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2024/03/05(火) 23:11

天晴れ 大和ハウス・芳井社長&大東建託・竹内社長の即断即決 賃貸に関する災害協定

投稿者:  牧田司

締結式の様子.jpg
竹内氏(左)と芳井氏

 大和ハウス工業と大東建託は3月5日、両社グループが管理する賃貸住宅約189万戸の平時・有事の協業・情報共有を推進し、地域の防災力向上と入居者の安心・安全の暮らしを提供する「災害における連携及び支援協定」を締結したと発表した。

 協定の対象となるのは、大和リビングか管理する約65万戸、大東建託パートナーズが管理する約124万戸、合計189万戸で、平時では全国の賃貸住宅入居者のほか、オーナー、地域住民を対象としてAEDの講習や水災・火災のVR体験、消火訓練などの防災イベントを共同開催するなど、有事を想定した情報連携により、地域防災力の強化を図る。

 震度6弱以上の地震の発生もしくは警戒レベル5「特別警報」が発令される有事の際には、両社グループで協議のうえ、共同対策本部を設置。被災地域の状況調査結果や空室情報、被災者支援策を共有することで、被害状況を把握し早期の災害復興に役立てるとともに、被災地域の賃貸住宅入居者の仮住まいを融通し合あう。

 あわせて、大和ハウスグループのロイヤルホームセンターとも連携を図り、災害用備蓄品や復旧用資機材を必要に応じて供給し、大和ハウス工業の全国9か所の工場に移動式貯水タンクを設置し、有事の際、被災地域の賃貸住宅入居者に生活用水を配給する。

 会見に臨んだ大和ハウス工業代表取締役社長・芳井敬一氏は協定締結の経緯について、「2018年の岡山水害の現場を見て、当社が施行した建物は何ともないのに隣は大きな被害を受けていたりその逆もあったりした。同じ被害であるのに、このような差が出るのか、1日も速く賃貸住宅の平和をとりもどせないかずっと考えてきた。そんな折、昨年、三井住友海上さんから大東建託さんの取り組みを紹介された。大東建託さんとはお会いしたいと考えていたので、竹内(社長)さんにお会いし、非常に素晴らしい、ぜひ進めましょうと即決していただいたのがスタート。(管理戸数)業界トップの大東建託さんと組むことは世の中に大きなインパクトを与える。いかに被災者の方々の笑顔を取り戻すかが協定締結の主旨。このような輪を広めていただきたい。トップ同士の決断が大事だということも分かった」などと話した。

 大東建託代表取締役社長執行役員・竹内啓氏は、「当社グループはこれまで個社で平時の防災イベント・訓練を実施してきており、有事には被災地の状況調査、そしてオーナー、入居者様の支援策に取り組んできた。(昨年には)『大東建託グループ防災ビジョン2030』を策定した。ビジョンは『地域の“もしも”に寄り添う』という理念のもと、地域防災を平時と有事の両輪で支援し、当社グループ全体で災害時の地域の早期復興に寄与していくことを目指すもの。今回の連携によって、安心・安全により効果的な活動ができると考えている。両者の基盤をいかし、密に連携し迅速な対応を行っていく。地域全体の防災力の向上、地域住民の命と財産を守ることに少しでも貢献できればと考えている」と語った。

◇        ◆     ◇

 両社から共同会見の案内を受け取ったときは、双方は敵ではないにしろ、オーナーを奪い合う競合関係にあるはずで、協定締結の意図は何なのかよく分からなかった。

 しかし、この日(5日)、芳井氏と竹内氏の話を聞いて、疑問は氷解した。考えてみれば、公助はあてにできないことをみんな知っている。ましてや防災・防犯は個社の力でできるものではない。日ごろから地域全体の防災・防犯の取り組みを行っていくことが大事なことも分かっている。問題はだれがやるかだ。

 それを両社は決断した。両社グループが管理する賃貸住宅は、全国の賃貸住宅約1,500万戸の12~13%にしか過ぎないと考えることもできるが、大変な数字だ。いかにこの種の取り組みが困難であるかの例を示す。。

 マンションの管理計画が一定の基準を満たしていれば地方公共団体が認定する管理計画認定制度が令和4年度からスタートした。令和5年12月末時点で認定実績は378件(国土交通省が把握しているもの)しかない。全国のマンションストック約694万戸(2022年末時点)に対する戸数割合は示されていないが、0.3%程度と思われる。制度は遅々として進んでいない。

 これとは別に、マンション管理状況を★5つで評価するマンション管理業協会のマンション適正管理評価制度がある。2023年12月末現在、登録件数は2,624件となっている。同協会は令和6年度末までに1万件の登録を目指している。

この1万件がどのような数字かについて、同協会副理事長・小佐野台氏(日本ハウズイング代表取締役社長CEO)は2023年6月の総会後の懇親会で「一言だけ皆さんにお願いしたい。2年後のマンション適正管理評価件数を1万戸にするには、会員354社の管理件数の1割で達成できます。ちょうど1割、たった1割で達成できます」と呼び掛けた。これまた容易な数字ではない。

 賃貸住宅は両社が管理しているから可能なのだろうが、芳井氏も話したようにトップダウンで即決即断したのが決め手ではないか。仕掛け人の芳井社長は元ラガーマンだが、最前線の押し合いへし合いのFWではなかった。確かBKで司令塔的な役割を果たしていたはずだ。今回の協定も賃貸市場を冷静に俯瞰し決断したはずだ。ラグビーは試合が終わればノーサイド。お互いが健闘を称えあう-そのようなスポーツマンシップが生かされたと記者は理解した。ボトムアップだったら途中で頓挫していた可能性が高い。両社長の決断に天晴れ!座布団5枚!

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 会見で、大東建託は全国58拠点で18の自治体と防災協定を締結していることを知った。災害時に飲食料、防寒具などの災害支援物資の提供、帰宅困難者の一時的な受け入れ、災害時にガス・電力・水などのインフラの提供などだ。

 マンションを避難ビルに指定したり、施設を帰宅困難者に提供したりする事例は聞いているが、これほど多くの拠点で自治体と協定を結んでいる企業は他にあるのか。

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生活用水用の1000リットル入り貯水タンクを前に、左から大東建託取締役常務執行役員・守義浩氏、竹内氏、芳井氏、大和ハウス工業取締役常務執行役員 集合住宅事業本部長・出倉和人氏(大東建託は能登半島地震でも二缶セットで10回現地に運んだという)

 

 

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