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同潤会のコミュニティ引き継ぐ旭化成ホームズ
「アトラス江戸川アパートメント」(7月5日)

 旭化成ホームズが近く分譲を開始するマンション「アトラス江戸川アパートメント」を見学した。飯田橋駅から徒歩8分の 11階建て全 232戸の規模。物件名に「江戸川アパートメント」とついているように「同潤会江戸川アパートメント」の建て替えマンションで、同社が積極的に取り組んでいる市街地再開発や建て替え事業の一つでもある。

  「同潤会アパート」は、大正末期から昭和初期にかけて建設された住宅困窮者のための鉄筋コンクリート造の集合住宅で、16 カ所建設された。「同潤会江戸川アパートメント」はその集大成として昭和9年に建設されたもの。当時としては珍しいエレベータやセントラルヒーティングなどを装備。西洋式庭園や社交室、浴室なども備わっていたことから、「東洋一のアパート」といわれた。坪内逍遥の孫で女優の坪内ミキ子さんが住んでいたことでも知られている。

 どなただったかは忘れたが、「マンションは北側の表情が大事」と仰ったのを覚えている。このマンションはまさにそうだ。素晴らしいマンションになると確信した。美しいだけではない。心が込められたマンションだ。

 建て替えられる建物は、敷地を囲むように配置された6棟構成で、水平方向に雁行させ、かつ縦方向にも変化をつけるなど、全体的に通風・開口に配慮するとともに、デザイン性や住戸の独立性を保っているのが特徴だ。南棟とアネックス棟をつなぐ7階部分は共用廊下と屋上庭園、ブリッジなどで結んでいるが、総延長約 200 メートルにも及ぶ長さだ。南棟の7階以上の住戸からは庭園が眺められる。既存樹のイチョウ、シイの木なども残した。

 建物の外壁タイルには、縄文模様をつけたオリジナルタイルを採用。このほかエントランス、社交室など共用部分を中心に大谷石、御影石、カリン板目、寄木フローリングなど自然素材もふんだんに採用。同潤会江戸川アパートに用いられていたステンドグラス、階段手すり、家具なども当時のものを移設したり再現したりしている。

 多彩なプランも特徴だ。 33タイプ全タイプとも細部に到るまで様々な工夫がなされている。例えばアネックス棟の約 62平方メートルの3面開口住戸では、キッチン、浴室を含め9カ所もの採光・開口部が設けた。約8.1メートルスパンで、廊下スペースを無くすなど機能的で居住性にも優れている。55平方メートルのタイプでは、北側に面したリビング・ダイニングは床からガラスブロックを立ち上げて採光に配慮しているほか、スキップフロアとし天井高を3.2メートル確保。段差を生かした引出し収納やキッチン上部天井収納を設け、立体的な空間を演出している。床面から22センチ床上げした和室プラン、3層トリプレットプランなどもある。設備・仕様もグレード感がある。床材は幅広のカリン材を仕様、建具・面材も突き板仕様だ。

 坪単価は約 250 万円。建物の質を考慮すると割安感もある。価格が2000万円台から1憶円台になることから、様々な階層の入居が想定される。同じ同潤会の建て替えマンション「代官山アドレス」とはまた違った記念碑的なマンションになるのは間違いない。

 「建物は変っても、素晴らしいコミュニケーションは継承していく」という同社集合住宅営業本部・関根定利都市開発部長らのプロジェクトチームの人間ドラマは機会を改めて紹介したい。

(牧田 司記者 7月5日)