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2024/01/24(水) 20:02

どうなる今年の経済・景気、2024年問題、カーボンニュートラル ナイス講演会

投稿者:  牧田司

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ナイス「新春経済講演会」(グランドプリンスホテル新高輪で)

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杉田氏

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 ナイスは1月17日、グランドプリンスホテル新高輪に約1,100人の聴衆を集め「新春経済講演会」を開催し、第三部では物流、弁護士、シンクタンク、木材、建設、住宅設備メーカーによるトークセッション「どうなる!?2024」を行った。

 冒頭、コーディネーターを務めたナイス代表取締役社長・杉田理之氏は「昨今は不確実、不透明、非連続性の時代と言われ、見通しを立てるのが難しくなっている。そんな中で本日は3つのテーマで論議を進めていただきたい。一つ目(Ⅰ)は2024年の経済・景気の動向について、二つ目(Ⅱ)は法改正への対応とその課題について、三つ目(Ⅲ)はカーボンニュートラルの取り組みについてで、皆さんのご意見を伺いたい」と挨拶した。以下、社名・団体名五十音順に意見を紹介する。

ドル・円相場は130円 ゼロ金利政策は持続

シンクタンク 安藤範親近氏(農林中金総合研究所主任研究員)

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安藤氏

Ⅰ 中国経済は不動産を中心に景気は減速する見込み。米国は労働市場とサプライの人不足、経済活動の正常化とインフレの鈍化が同時進行している。労働市場では直近の求人倍率が1.3倍になっており、景気は緩やかな回復傾向をたどるのではないか。欧州は景気減速が予想される。東南アジアは、中国や世界的な経済状況に左右されるが、2025年に向け緩やかに回復する。日本はコロナ後のサービス、インバウンド需要は一段落し、緩やかな成長率の中、為替は米国の利下げと日銀の利上げ要因からドル・円相場は円高に向かい130円くらいになると予測する。ゼロ金利政策は賃金・物価動向からして持続するのではないか。

 世界の景気変動、紛争、気候変動、環境規制などで需給がひっ迫し、ウッドショックはありうる。

悲観することない着工減 住宅の資産価値向上に取り組む

住宅設備メーカー 山田昌司氏(パナソニック ハウジングソリューションズ代表取締役 社長執行役員)

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山田氏

 2023年の住宅着工は約83万戸で、前年比3.9%減。2024年もほぼ同じ水準ではないか。棟数は減少しているが、住宅投資額は17兆円レベルをキープしており、それほど悲観する必要はない。住宅の省エネ化、カーボンニュートラルへの取り組みなど住宅の資産の維持・向上への政策に向き合うことが必要。業界構造変化では、いわゆるパワービルダーへ需要がシフトし、地域の注文住宅を中心とするビルダーは苦しくなる。一方で、大手メーカーによる地域工務店への支援によって新しいビジネスモデルが生まれる。リフォーム、リニューアルは堅調に推移し、非住宅は改修期を迎えているものが多く、市場は拡大する。

Ⅱ 物流に関しては、必要な時に届けてもらえなくなってきている。運んでもらえないことも発生しており、深刻な問題。サプライチェーンはこれからの課題で、資材を運ぶことが住宅建設工程の計画の一部であるという考え方に転換しないと物流問題は解決しない。

 パナソニックグループは2050年までに現在の世界のCO2総排出量の「約1%(3億トン)」の削減を目指しており、「Panasonic GREEN IMPACT」と称する3つ取り組みを行っている。一つは、自社工場など28の拠点でCO2排出量をゼロにする「OWN IMPACT」で、これはすでに達成済み。二つ目は、既存の水素、省エネ、再エネ技術、廃材利用などの「CONTRIBUTION IMPACT」、3つ目は新しい技術で進める「FUTURE IMPACT」。着実に進めていく。

2024年問題は織り込み済み 工期延長にはならない

建設 熊野聡氏(長谷工コーポレーション取締役専務執行役員)

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熊野氏

 東京のマンション価格が1億円を突破したなどとショッキングな報道がなされたが、これは一部を切り取った情報。都心部で高級マンションが供給されたためで、23区の平均価格は8,424万円と前年比で30%上昇した。それ以外の平均は5,300万円で、そんなに大幅に上昇したという印象は持っていない。近畿圏の市場はほぼ横ばい。超高級マンションは経営者など富裕層、スタートアップなどの需要が旺盛で、実需も伴っておりバブルではない。今年は金利先高観による買い急ぎはあるかもしれないが、底堅い市場に支えられ、それほどぶれないと予想している。

 2024年問題は工期に大きな影響はない。ゼネコンでは4週8休は取り込み済み。運送コスト上昇による価格上昇への影響はある。現場技術者の残業を減らすDX、IT、職人の働きやすい環境をつくる、ロス少なくするなど生産性を高める取り組みを進めていく。

Ⅲ 当社も木造推進委員会を設けて研究している。すでに23件の共用部分の木質化を行っており、賃貸マンションの上層階の木造化も行っている。分譲でも生かせないか考えている。

残業規制は労働者の人権 脱法行為はありえない

法律 秋野卓生氏(弁護士 匠総合法律事務所 代表社員)

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秋津氏

Ⅱ 最近は、人不足により残業時間制限720時間の上限を超えてしまうという相談が増えている。このような質問には、立法趣旨を説明する。月80時間以上残業すれば過労死する危険性があり、残業規制は労働者の人権を守ることで、法律を守らないということはありえないと。一方で、労基法は1日8時間、100%の力で働くことを経営者は労働者の要請していい法律。これを実践しているか、残業代が生活費の一部になっていないか、これをチェックする必要があると提案している。

 DXで働き方改革が実現できるのであれば、建設業法、労働安全衛生法などの法律を改正すべき。デジタル臨調でもそのような論議がなされた。2027年度の全国展開を目指す国土交通省のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)確認申請にも注目している。現場三次元の取り組みも加速させる必要がある。

長距離輸送に理解を 再配達は有料に

物流 馬渡雅敏氏(全日本トラック協会副会長)

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馬渡氏

 残業制限は建設業などは720時間となっているが、トラック業界は960時間。われわれの業界の長距離輸送は3~4割占める。法令を守れないから撤退する、あるいは長距離を受けないというところも出てきている。また、厚労省の法律も今年4月からより厳しくなる。住宅関連では、持ち帰り、転送などが多々ある。再配達でも1回分の配達料金しかいただけない。再配達は有料にするなど改善しないといけない。国土交通省の商習慣の見直しのガイドラインでもそのような方向性が示されるはずだ。

 国内のCO2排出量の2割が運輸部門。その中でわれわれのみどりナンバーの営業用はその2割、全体の4%がトラック業界。2030年までに2005年比で3割削減を目標に掲げているが、大型トラックはEVもハイブリッドもわが国では開発されていない。再配達とか物理的な無駄をなくしていくほかない。軽くて頑丈な国産材のパレットを開発していただきたい。プラパレばっかり。

用材自給率80%へ 熱を逃がす窓、ドアの木造化急げ

木材 鈴木信哉氏(ノースジャパン素材流通協同組合理事長)

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鈴木氏

 いま木材自給率は50%を超えつつある。今後は山の中から丸太をどのように下すのが最大のポイントとなるが、林道の整備が進んでいない。おろすまで3時間も4時間もかかる。林道整備とともに、中間ストックヤードを設けることも必要。納入するのに20台、30台も並ばなければならないようなことをなくさないと、残業時間を減らすことができない。受け入れ時間を長くし、かつての日本通運のような大型の事業体が出現することに期待したい。川下、川中、川上が連携して安定的な発注システムを構築しなければならない。

 10年後の用材自給率は80%まで伸びるのではないか。問題は梁桁。レッドウッド、ベイマツの集成材からどうやって奪い取るか。国産集成材に頑張ってもらう必要がある。木造のきれいな公共建築物を見ると、唯一木が見えないのがサッシとかドアの開口部。アルミと木材の熱伝導率は3600倍違う。寒いところで熱を逃すために造っているようなもの。これは10年間で木に変えないといけない。バス、トイレ、キッチンにどうやって木を使っていくか。クオーター契約の導入も必要。

「超競争時代リーダーは人間らしくあれ」元ソニー社長・平井一夫氏ナイス講演会(2024/1/23)

 

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