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2023/12/19(火) 18:32

ネイチャーポジティブの視点欠けていないか 大和ハウス業界動向勉強会<環境篇>

投稿者:  牧田司

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リコージャパン茨城支社(右の自動車はEV車)

 大和ハウス工業は12月18日、業界動向勉強会<第23回:環境篇>として、同社環境部長・小山勝弘氏が気候変動関連の動向と同社グループのカーボンニュートラル実現の取り組みを説明し、同社か施工したリコージャパン茨城支社の実例見学会を行った。

 ドバイで開催された気候変動会議COP28にも参加したという小山氏は、〝地球沸騰化〟の時代を迎え、IPCC第6次評価報告書統合報告書(2023年3月)で示された「気温上昇を1.5℃に抑えるために残されたカーボンバジェットは500Gt-CO2(2020年時点)しかなく、約10年で上限に達することや、G7広島サミット(2023年5月)で共有された「決定的に重要な10年」などを紹介し、個人的見解としながら「2030年に、新築でZEH・ZEB水準」とのロードマップが描かれているが、竣工後10年に限れば、エンボディドカーボン(建物の建設・解体・廃棄に伴うCO2排出量)が約7割を占めことの課題を指摘した。

 同社グループのカーボンニュートラルの取り組みでは、2030年までに「やれることはすべてやる」決意を掲げ、①原則すべての屋根に太陽光パネルを設置②2030年度 原則ZEH・ZEB率100%③新築自社施設の原則ZEB化・太陽光、23年度再エネ100%――を取り組みの3本柱として2030年までにバリューチェーン全体で40%維持用のCO2削減を達成すると話した。

 ステークホルダーとの共創共生の取り組みも強化し、信金中央金庫との連携締結や、今回の実例見学会会場となったリコージャパンのZEB化支援を紹介した。

 リコージャパン茨城支社は、築30年の老朽化したオフィスを建て替えたもので、2022年に竣工。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)で定める「Nearly ZEB」の第三者認証を取得、一次エネルギーの75%以上削減を達成した。

 新オフィスのキーワードは「集中」と「コミュニケーション」で、照明・空調をスケジュールとセンシングで自動調整するほか、時間帯による調光調色の省エネ、太陽光・蓄電池による創エネ、EV(電気自動車)などを導入している。

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小山氏

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◇      ◆     ◇

 自社のオフィス内をメディアに公開する会社などほとんどないはずなので、今回の勉強会を楽しみにしていた。見学会では、女性の方が1階から3階と屋上を丁寧に案内・説明した。

 他社の施設を見ていないので何とも言えないのだが、オフィス内はとてもゆったりしていて、スタッフ約80人が働く環境としては最高に素晴らしいと思った。廊下幅は1.8mと広く、休憩室のお茶、紅茶、コーヒーなどは70~90円(たくさん買って家に持ち帰るのは可能か聞けばよかった)。

 課題もあるように思った。同社だけの問題でもないと考えるので敢えて書く。敷地はとても広いのだが(駐車スペースが信じられないほど広いのは、車なしでは移動できない市の街づくりによる)、樹木は1本もなく、法面などは人工芝だったことだ。SDGsの17の目標がスタッフの収納扉、階段室に貼られていたが、そのうちの13の目標である「気候変動」、15の目標の「陸の豊かさ」を考えたらこれはありえない。

 なぜ、このようなことを記者は言うか。10年以上前から「街路樹が泣いている」記事を書いているからだが、つくば市は、緑被率が60%を超える緑豊かな都市で、同市の取材の楽しみの一つは、街並みの美しさを見られることにある(わが多摩市は60%弱なのでつくば市には負ける)。

 もう一つは、オフィス内の「みどり」は全てフェイクグリーンだったことだ。ただのフェイクではなく、光触媒加工により大気中の有害物質を取り除いてくれるのはいいのだが、本物の緑の効果には勝てないはずだ。なぜか、同社に聞いたら「本物は手入れが大変」といつも聞く答えが返ってきた。

 本当にそうだろうか。スタッフが自らとみんなの働きやすい環境を整えるのに「手入れが大変」を理由にフェイクでいいと考えるならそれはそれで結構。何も言わない。記者は、オフィスの観葉植物を定期的に点検・手入れする会社の方が「捨てる」といったポトスの枝葉をもらってデスクに飾った。1~2週間に1度くらいの水交換で十分。取材の帰りには道端に咲いている雑草のドクダミなどを摘んでは仕事先や自宅に飾る。

 まだある。敷地内は館内も含め禁煙だった。これもSDGsの10の目標「人や国の不平等をなくそう」、16の目標「平和と公正をすべての人へ」に反する。つくば市はとくに喫煙規制がきつい。麻布台ヒルズには喫煙室が完備している。日本一お金持ちの東京都港区の取り組みを見ていただきたい。港区は「たばこを吸う人も吸わない人も、誰もが快適に過ごせるまちづくり」の一環として、屋外の公園を含めた指定喫煙場所を約40か所設けている(屋内は数えきれないほどある)。禁煙を強いるのは差別だ。生産性を低下させると信じている。

 さらに、また一つ、これが一番肝心なことだ。ハウスメーカーもデベロッパーも建物のZEH化、ZEB化に必死で取り組んでいるのは結構なことだが、「みどり」の取り組み=ネイチャーポジティブが決定的に欠けていると思う。なせ「神宮外苑」問題が炎上したか。みんな生理的に「みどりが破壊される」と感じたからではないか。

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リコージャパン茨城支社のエントランスのフェイクグリーン(同社だけでないが、記者はこのような神経が理解できない)

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電力使用量を〝見える化〟

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個人ロッカー(SDGsのステッカーが張られていた)

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階段にもSDGsのステッカー

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自動ではないが、ブラインドは操作するとせりあがってくる

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これもフェイク

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太陽光パネル

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