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2024/03/20(水) 18:28

実勢は公示地価の3~5倍が日常化 建築費も上昇 物流は調整局面 大和ハウス説明会

投稿者:  牧田司

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角田氏(同社東京本社で)

 大和ハウス工業は3月19日、記者レクチャー会<2024年公示地価>を開催。分譲マンション、分譲戸建て、ホテル・オフィス、物流施設市場の現状と同社の取り組みなどについて説明した。レクチャー会は、近く発表される公示地価の記事を書く際に参考になるよう同社がセットしているもの。

 分譲マンションについては、同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏は、全国的に地価、建築費、仕入れ価格が上昇しているとし、首都圏では坪単価1,000万円超の物件でも富裕層の投資、セカンド、相続対策や円安によるインバウンド需要が引き続き旺盛と語った。しかし、入札物件は高値落札が目立ち、応札者は少なくなっているとした。郊外部も堅調な市場が続いているものの、ファミリー層が簡単に取得できる価格を越えてきており、今後は23区の状況に左右されるため注視が必要としている。

 近畿圏は、東京建物「堂島」をきっかけに坪単価400万円の壁が取り払われ、坪500~600万円が供給されるようになり、都心部は首都圏と同様に販売進捗は安定。建築費上昇を吸収できる可能性があり、用地取得環境はさらに厳しくなるとみている。京都は供給過多で、立地のいいものとそうでない物件との格差が拡大すると推測している。

 地方圏は、一部エリア(札幌、仙台、福岡、沖縄)は、本州からの富裕層やシニア層のセカンド、投資・移住ニーズの高まりから用地価格の上昇が続いているとした。名古屋、金沢は価格の高騰、在庫物件が増加していると説明した。

 投資需要は、金利の先高観、リート指数の低下などを受け、投資家の買収意欲は中立的とし、エリアや築年数による案件の選別化が進んでいるとした。

 同社の物件では、東武鉄道とのJV「ソライエ新柏プレミスト」(114戸)は坪250万円で、第1期1次60戸は完売のめどが立ち、昨年7月から販売開始した同社初の沖縄で400万円超の「プレミスト那覇新都心」(16戸)も残り3戸と好調。

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中岡氏

 分譲戸建てについては、同社住宅事業本部事業統括分譲住宅グループ次長・中岡敬典氏は、注文住宅の着工戸数は26か月、分譲戸建ては15カ月(2024年1月現在)連続でそれぞれ減少しており、建築費の高騰、消費者の実質賃金の低下などにより、市場を取り巻く環境は厳しいと語った。

 一方で、同社の事業は堅調で、2023年10月~2024年2月累計では金額比で前年比25%増で、東京、埼玉などで大幅に増加しているとしている。

 戸建て7,000戸体制については、注文住宅と分譲住宅の「ちょうといいとこどり」を全国に展開し、「ReadyMade Housing」を掲げ、「設計力+基本性能+アフター&長期保証により〝価格以上の価値〟を提供していくと語った。用地取得については、10戸以上の入札案件よりも数戸~10戸未満の用地取得に力を入れ、大型案件ではグループ内での複合開発も検討していく。来期販売目標2,650戸のうち木造は3割で、差来期の木造化を50%に引き上げたいとした。「ZZEHは100%、既存の戸建てビルダーとは一線を画す」と明言した。

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和田氏

 ホテル・オフィス事業については、同社流通店舗事業本部事業統括部開発事業部グループ長・和田康紀市は、商業分野は、コロナ禍に伴う自粛モードが解除され、パンデミック以前の社会に戻りつつあるとしながらも、既存の商業施設の建て替えや再生がポイントとなり、もの消費からコト消費に変わり、新しいアイデアが求められていると話した。オフィス分野は、引き続き潜在的なニーズが高い地方に注力していく。

 ホテル分野は、インバウンド需要が回復しているとはいえ、観光需要の高いエリアでは競争が激化、宿泊単価の上昇は見られるものの稼働率の上昇につながっているとはいいがたく、従業員の雇用問題が深刻化していると話した。

 地価公示については、取引価格との乖離が目立っており、都心部(東京、大阪、名古屋)では公示地価の3倍から5倍の取引価格が日常化しており、地方でも人気の高いエリアは同じ傾向がみられるとしている。

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廣渡氏

 物流施設については、同社建築事業本部 営業統括部Dプロジェクト推進室担当次長・廣渡政和氏は、テナント入居地域の傾向として都心好立地案件と地方メーカー向け立地に大きく二分化され、リーシングに時間がかかる状況から調整局面に突入しつつあると指摘した。

 首都圏の需給バランスでは、2024年4Qの新規供給は前年同期比半減し、空室率は2023年4Qの9.3%からやや改善はされているもの8%台の半ばに達しており、2%台で推移していると思われる築1年以上の施設との差が目立っている。廣瀬氏は「物流施設は建築費のウエイトが高く、ゼネコンが見つからない例や賃料に転嫁できない環境が続いている」と語った。

「昭島」1期は262戸/建築費5割アップへ2024年問題からみ深刻化 大和ハウス(2023/9/15)

 

 

 

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