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秩父宮ラグビー場のイチョウ(立派な垂乳根もある。雄株か雌株か)

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,メタセコイアの葉っぱ

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ヒトツバダコ(絵画館前広場)

氷の微笑、根回し、考え方更新、都市公園とは…神宮外苑を考えるシンポ 千葉商大(2023/12/19)

 

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