東京都千代田区が進めている「神田警察通り」の街路樹であるイチョウ並木の伐採工事の是非を問う住民訴訟の第2回口頭弁論が1月17日、東京地裁であり、大きな争点となっている「枯損木」の判断について、区側弁護士は「『枯損木』として処分を決定したのは、慣例となっている東京都積算基準(道路編)の施工単価表に基づき、施工単価名称(枯損木伐採工)を引用したもの」と従来からの主張を繰り返した。次回の審理は3月16日に行われる予定。
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記者は開廷時間に間に合わず傍聴できなかった。上段は住民側代理人弁護士・大城聡氏の説明によるものだ。区は、健全なイチョウ並木を「枯損木」として「神田警察通り沿道整備推進協議会」に説明し、工事契約書にも「枯損木」と記載したのは「慣例」によるものであって、違法ではないと主張したようだ。
「慣例」とは、古くからしきたりとして行われてきたことを指し、「社会規範」の一つとして適法であるとされている。
本当にそうなのか。記者は、健全な街路樹を「枯損木」として殺処分することはあるのかについて東京都とつくば市の担当者に聞いたことがあるが、双方とも否定した。
どちらかが嘘を言っていることになる。調べればすぐわかることだ。区側が嘘をついていることになれば、慣例ではなく異例であるから、これは完全に住民側が勝訴する。
仮に、都側が嘘をついていることになれば、樹木診断制度は根底から崩れる。樹木医は国家資格ではないが、それに準じるものとして自治体が街路樹の再生・伐採の際などに診断を仰ぐのが通例となっている。その結果いかんにかかわらず、伐採を決行する単なる手続き、口実として利用されているとなれば、樹木医を管轄する日本緑化センターはもちろん、全国の樹木医2,910名(令和3年12月1日現在)を愚弄するものだし、公費の浪費だ。住民側に理がある。
もう一つ、住民の監査請求に対して監査結果で、工事契約書に「枯損木」と記載したことを区側は認めながら、「同じ契約書に添付された図面には『枯損木』とではなく『高木』と記載されており、本件街路樹が『枯損木』ではないという点については、本件工事契約の発注者である区と請負者である大林道路とが共通認識に立っていたものであって、本件工事契約に錯誤による瑕疵があったとはいえない」と住民側の主張を退けたことについて。
皆さんも、監査結果は変だと思わないか。「高木」とは「低木」「中木」と同じように街路樹が大きいか小さいかを示す文言であるにすぎない。人間にあてはめたら背が高いか低いかだけで、健康なのか不健康なのか判断できないように、その街路樹が健全なのか枯損木なのか分からないではないか。「本件街路樹が『枯損木』ではない」と監査委員が断定した根拠は全くない。区側の主張を忖度した結果としか考えられない。
小生は街路樹の味方で、住民側にも区側にも与しないが、これほど区側に不利な〝事実〟が明らかになると…結審も見えてくる。
健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)