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2023/09/30(土) 20:33

樹木保全見直し/ヘリテージ・アラートへの見解 神宮外苑まちづくり事業者

投稿者:  牧田司

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神宮外苑 絵画館前の軟式野球場 

  三井不動産、日本スポーツ振興センター、明治神宮、伊藤忠商事の4者は9月29日、同日付で東京都都市整備局長と環境局長宛てに「神宮外苑地区のまちづくりにおける樹木の保全について(要請)」報告したと発表した。

 東京都が要請していた①新ラグビー場敷地の既存樹木の伐採に着手する前までに、樹木の保全に関する具体的な見直し案を示すこと②その他の区域についても、施設の設計の工夫等による更なる樹木の保全策を検討すること-に答えるもので、見直し案がまとまり次第報告するとしている。

 また、令和5年9月7日に国際記念物遺跡会議(イコモス)が発出した「ヘリテージ・アラート」に対して、事業者と認識が異なる記述について見解を示した。以下、「ヘリテージ・アラート」と事業者の見解、記者の考えを紹介する。

◇        ◆     ◇

 「ヘリテージ・アラート」が、「神宮外苑が都市再開発によって全体で3,000本以上の樹木が破壊され、そのうち500本以上が樹齢100年以上、さらに500本が樹齢50年以上と推定される」としている点については、「これまでもプロジェクトサイトにて発信の通り、3.0m以上の高木の伐採樹木は合計743本となります」「2023年2月28日付で東京都風致地区条例に基づく伐採の許可を得ております。申請した伐採対象樹木は3,028本となりますが、その約9割は本数がカウントできない群生低木(ツツジ等)であり、面積から推計した数値となります」と回答している。

 記者もこの事業者の回答に納得する。ただ、「外苑の計画エリアにおいて一部の方々から『森』と称される場所は建国記念文庫の敷地のみであり、総面積約28.4haの本計画に対して約5,000㎡(約1.7%)、3.0m以上の既存樹木は149本です」との回答は不十分だと思う。

 「森(杜)」の定義は広辞苑によれば、①樹木が茂り立つ所②特に神社のある地の木立。神の降下してくるところ。「鎮守の―」とあるように、いかようにも解釈できる。神宮外苑を訪れた人ならみんな、全体を「森(杜)」だと感じるはずだ。「公園」=「森(杜)」でもない。記者もそうだが、反対する人たちは「神宮外苑の森」全体が破壊されると考えているはずだ。

 また、「『ヘリテージ・アラート』内で記載されている『建国記念文庫の森を隠す』意図は一切ございません」と回答しているが、工事が休みの日には仮囲いを開放し、どのような樹木が伐採されるのか、移植されるのか分かるようにすべきだ。「(建国記念文庫の)建設費は総て国民の浄財である。これは、現下の国民が等しく建国を思う情熱の結果であり、千年万年の子々孫々に伝え、以て後日の語り草にしたいのが、記念文庫設立の目的である」(新宿区の歴史)とあるではないか。

 絵画館前の軟式野球場もしかり。「ご利用者以外立ち入り禁止」の看板が随所に設けられているが、以前はほとんど目立たなかった。野球関係者でなくとも自由に出入りできた。5月にグラウンド内の樹木を見に行ったときも、担当者から「立ち入り禁止」と告げられた。〝森を隠す意図〟がないのであれば、巨木にお別れを告げる人の出入りは自由にすべきだ。伐採する743本についても、どうして伐採しなければならないかの説明は不十分だと思う。

 イコモスが指摘している「世界的に有名な公園に高層ビルを建設する」「再開発促進区の導入により、風致地区の高さ制限15mから緩和され、190m、185m、80mの3つの高層ビルの建設が可能となった」に対しては、「神宮外苑の街づくりは、民間事業者が所有する土地において、多くの方が利用できる広場などを整備するものであり、国や自治体等が管理する公園を整備するものではありません」と回答している。これはその通りだと思う。「広場」は「公園」ではない。

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