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2023/04/24(月) 14:35

樹木医の果たす役割は何か (一財)日本緑化センターの回答

投稿者:  牧田司

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「健全木」が「枯損木」として伐採された千代田区神田警察通りのイチョウ

 わが敬愛してやまない樹木医が街路樹を「健全木」と診断したにもかかわらず、東京都千代田区は「枯損木」として議会に報告し、伐採することを決めた。それは、生き物である街路樹を道路の附属物としてモノ扱いする無神経な行為であり、樹木医の尊厳を貶めるものだ。なぜそのようなことがまかり通るのか、ずっと疑問に思っており、澱のように心の奥深くに沈殿している。

 その疑問を解くべく、樹木医制度を管轄する(一財)日本緑化センターに問い合わせたところ、同センター事務局から回答があった。質問と回答を以下に紹介する。

◇        ◆     ◇

 【問1】自治体の財産である街路樹などの樹木を診断するのは、どのような法律的根拠があるのか。処分する場合は、必ず診断を受けなければならないのか

 【回答】法的根拠はございません。自治体において、街路樹や公園樹木を伐採する際に「専門家による診断を実施し、その結果を見て判断する」というルールを定め、それに基づいて行っているかどうかということです。とはいえ近年は、樹木を自治体の判断のみで伐採を計画すると、地域住民から要望や苦情等を受けるケースが多いため、特に重要な樹木の場合は、専門家(樹木医)の判断を仰ぐケースが多いようです。

 【問2】診断費用はいくらくらいか。目安をお聞きしたいと思います

 【回答】樹木医報酬につきましては、「独占禁止法」に抵触するため一律に定められておらず、一概にはお答えできません。聞き取りや現場の実態を見ますと、国土交通省の定める設計業務委託等技術者単価(設計単価)を参考にしている方もいるようです。しかしながら、この金額も業務発注の方法(随意契約、一般競争入札)により、必ずしも一律ではありません。

 また、当然のことですが、診断のメニューによっても大きく変動します。目視による診断だけなのか、樹木周辺の土壌条件も調べるのか、あるいは樹体内部の状況を特殊な機器で測定するのかなどにより、1本当たりの単価は大きく変動します。

 【問3】樹木医が故意で誤った診断を行った場合、どうなるか

 【回答】これは、当然あってはならないことです。例えば、発注者の意向を受けて、故意に実態と異なる診断書を作成したという明白な事実があれば、認定団体である当センターとしても免許剥奪等の措置を検討することとなります。

 これまで当センターの実施する樹木医研修では、科学的試験と分析・評価に基づき、その結果を正しく施主へ伝えることが真の技術者であり、自らの意思に反した判定、判断を行うべきでないことを強く指導しています。

 なお、これまでのところ、幸いにしてそのような事例の報告は受けておりません。

 【問4】樹木医が「健全」と診断した樹木を、自治体が「枯損木」として処分した場合(その逆に「枯損木」として診断された樹木を自治体が対応しなかった場合)、樹木医は異議を唱えることはできるのかどうか

 【回答】基本的に、樹木医が診断業務を受け、その後の結果(自治体の対応)までを継続して確認するケースはほとんどないのが実態ではないかと思われます。理由としては、樹木医の診断結果はあくまでも当該樹木について権限を有する自治体側が判断するための参考資料であり、そこに法的強制力はないからです。つまり、診断結果をみて、その後どのような対応をするかは、あくまでも自治体の判断に委ねられます。

以上のことから、樹木医が診断後に自治体の対応を確認し、異議を申し立てるといったケースはほとんどないか、極めて稀だと思われます。

 【問4-イ】異議を唱えるとすればどのような手段を取られるのか

 【回答】診断を発注した部署あるいは担当者に対し、「なぜそのような対応をしたのか」、「診断結果とは違う対応となっていないか」、その説明を求めることは可能であると思います。

 【問4-ロ】異議が唱えられないとすれば、診断制度は有名無実化されると考えるがいかがか

 【回答】多くの自治体が樹木医の診断結果に基づき適切な判断を行っていることは、全国の新聞やニュースで樹木医の活動が盛んに取り上げられていることからも確かであり、樹木の専門家が各地で樹木の診断を行うことで、適切かつ安全に維持されている樹木や街路樹は格段に増えていると考えています。

 一方で、樹木医の質や技術者としての倫理を高めていくことは、今後とも引き続き認定団体として十分に力を入れていく考えです。

 【問5】当初は、樹木医を国家資格にしようという考えがあったとお聞きしていますが、どうしてそうならなかったのか。今後、国家資格に格上げしようという動きはないのか

 【回答】当センターとして、資格に国家資格も民間資格も差はないと考えております。樹木医制度の創設は1991年、全国各地にある巨樹・名木・古木林等の樹勢回復・保全に関する人材の育成と技術の開発・普及を図り、ふるさとや自然を愛する機運を高め、緑化の推進に資することを目的として、林野庁の補助事業である「ふるさとの樹保全対策事業」として、当初より民間資格として発足したものです。

 従って、資格制度の発足当初から樹木医は国家資格ではありませんが、国(林野庁)の全面的なバックアップを受けて創設された資格であること、受験資格や合格基準が厳しく定められていること、関係各所からの評価や知名度及び信用度の高さなどから、国家資格への格上げは考えておりません。

◇        ◆     ◇

 皆さんは樹木医をご存じか。(一財)日本緑化センターが平成3年度から実施している「樹木の調査・研究、診断・治療、公園緑地の計画・設計・設計監理などを通して、樹木の保護・育成・管理や、落枝や倒木等による人的・物損被害の抑制、後継樹の育成、樹木に関する知識の普及・指導などを行う専門家」(同センターホームページ)のことだ。令和4年12月現在、認定者総数は3,173名で、単純計算すれば毎年100人強が認定されていることになる。同センターのホームページによると、平成22年度は第2次審査に応募した461名に対して、合格者は116名(合格率25.2%)となっている。

 認定を受けるための受験資格は、実務経験(業務経歴)5年以上で、第1次審査の業績審査と筆記試験(択一式試験&論述式試験)、第2次審査の樹木医研修として講義の動画配信(2週間程度)&6日間の実習及び資格審査(科目試験・樹種の識別に関する適性試験・面接試験)に合格した人が樹木医として認定・登録される。

 試験の難易度はよく分からないが、合格するには、日本緑化センターが発刊している必須テキスト「最新・樹木医の手引き(改訂4版)」(B5判700ページ、定価:9,350円)を読みこなさないといけないうえ、幅広い知識が要求され、文章をまとめる能力も試されるので、かなりハードルは高そうだ。

 わが国には樹木の種類は1,000くらいあるそうだ。樹木医の皆さんは一見して樹種と樹齢、健康状態を判断することができるのだろうか。人間技とは思えない。

これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)

 

 

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