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2024/01/23(火) 09:12

「超競争時代 リーダーは人間らしくあれ」 元ソニー社長・平井一夫氏 ナイス講演会

投稿者:  牧田司

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平井氏(グランドプリンスホテル新高輪で)

 1月17日に行われたナイス「新春経済講演会」で、元ソニー社長でソニーグループシニアアドバイザー、一般社団法人プロジェクト希望代表理事・平井一夫氏(63)が「変革のためのモチベーショナルリーダーシップ」と題する講演を質疑応答の30分間を含めて90分にわたって行った。

 今更ソニーグループについて説明するまでもないが、売上高12兆4,000億円、営業利益1兆1,700億円、純利益8,800億円(2024年3月期決算予想)の、わが国上場企業売上高ランキング9位(日経新聞)のビッグカンパニーで、トヨタ、日産、パナソニックなどとともに世界に知られるグローバル企業だ。

 記者は家電・電気機器業界のことはよく分からないのだが、上場企業は東証プライム市場だけで約130社にのぼる(Ullet)。業種別売上高ではトップの卸売業の約126.1兆円に次ぐ85.5兆円で、第3位の総合商社の66.2兆円を上回る。

 主な企業は同社を筆頭にパナソニックホールディングス、日立製作所、リコー、東京エレクトン、三菱電機、キャノン、富士通、東芝、日本電気、シャープ、東京エレクトロン、リコー…わが国経済をけん引してきたメーカーが名を連ねる。

 平井氏は講演会の冒頭、数分間費やしソニーの挑戦の歴史、変革の歴史について説明したが、平井氏より一世代上の記者は〝ガラパゴス〟そのもので、知っているのは「明るいナショナル ラジオ テレビ なんでもナショナル」であり「光る 光る 東芝」だ。ソニーといえば、カセットテープや商品名だけは知っている「ウォークマン」くらいだ。アップルのスマートフォンにソニーの技術が注がれているのも初めて聞いたし、ソニー・ホンダモビリティがどんなEV車を造ろうとしているのかも知らない。

 事程左様に無知ではあるが、ソニーも総合商社などと同様、業績は2000年以降に落ち込み、最悪期の2012年には株価は801円(11月30日)の最安値を記録した。2000年3月1日に付けた上場来最高値33,900円から実に98%マイナスとなった。〝倒産危機〟までささやかれた。(現在の株価は14,800円=1月22日)

 ところが、平井氏が社長に就任した2012年を底に業績はV字回復。競争が激しい家電事業からG&NS(ゲーム&ネットワークサービス)、音楽、映画のエンタテイメント3事業に事業をシフトしたのが奏功したといわれている。

 平井氏が社長に就任して社内外にアピールしたのは「ソニーは感動を提供する会社」だった。ソニーグループは平井氏が会長を退任した2019年1月、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパス(Purpose)を発表した。

 平井氏は「感動を提供する」というパーパスがとても大事と強調したのち、本題である「モチベーショナルリーダーシップ」について、「現代は常に変革が求められる超競争時代であり、既存の相手と争うペースが上がっているだけでなく、予想もしなかった異業種、新規参入も相次いでおり、長い期間かけて築いたビジネスモデルは一昼夜で通用しなくなる」と語った。

 そして、このような超競争時代に求められるリーダーは、社員のモチベーションを120%引き出せる資質の持ち主でなければならないと説いた。上場企業が130社に達し、日進月歩の技術革新が進む今日、「超競争時代」というのもなるほどと納得した。

 その条件として「わたしのこれまでの経験からいって一丁目一番地」と語ったのは①正しい人間であることだ。しかし、平井氏は「正しい人間」とはどのような人間であるかについて一言も話さなかった。詭弁を弄する哲学者か金満宗教家のように、手あかまみれの陳腐な人生訓を垂れ、抹香臭い御託を並べていたら、聴衆はしらけ切ったはずだ。実学・実践に基づいた言葉だから心魂に徹する。

 「正しい人」について具体的言及を避けたが、聴衆にとって耳が痛いこともストレートに語った。エン・ジャパンが行った社員が上司に期待するアンケート調査で、「自分の意見や考えに耳を傾けてくれる」「公平・公正な評価」「明確な判断」「具体的なアドバイス」「気分に浮き沈みがない」「いつでも相談に乗ってくれる」「的確なゴール設定をしてくける」-などの項目を上げ、この真逆のことを上司・経営者は行っていると指摘し、「このようなことをしていたら、社員のモチベーションを120%引き上げられるわけがない」と苦言を呈した。

 ②は高いEQ(Emotional Intelligence Quotient)、③はパーパス・ミッション・ビジョン・バリューのPMVV(Purpose・Mission・Value・Vision)、④は戦略立案、⑤は現場訪問だった。

 ②のEQが高い人の周りにはIQ(Intelligence quotient)の高い人が自然と集まるものであり、③のPMVVは年頭の社長の訓示や名刺の裏だけでなく、社員一人ひとりに至るまで毎日の行動に落とし込むことが重要で、「社員は上司の一挙手一投足を見ている。言行一致を貫かなければならない」と語った。④については、①~③の土台がしっかりしていて初めて可能になると、自らの体験を交えながら話した。

 ⑤では、ソニー社長時代の6年間に70回、月に1回のペースで世界を駆けまわりミーティングを行ったと話し、「大事なのはハート、人間と人間の対話にしないといけない。人事や広報が事前に用意した想定質問や模範解答の原稿を棒読みするようなことをやってはならない」と述べた。

 30分間の質疑応答では「Q&Aのルールはないというのがわたしのルール。何を聞いていただいても結構」と約1,100人の聴衆に呼びかけ、一つひとつ丁寧に答えた。

 最後に「実は、私は話すのが苦手。インタラクションついてはそれなりに勉強した」と明かし、「一番いけないのは知ったかぶり。分からないことは『教えて欲しい』と、間違ったら『間違った』という勇気、決めたことは自らが責任を取る自信が必要。改革にはマイナスもつきもの。人事面では社員が不利益を被らないようしっかり対応することも重要。これらを実践するとネガティブなことはアドバンテージになる」と締めくくった。

 平井氏はこの種の講演会を月に多いときで7~8回、少ないときは4回くらいこなし、講演料は「あらゆる子どもに、きっかけになる、感動体験をつくる」をMISSIONに掲げる「プロジェクト希望」に寄付しているという。

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ナイス 新春経済講演会(グランドプリンスホテル新高輪で)

 ナイス 4年ぶりに「新春経済講演会」1,100人が参加(2024/1/19)

 

 

 

 

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