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2023/09/02(土) 06:49

スムストック建物価格 築20年以上で602万円 7年間で15%上昇/捕捉率は17%

投稿者:  牧田司

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スムストック表彰式・懇親会(アルカディア市ヶ谷で) 

 優良ストック住宅推進協議会(会長:堀内容介・積水ハウス代表取締役副会長執行役員)は8月31日、総会後の記者会見を開き、参加するハウスメーカー10社の共通基準を満たす「Sum Stock(スムストック)」活動状況を報告し、今後の方針などを示した。

 2022年度(2022年7月~2023年6月)のスムストックの成約数は、2020年度の1,922棟に次ぐ過去2番目に多い1,880棟となった。協議会10社の戸建てストック約396万戸のうち推定流通数は約11,200棟/年で、流通率は約0.3%、スムストックで成約した捕捉率は前年度より1ポイントアップの約17%。2008年からの累計成約数は17,637棟となった。

 スムストック住宅販売士(以下、販売士)は年々増加しており、累計では7,898名(うち約1,400名が現仲介スタッフ)となった。

 2021年~2023年の中期計画の進捗状況は、You Tube動画配信、ディスプレイ(バナー)広告、リスティング(検索)広告などの認知度向上策が効果を上げ、HPアクセス数、査定依頼数、資料請求数などは前年比大幅増となった。

 買取再販型商品は309件で、2021年度の248件から25%増加した。「安心R住宅」の一戸建て標章仕様は、リフォーム済みが114件(全体1,629件の31.1%)、リフォーム提案が126件(全体140件の94.0%)の合計240件(全体1,769件の48.0%)。

 2023年度の重点取り組みとしては、Web広告を中心に据え、より効果の高い媒体・手法へ適宜切り替え、スムストックの査定項目にZEH、V2H、熱交換換気システムを追加し運用促進などを図る。

 堀内会長は、「令和4年度の住宅着工、とくに持家は前年度比で減少し、既存戸建て住宅流通量も減少するなど非常に厳しい状況が続いているが、スムストック成約棟は微増ではあるが、過去2番目の実績を上げた。これまでやってきたことは間違いではなく、期待されていることが分かった。とはいえ、捕捉率は目標としている20%に未達で、中計の最終年度である今年度に達成したい。今年度はスムストック新査定式の運用を開始して、安心・安全のさらなるレベルアップを目指す」などと語った。

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堀内会長

◇        ◆     ◇

 記者会見では、記者団からいつも話題に上がる「捕捉率」について鋭い質問が飛んだ。「捕捉率は16~17%台で推移している。2023年度末に20%に引き上げるのは無理ではないか」という質問だ。

 これに対して、堀内会長は「会員の中には30%を超えているところもある。買取再販を増やせば目標は達成できる」と答えた。

 なるほど。捕捉率を20%に引き上げるには前年度から約300棟増やす必要がある。これを買取再販で増やすとすれば1社平均30棟だ。1棟5,000万円で15億円。十分達成は可能だろう。(現在、スムストックは800~900件が協議会ホームページに掲載されており、もっとも多いのは積水ハウス308件で、以下セキスイハイム252件、旭化成ホームズ92件、ミサワホーム78件、大和ハウス工業69件、三井ホーム50件、住友林業37件…となっている)

 記者は、スムストック会員経営者の考えはよく分かる。圧倒的に優れた住宅を建設・供給しながら、既存住宅市場では他の流通会社の〝草刈り場〟になっている現状は我慢ならないはずだ。

 だが、しかし、消費者の立場からすれば、どこが仲介するかは大した問題ではない。売る側とすれば〝高く査定してもらい、高く売ってくれる〟ことを優先するだろうし、買う側は〝いいものをなるべく安く買いたい〟と考える。仲介会社はいわゆる両手仲介を最優先に考える。情報の非対称の問題が横たわっている。

 捕捉率を上げるには、情報発信力を強化する以外にないと考えている。スムストックの物件検索Webはよくできていると思う。土地と建物の価格が明記されており、地方には土地が100坪以上のデザイン性に優れた物件がたくさん掲載されている。これを物件情報サイトなどでも検索できるようにすべきだ。

 そうすれば、「スムストックの強み」をアピールすることができる。この日(8月31日)に配布された資料には、平均的なスムストックは築18.5年で、延べ床面積は128.59㎡、建物価格は1,125万円(新築時価格の約45%)で、築21年以降の建物平均価格は602万円とあった。2015年度の建物価格は522万円だった。7年間で15.3%、80万円も上昇している。建物が古くなっても価値は下がるどころか上昇していることに、記者だけでなく消費者は驚愕するはずだ。

 これはどうしてか。記者は、長期優良やCASBEEなどの性能が高い住宅がスムストックには多いからだと推測している。土地価格はそのときどきの市場に左右されるが、敷地が広く、緑が豊かであれば、土地価格は市場に左右されにくいと考えている。また、スムストックのように性能の高い建物は経年劣化のスピードは一般的な住宅より緩やかで、さらにまた、維持・管理もしっかり行われるから下落しないのだろうと思う。それにしても、7年間に80万円も上昇しているのはどうしてか。誰かこの謎を解き明かしてほしい。

◇      ◆     ◇

 この疑問に、同協議会事務局が懇切丁寧に答えてくれた。新築建物の坪単価の上昇が一番の要因で、①標準仕様設備の進化 太陽光発電設備、エネファーム、燃料電池等の環境設備、外壁等のグレードアップ(高耐久塗装、光触媒、親水等)、熱交換型換気システムの導入等②原材料価格の高騰③内装材、設備仕様の進化等々が挙げられるという。メーカーへの聞き取り調査だが、新築住宅の坪単価は7年間で約20万円、平均坪数を40坪前後とすると約800万円建築費がアップしていることになる。

 既存住宅であるため、取引でその上昇分が100%反映はされないが、そのうち約10%が既存住宅取引の際に価格上昇分として反映されているという計算になる。

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 「安心R住宅」について一言。とてもいい制度だと思う。インスペクションの結果を記した調査報告書には、耐震性など「安心」、リフォーム工事に関する「きれい」、その他の住宅性能、長期優良住宅、低炭素建築物、CASBEE評価、BELS認証建物の定期検査・維持・管理に関する事項など「わかりやすい」詳細な情報が盛り込まれている。チェック項目は全体で少なくとも50項目以上あるはずだ。

 しかし、国土交通省は毎年、「安心R住宅」を含めた住宅ストック維持・向上促進事業費として国費を6~8億円注ぎ込みながら、制度の実施状況として市場に流通している件数のみしか公表していない。詳細なチェックを課し〝安心〟のお墨付き与えるだけというのはあんまりだ。売る側も買う側も、知りたいのはどのような物件が登録されており、近傍同種と比べ適正に評価されているかどうかだ。詳細な物件の属性を公表すべきだ。

◇        ◆     ◇

 記者会見後には、同協議会の表彰式・懇親会が行われ、いきなり販売士の優秀者表彰が始まった。13人が表彰された(うち半数以上はセキスイハイム不動産)。記者は以前、ある会社の販売士と話し合ったことがある。宅建士には失礼だが、レベルはその比ではなかった。建物の構造、基本性能などに精通しており、国家資格を6つも7つも持っていた。

 そこで、販売士に突撃取材した。トップは仲介担当歴4年で、前期は24件を成約したパナソニックホームズ不動産の東日本住宅流通センター関東チーム チームリーダー・織田星児氏(39)だ。

 織田氏は「わたしは変わり者。珍しがられている。住宅と家電の〝パナソニック〟は日本を代表するブランド。新築と同じレベルの商品説明を行う。その結果、売主からも買主からも〝安心だね〟と言っていただけている」などと語った。

 2位表彰のセキスイハイム不動産 近畿支店阪奈営業所流通営業店店長・小田聡氏(52)は、「表彰制度は成約件数だけでなく、安心R住宅などプラスアルファ―も対象となっている。新築は20年、仲介は8年」だそうだ。

 5位の積水ハウス不動産九州仲介業務課・藤井重徳氏は、「以前、リフォーム現場をみたとき、見せかけだけ変えるだけで建物の価値が生かされておらず、これじゃいかんと考えを改めた。打ち合わせの段階から提案するように切り替えたのが成功し、毎年100件の成約目標をクリアできるようになってきた」と語った。

 嬉しかったのは、6位のセキスイハイム不動産営業統括部中部支店流通営業所所長・小倉弘司氏から声を掛けられたことだ。初めてお会いする方だと思ったが、「10数年くらい前、RBA野球大会のハイム不動産の選手として出場しており、RBAタイムズにも掲載されました」とのことだ。

 すっかり失念していた。検索したら真っ先にヒットした。記事を添付するので読んでいただきたい。当時は年間100棟を販売していた。スムストックは年間30~40件成約するそうだ。

 もっと取材しようと思ったら、会はお開きとなった。飲んだのはビール1杯とワイン1杯だけだった。協議会にお願いだ。来年からは販売士と懇談する場を設けていただきたい。なにごとも現場だ。現場にすべてのヒントがある。販売士の方々は本質的なことを話されたはずだ。

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左から織田氏、小田氏、藤井氏

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左から藤井氏、小田氏、積水ハウス不動産関西福知山営業所・福井駿氏、小倉氏、セキスイハイム不動産近畿支店京阪営業所流通営業店店長・野口大樹氏

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