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2022/09/01(木) 15:25

スムストック 仲介捕捉率は16% 伸びないのはなぜか/顧客対応の改善も必要

投稿者:  牧田司

 一般社団法人優良ストック住宅推進協議会(スムストック)は8月31日、総会後の記者会見を行い、2021年度の会員10社の成約件数は前年度比3.3%減の1,858棟で、累計成約数は15,757棟に達し、スムストック住宅販売士は累計7,460名と着実に増加したことなどを報告。

 会員10社の戸建てストックのうち市場に流通した11,700棟のうちスムストックが仲介した物件数は1,858棟で、捕捉率は16%(前年は17%)であることから、引き続き「20%以上」を目指すと発表した。

 このほか、スムストックの2021年度の買取再販成約件数は248件で、前年度の154件から大幅に増加している。安心R住宅の一戸建てリフォーム提案148件のうち95.3%がスムストックになっている。

 堀内容介会長(積水ハウス代表取締役 副会長執行役員)は、住宅生産団体連合会が先に国土交通省に要望した来年度税制改正に触れ、「買取再販住宅に新築住宅と同等の税制を適用するとか、ZEHリフォームを補助対象に追加することなどが実現することに期待している。捕捉率を伸ばすためにはWebの改善も必要」などと語った。

◇      ◆     ◇

 この日の記者会見では、捕捉率に関するメディアの質問が相次いだ。スムストックの会員は旭化成ホームズ、住友林業、積水化学工業、積水ハウス、大和ハウス工業、トヨタホーム、パナソニックホームズ、ミサワホーム、三井ホーム、ヤマダホームの10社だ。

 わが国を代表するハスウメーカーばかりなのに、捕捉率が伸びないのにハウスメーカー担当記者の方もいらだちを覚えているからかもしれない。小生もスムストック応援団の一人ではあるが、現状のままでは捕捉率をアップさせるのは至難の業だと思う。〝勝てない争い〟はやらないほうがいいとすら考えている。

 スムストックの取り組み自体は素晴らしい。査定価格を土地価格と建物価格に分けて提示するのは画期的なことだ。しかし、購入検討のユーザーの立場からすれば、新築も中古も住宅選好で重視するのは基本的には価格、環境、交通便の3Kであるのは今も昔も変わらない。住宅の建て方・構法はそれほど重要ではないし、売主・仲介会社がどこであるかも選好の決定的な要因にはならない。

 スムストックが必要なのは、査定の3つの原則である①住宅履歴データベースの保有②50年以上のメンテナンスプログラム③新耐震基準レベルの耐震性の保持と、(イ)スムストック住宅販売士が査定から販売まで行う(ロ)スムストック査定方式で査定する(ハ)建物価格と土地価格を分けて表示する-という3つの手法が売る側も買う側も納得できる適正な価格であることを分かりやすくWebなどで伝えることだ。売主にしたら「予想以上に高く査定された」であり、買う側には「価格は高いが、買いあがる価値がある」と決断させることだ。

 この観点からみると、スムストックの物件検索サイトは大手デベロッパー系のそれと比べ検索項目の多さ、情報の量・質とも圧倒的に見劣りすると言わざるを得ない。一つひとつ紹介はしないが、例えば仲介担当者。大手は顔写真付きでプロフィールを公開しているところが多い。スムストックはほとんど定型の問い合わせ先のみだ。

 これでは勝てるわけがないではないか。大手系と同じレベルに引き上げるのは容易ではない。リソースがケタ違いだ。取扱高、店舗数トップの三井不動産リアルティの2022年3月期の全国売買仲介取扱件数は41,183件で、店舗数は291店舗だ。スムストック10社の成約数1,858件の22倍だ。店舗数は10社が束になっても、仲介3位の東急リバブルの205店舗にも勝てないはずだ。これらを考慮すると、捕捉率16%というのはよく健闘しているとも受け取れる。

 同協議会も説明したように、オーナー向けに訴求を強化し、専属専任契約を結ぶことは可能ではないか。査定を行うスムストック住宅販売士は建築の専門的知見も有しているはずで、これは大きな武器になる。スムストックの成約価格は、近傍の同程度の物件と比較してはるかに高いことなども実証できるのではないか。

 この点に少し関連することだが、公益財団法人不動産流通センターには「宅建マイスター」「宅建マイスター・フェロー」「不動産コンサルティングマスター」認定・登録制度があり、現在、「宅建マイスター」は671名、「宅建マイスター・フェロー」は17名、「不動産コンサルティングマスター」は15,466名が登録されている。登録者は不動産総合情報サイト「不動産ジャパン」で検索することができ、様々な相談が受けられる。スムストック住宅販売士も同様に、その人材を生かす仕組みを構築できるはずだ。

 門戸を開放し、スムストック会員を増やすのも手ではないか。民間の顧客満足度調査ランキングでいつもトップになっている、プレ協の賛助会員でもあるスウェーデンハウスはどうして入っていないのか。

 このほか、分譲と注文双方を手掛ける一条工務店、ポラス、細田工務店、ナイスなども良質な住宅を供給しているし、全館空調システムの先駆けである三菱地所ホームや、デベロッパーの分譲施工実績が豊富な西武建設、エステーホーム、津田産業などもある。これらの会社も会員に加えてはどうか。

 そして、もう一つ、捕捉率とは直接関係はないが、顧客対応についても指摘したい。一般の売買仲介会社の営業担当者は、施工がどこであろうと分譲会社がどこであろうと全然関係ない。親会社A社が分譲した中古マンションを買おうとしている顧客に、「お客さん、近くにあるB社分譲した物件のほうがいいですよ」と平気でいう。また、市場価格よりかなり安い新築物件を勧めるときなどは「この物件の安いのは質が低いからです。中古並みと考えてください」などと説明する。

 スムストックはどうだろう。大和ハウス工業のグループの日本住宅流通などを除き、自社が施工、あるいは分譲した戸建ての売買仲介を行っているはずだ。〝お客さん、当社が施工したA物件より、競合が施工したB物件のほうがいいですよ〟などとは口が裂けても言えないはずだ。

 親会社から何のプレッシャーも感じない大手系仲介会社と、親会社からのプレッシャーを絶えず受けているスムストックの営業スタッフの差は計り知れない。捕捉率からの呪縛を解けばまた違った展開ができるのではないか。

 このことを質疑応答でも話したのだが、同協議会事務局統括管理部長・島津明良氏は、「会員間では垣根をなくす取り組みを開始した。近いうちに公表したい」と話した。どのようなものになるか注目したい。

スムストック2020年度は過去最高1922棟成約(捕捉率17%)(2021/8/28)

スムストック 市場での認知度・捕捉率が低いのはなぜ 劇的に上げる「武器」はあるか(2019/3/5)

スムストック・新会長に阿部俊則氏(積水ハウス会長) 「捕捉率20%に拡大したい」(2018/9/3)

「スムストックの認知度と販売士がカギ」 優良ストック住宅協議会・和田会長(2015/8/27)

 

 

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